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    えんどう

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    えんどう

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    ##第三者がいる話
    ##5001-9999文字

    ぐだおの誕生日を祝う話▽付き合ってない頃のぐだおと王様がいます
    ▽ぐだキャスギル






     暦の上では春の日のことである。待機もし飽きたギルガメッシュは、早い昼食でも、と食堂へ向かっていた。このカルデアの食堂は弓兵の男が仕切っている。名は確かエミヤ、とか言ったか。霊基に縁は刻まれているものの、今のギルガメッシュとはこのカルデアで初めて出会った男である。因縁と言われてもいまひとつ実感はない。積極的に近寄ろうとは思わないが、現状それはエミヤに限ったことではない。
     他者との必要以上の接触は避けているギルガメッシュだったが、エミヤの作る料理は大層舌に合った。有り体に言えば、美味しかった。勿論食事など摂らなくともいいのだが、あの味はなかなか癖になる。食堂へ行けば時折、美味そうに舌鼓を打つ立香の姿が見られるのも、よかった。そのくらいは垣間見ても咎められないだろう。誰に咎められるものでもなかったが、距離を置いている今では自らが咎める。その日が来るまで近寄ってはならない。来ても果たして、この距離が変わるのかどうかは解らなかったが。
     食堂は万人に開放されている。扉を開けるのにも無駄なセキュリティは存在しない。自動で開く扉をくぐり、ギルガメッシュは食堂に足を踏み入れた。と同時、作りたての食事のいい匂いと共に賑やかな声が聞こえてきて視線をそちらへやる。
    「――先輩、お誕生日、おめでとうございます!」
    「おめでとう、立香君」
    「さあ、存分に食べたまえ!」
    「作ったのは私だがね」
     その部屋には何人かのサーヴァントと、いつものメンバーに囲まれる立香の姿があった。
    「うわ、ありがとう……誕生日なんて忘れてたなぁ」
    「めでたい日ぃやねぇ旦那はん? うちが食べさせたろか?」
    「ァー! ゥ! ゥー!」
     テーブルには今出されたのであろう作りたての料理が並び、照れくさそうにはにかみながら座る立香の隣にはケーキを口元へ差し出す酒呑童子、向かいには自分もとフォークに刺した唐揚げを差し出すフランケンシュタインの姿があった。反対隣に座るマシュはそれを笑顔で眺め、エミヤは口元に笑みを敷きながら厨房に戻る。周りに座るロマニやダ・ヴィンチもそれを笑顔で見守っている。実に和やかな空間だ。何か祝い事をしているような、そんな雰囲気だった。マシュは誕生日、と言ったか。誕生日。今日は立香が生誕した日か。生誕した日と言えばギルガメッシュも生前国を挙げての祝祭を幾度も受けていた。めでたい日であるのは間違いない。それも立香の生誕日である。皆が祝うのも頷けた。しかし初耳である。今日がそうなのか。そうなのだろう。いつの間にこんな準備をしていたのか。朝からか?昨夜からか?どちらにしろ、ギルガメッシュには知る由もなかった。立香どころか他のサーヴァントからも距離を置いているのだ、誰も教えようとも思わないだろう。それは解っているが、解ってはいるが、。
    「――あ、ギルガメッシュさん」
     立ち尽くしていたギルガメッシュに最初に気づいたのはマシュだった。一瞬表情が強張る。王をつけよ、と言いかけたが今の彼女には王らしいところを見せてはいない。それはまだ先の話だ。
    「随分騒々しいではないか、雑種」
    「すみません、今日オレの誕生日で……みんなが祝ってくれてたんです」
    「見れば解る」
     そうですよね、と苦笑する立香は明らかに戸惑っていた。目が泳いでいる。何人かはにやにやと笑ってはいたが、常ににやついた顔であったと記憶しているのでさして気にも留めない。
    「いややわぁ。そない恐ろしいお顔せんと、一緒に旦那はんを祝ったらどない?」
    「そうだぞ、誕生日は一年で一度しかないんだ。キミも祝ったらどうなんだい?」
     立香にしなだれかかっている酒呑童子が理性を蕩かす力を持った声で誘い、にやついているダ・ヴィンチがそれに加わるが、ギルガメッシュは一笑に付す。
    「この我が雑種ごときの生誕を祝うとでも? 思い上がるなよ」
    「いいです、大丈夫です。騒がしくしてすみません。あの、今日だけなんで」
     有象無象を睨めつければ立香が慌てて間に割って入る。ふん、と鼻で笑って視線を外せば誰かの溜息が聞こえた。
    「…………興が削がれた。我は帰る」
    「一年で一度だけなんだから、今日くらい素直になればいいのに」
     ダ・ヴィンチの言葉に妙な引っ掛かりを覚えたが、ギルガメッシュは踵を返して食堂を後にする。宛てがわれた自室へ戻る道すがら、幾人かのサーヴァントとすれ違った。皆一様に逸る心を抑えきれぬような浮かれた表情をしていた。立香の誕生を祝いに行くのだろう。それに対してどうとも思わない。立香が生まれた日など、己には関係のないことだ。ましてやそれを祝うなど、……祝おうとも思わない。自室の壁に埋め込まれた時計の表示する日付から目を逸らし、今日は一日、積まれた書籍の山へ没頭すると決めた。
     
      ✢✢✢

     暦の上では、春の日のことである。急遽管制室に招集された立香につき添ってギルガメッシュも管制室へと赴いた。ダ・ヴィンチからの通信によると何かが起こったとのことだったが、詳細は知らされていない。詳しい話は到着してから、とのことだった。まさか管制室でもまだ判明していない何かが起こったのだろうか。これは只事ではないと急いで向かった先の管制室の扉の前、面倒なセキュリティを解除し、室内に踏み込む立香と共に扉をくぐり――
    「誕生日、おめでとうございます、先輩!」
    「誕生日おめでとーう!」
     ぱん、と何かが破裂するような音と重なった誰かの声。目を瞬く立香と一瞬身構えたギルガメッシュの前で舞い落ちる紙片と、立香の頭に引っかかった紐のようなもの、それも紙でできている。
    「……たんじょうび……」
    「……たんじょうび……?」
     驚きが抜けきらず呆けたように呟く立香と、怪訝そうに眉根を寄せて目の前に立つ二人を見据えるギルガメッシュ。その二人――マシュとダ・ヴィンチはそんな立香とギルガメッシュとは対照的に二人揃って満面の笑みを浮かべていた。
    「はい! 今日は先輩のお誕生日なんです。先輩はお忘れだと思いましたので、わたしマシュ・キリエライト、勝手ながらお祝いのご用意をさせていただきました!」
    「勿論、私も手伝ったよ? こんな状況だから、ささやかなものだけれどね。びっくりしただろう? 慌てさせちゃってごめんね」
     多少申し訳なさそうに言うダ・ヴィンチの前で立香はまだ目を白黒させている。普段の飲み込みの早さはどこへやら。
    「この飾りも二人で?」
     立香の言葉にギルガメッシュは周囲を見回す。マシンばかりで殺風景な管制室は、花を模した色紙や、色とりどりの紙の輪を連ねた飾りでささやかながら飾られていた。
    「あちらはスタッフのみなさんも手伝ってくださいました! ジャンヌ・リリィさんやナーサリーさん達も手伝ってくださったんですよ」
     にこにこと笑顔のマシュに言われて立香は室内のスタッフへ視線を向ける。見慣れたスタッフ達が笑顔でそれに応えた。多忙にすぎるくらいだというのに、こんなことまでしてくれるなんて、と感動する立香の隣でギルガメッシュは記憶を手繰っていた。確か以前――そう、去年も立香は皆に誕生日を祝われていた。その時はまだ第七特異点――ウルクでのことを経験していなかった立香とは距離を置いていたため、ギルガメッシュは祝うことができなかったのだが。
    「雑種、貴様今日が誕生日なのか」
    「えっと……そう、みたいですね……」
     あの時、日付の確認などしなかった己の責任なのだが、ギルガメッシュは内心で何故言わなかったのか、と問い詰めたい気持ちに駆られていた。流石に人目のあるところでそのような無様は晒せないが、何故言わなかったのか。それは立香本人が忘れていたからに他ならないのだが、そこまで思い至らないほど心中で動揺していた。前回は全く祝えなかったのだ。次があるとはあの時思いもしなかったのだが、ギルガメッシュにも祝いたい気持ちはある。むしろ、このカルデアにいる誰よりも祝いたい気持ちがあると自負する。だというのに、何故。
    「先輩、今年も食堂で皆さんが待ってます。行きましょう」
    「私はまだここでやることがあるから行けないけど、後で合流するよ。行っておいで」
    「そんな、いいのに……」
    「もう用意してしまいましたから! 行きましょう、ギルガメッシュ王もご一緒に!」
     遠慮する言葉を吐きながらも嬉しさを隠しきれていない立香は、華やかに笑うマシュに手を引かれ、ギルガメッシュは振り返った立香に手を引かれ、三人で仲良く食堂に向かうことになった。

      ✢✢✢
     
    「あー! 食った食った! やっぱりエミヤのご飯は最高ですね! ね!」
    「…………」
     食堂でひとしきり飲み食いして騒ぎ、次々集まってくるサーヴァント達に囲まれてもみくちゃにされては笑い、カルデアで迎えた二度目の誕生日を満喫した立香は、自室のベッドに背中から飛び込んだ。最後の言葉は傍らにいるギルガメッシュへ話しかけたつもりだったのだが、ギルガメッシュは返事もしない。食堂で立香の隣にいた時は然程でもなかったが、今改めて見れば不機嫌そうにも見える。
    「……すみません」
    「……何を謝ることがある」
    「なんか……オレだけ楽しんじゃったみたいで……騒がしすぎましたよね……」
     身を起こしベッド上で胡座をかき、一瞬にしてテンションの下がった項垂れる立香にギルガメッシュは溜息をつく。それが立香には不機嫌からくるもののように思えて顔を上げ、再度謝罪の言葉を述べようとしたのだが。
    「阿呆め。その程度のことでこの我がヘソを曲げるとでも思ったか」
     呆れ声で言いながら立香に背を向ける形でベッドへ腰掛けたギルガメッシュの隣へ、立香は這って寄って座り直す。
    「じゃあ……何かありました?」
    「鈍いくせにそんなところは嗅ぎつけるのだな、貴様は」
    「鈍いって……否定はしませんけど……」
    「よい。……何、貴様への誕生祝いを何も用意していない、と思ってな」
     立香を見ずに言うギルガメッシュの横顔は、不機嫌というより寂しげに見えた。今指摘された通り鈍感な自分のことだから勘違いである可能性も否定できないが、黄金が影を落とす真紅の目許が、どことなく憂いているように見えたのだ。
    「大丈夫ですよ、王様。祝おうと思ってもらえただけで嬉しいですから」
     こんな状況ですし、と立香は笑う。立香を見たギルガメッシュはつられたのか眉間の皺を解いて表情を緩め、立香はそれに安堵する。
    「全く貴様は欲のない……しかし王たるこの我が貴様の祝事に何もしないというのも沽券に関わる。そうさな……」
     呟いたギルガメッシュは眼を伏せ視線をそらす。そうやって思案に耽る横顔も綺麗だなぁ、などとニヤける立香の横で考え込んだギルガメッシュは、少しの間の後顔を上げ、次に立香と視線を合わせた時にはどことなく愉しげで悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
    「褒美、ではないが。貴様に我をくれてやろう」
    「えっ?」
    「今宵一夜は我を立香の好きなようにするがよい」
    「えっ? えっ???」
    「付け上がるなよ? 今宵だけだ」
     突然の爆弾発言に思考停止した立香に、ギルガメッシュはしなだれかかるように身体を寄せ、目を眇めて覗き込む。言葉を失って赤面し、耳まで赤くしてはくはくと口を動かす立香の慌てぶりを笑い、何かを言おうとしている唇へ、ちゅ、と音を立ててくちづける。
    「それとも何か? 宝物庫にある呪詛の品がよいか?」
    「……! そんなの、王様がいいに決まってるじゃないですか……!!」
     ようやく事態の全てが飲み込めたらしい立香が、喜び勇んで飛びつくようにギルガメッシュの手を両手で握る。それが大きな犬のように見えて、ギルガメッシュは喉の奥で笑う。ちぎれんばかりに振られる尾が見えるようだ。
    「では今宵は貴様の好きにしてよいぞ、マスター?」
     完璧、という言葉すら生ぬるい美貌に微笑まれ、甘く艶のある低音で囁かれ、おまけに指一本で顎を持ち上げられくちづけられ、立香は何秒か放心したあとに音がしそうなほど赤面し、言葉にならない叫びを上げながら愉しげに笑うギルガメッシュをベッドへ押し倒したのだった。
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