冬木後すぐのカルデアに召喚された若モリくんと立香ちゃんの話召喚サークルに降り立った彼を見た瞬間。服装が学生服のようなスタイルだったせいもあって同い年くらいの人だと立香は思ってしまった。
ジェームズ・モリアーティ。悪の中でも悪である……らしい彼だが、小説に詳しくない立香は「シャーロックホームズに出る悪い人」くらいの認識だった。
レイシフト可能なカルデア唯一のマスター。だが、まだ特異点修復の度は始めたばかりで、まだまだカルデアにいるサーヴァントも少数だ。明らかに年上のサーヴァント達が多い中で召喚した初めてのエクストラサーヴァントで、見た目が同い年に見える青年。
「よろしくお願いします。えっと、モリアーティ……くん?」
故に立香が声をかけた第一声は、距離感がバラバラだった。これから一緒に戦ってくれる英雄なのに、友人になりたいと声をかけるように……バラバラだ。
そんな立香に口上を述べ終えたモリアーティはじっと見て、目を細めた。笑っている。そんな目だ。立香の目の前に片手を出した。
「握手だ」
「あくしゅ」
「えっ、知らないわけないよね。挨拶だけど」
立香がオウム返しをしたのでモリアーティが驚いて説明した。
「ううん。ちゃんと分かるよ……びっくりしただけ」
モリアーティの手を立香は握る。
「よろしくねモリアーティさん」
「よろしくマスター。あれ、モリアーティくんと呼んでくれないのかな?」
「あ、あれは……つい呼んじゃって」
「僕は別にそう呼んでもらっても構わないよ。その方が友人みたいじゃないか」
友人のような関係をモリアーティも望んでくれているのが、立香にはとても嬉しかった。
「……じゃあお言葉に甘えて、モリアーティくんよろしくね」