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    ginro1103

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    ginro1103

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    四神たちが仲良く四神荘で映画鑑賞会する話
    学隊小説が行き詰まった時に息抜きでちまちま書いてたんですが、そろそろ学隊を仕上げないといけないので冒頭だけチラ見せ

    「ねぇねぇ、今日の夜さ。みんなで映画鑑賞しない?」
    「……映画鑑賞……?」
    「うん! ほら、昨日からババアのお店が臨時休業してるじゃない? だから、たまにはみんなで夜通し遊ぶのも良いかなぁ……って思って!」

     脱衣所で洗濯機を回していた白虎は、蘭丸からの唐突な誘いに眉を寄せた。ニコニコと胡散臭い笑顔を浮かべる蘭丸を、白虎は「くだらん」の一言で一蹴する。だが、それで引き下がるような蘭丸ではない。

    「そんなこと言わないでさぁ、やろうよ〜。絶対楽しいから、ねっ? 白虎ちゃ〜ん」

     猫なで声でしつこく誘ってくる蘭丸を無視して脱衣所を出ようとするが、素早く回り込まれて出入り口を塞がれてしまう。白虎の怒りとイライラのメーターがぐんぐん上がっていく。

    「いい加減にしろ、映画などに興味はない! そんなにやりたいのなら、玄武と青龍を誘えば良いだろう!」
    「あの二人ならもう誘ってあるし、オッケーも貰ってるよ。凄いノリノリだった、特に青龍が」
    「……悪かったな、ノリが悪くて。気の合う者同士で勝手にやっていろ」

     立ち塞がる蘭丸を押し退け、自分の部屋へと戻ろうとする白虎だったが。諦めの悪い蘭丸は、背後から白虎の腰に抱き着いてそれを阻んだ。

    「貴様、しつこいぞ! 私は参加しないと言っているだろうが!」
    「楽しいことはみんなでやった方が良いでしょ! 白虎ちゃんがうんって言ってくれるまで、僕は離れないからね!」
    「はっ、良いだろう。いつまで持つか見物だな」

     腰にへばりつく蘭丸をズルズルと引きずっていると、食堂の入口から青龍がひょこっと顔を出した。蘭丸陣営である青龍の登場に、白虎は思わず「げっ!」と声を漏らす。

    「二人共、そんなところで何をやってるんです? もうすぐ昼餉の準備が出来ますよ。遊んでいるのなら手伝ってください」
    「青龍〜、一緒に白虎ちゃんを説得して〜! この子ったら、今日の映画鑑賞会に参加しないって言うんだよ〜!」
    「な、何ですって!? それは一大事ッッッ!!」

     青龍は血相を変えて駆け寄ると、勢いそのままに白虎の胸に飛び込みしがみついた。

    「どうしてそんな寂しいことを言うんですか、白虎!! 一緒に映画観ましょうよぉ!!」
    「ほら、青龍だってこう言ってるんだから! 観念して僕らと映画観よう!」
    「だあぁぁぁぁ、鬱陶しい!! 何度も言わせるな! 私は、映画に、興味、など、ない!!」
    「ぐぬぬ、流石に手強いな。こうなったら、最後の手段……青龍、プランGだよ!」
    「了解です……玄武ぅぅぅぅぅっ!! 助けてくださぁぁぁぁい!!」

     周囲の空気が振動する程の青龍の声量に、白虎は堪らず耳を塞いだ。すると、青龍の悲鳴を聞きつけた玄武が杓文字を片手に食堂から飛び出してきた。

    「どうした、青龍!! 大丈夫か!? 何があっ……た……」

     廊下で団子状態になっている三人を見て、玄武は全てを察したようで、白虎に向かって薄い笑みを浮かべた。
     一方、白虎はさらなる事態の悪化に奥歯を噛んだ。今、この場に味方はいない。それでも、白虎は一縷の望みを賭けて、玄武に助けを求めることにした。

    「玄武……無駄だとは思うが、こいつらをどうにかしてくれ。私は一人で、静かに、ゆったりと過ごしたいんだ」
    「こんな調子で私たちの誘いを断るんです〜! 玄武からも何か言ってやってください!」
    「だから! 貴様らだけでやれば良いと言っているだろうが!」
    「あ〜あ〜あ〜! 何も聞こえなぁい!」
    「ぐっ……! この、いい加減に……!」

     頑なな態度に嫌気が差した白虎は、右手に雷を纏わせ蘭丸と青龍を威嚇する。だが、二人は雷が身体に触れているにも関わらず、ピッタリと白虎にくっついて離れない。
     何故、そうまでして自分を誘ってくるのか。白虎には蘭丸たちの意図が全く理解出来なかった。

    「白虎、二人が怪我をする。雷を抑えろ」

     玄武に手首をやんわりと掴まれ、我に返った白虎は右手から放出していた雷を消した。雷が消えたのを確認すると玄武は掴んでいた白虎の手首から手を離し、何か言いたげな顔でこちらを見つめてきた。どうせ、お前も映画鑑賞に参加しろと言ってくるのだろう……と身構える。ところが、玄武はスッと目線を下げると、白虎の身体に纏わりつく蘭丸と青龍を窘め始めた。

    「朱雀、青龍、お前たちも少し冷静になれ。そんな誘い方では、白虎が余計に意固地になるだけだろう」
    「で、でも……」
    「とりあえず、白虎から離れてやれ」
    「ちぇ〜、分かったよぉ……」

     蘭丸が不服そうに唇を尖らせながら白虎から離れると、青龍も渋々とそれに続く。二人はがっくり肩を落とし、トボトボと玄武の元へ向かう。予期せぬ出来事に、白虎は目を丸くする。

    「げ、玄武……貴様はこいつらの味方じゃないのか……?」
    「せっかくの休みだ。一人でゆっくり過ごしたいんだろう? ならば、こちらはそれを尊重するまで。この二人には、後でよく言って聞かせておく」
    「そう、か……? すまないな、助かる……」

     いつもは病的なまでに青龍の肩を持つ玄武が、今日は珍しくまともだ。当てが外れ、悔しそうに頬を膨らませている蘭丸と青龍に対して、白虎は"ざまあみろ……"と舌を出す。

    「……だが、二人がどうしてお前をしつこく映画に誘うのか。その理由くらいは聞いてやっても良いんじゃないか? 白虎」
    「理由、だと? そいつらがただ遊びたいだけだろう」
    「まあ、そう言うな。とりあえず、朱雀と青龍の話を聞いてやってくれ」
    「……分かった。話だけは聞いてやる。どうせ、ろくでもない理由だろうがな」

     頼む、と頭を下げられては、話を聞かざるを得ない。白虎が腕を組んで仁王立つと、玄武に促された蘭丸がおずおずと口を開いた。

    「最近、白虎ちゃん仕事にも慣れてきて、人一倍働いてたからさ。疲れも溜まってるみたいだったから、たまには息抜きした方が良いと思って……」

     両手の人差し指をくるくると遊ばせながら、蘭丸は胸の内を吐露する。

    「私たち、昼と夜で仕事が分かれていますし……この頃、なかなか四人で揃うことがなくなってしまっていたので。映画を観ながら、ワイワイみんなで騒げたら良いなぁ……と」

     蘭丸に続き、切なげな表情を浮かべる青龍も、自らの思いを打ち明けた。それぞれの言い分を聞いた白虎は、意外にもちゃんとした理由を述べられてしまい面食らう。
     バツが悪くなり顔を背けると、青龍が両手で顔を覆ってさめざめと泣き始めた。

    「うっ、うぅ……私たちはただ、白虎のことが心配だったんです……」
    「でも、確かに玄武の言う通りだよ。無理強いするなんて良くなかったね……ごめんよ、白虎ちゃん……映画鑑賞会は、僕ら三人だけでやるよ……」

     そう言って、蘭丸は泣いている青龍の肩を抱いて踵を返す。落ち込む二人を慰めるように寄り添う玄武が、気にするなと目で伝えてくる。

    な、何だこれは……!? これでは、まるで私が悪者みたいではないか…!!

     白虎は心の中で憤慨した。しかし、尋常ではない悲しみが滲み出ている蘭丸たちの背中を見て、とてつもない罪悪感が白虎を襲う。ちくりちくりと針で刺したような痛みに下唇を噛み、前髪を掻き毟る。しばらく葛藤していた白虎は、食堂へ向かおうとしていた三人を呼び止めた。

    「どうしたの、白虎ちゃん……?」
    「あ、いや……その……っ……ひ、一晩だけなら……貴様らに、付き合って、やっても……良い……ぞ……」

     しどろもどろで映画鑑賞会への参加を表明すると、蘭丸と青龍は互いに顔を見合わせて、ニンマリ笑って白虎の元へと駆け寄ってくる。

    「白虎ちゃーーん! 君ならそう言ってくれるって信じてたよ!」
    「何だかんだ言って優しいですもんね、白虎は!」
    「お、おい、引っ付くな! 別に貴様らのことが可哀想になったから、とかじゃないからな!」
    「えへへ、分かってますよぉ」
    「よぉし! 今夜は四人でとことん楽しんじゃおう!」

     白虎を囲んで子供のようにはしゃぐ蘭丸たち、玄武はそんな彼らを見つめて、満足気な顔で微笑んだ。

    「さて、そろそろ昼飯にするか」
    「今日のお昼はなぁに?」
    「残り物で作った焼き飯だ」
    「それじゃあ、お昼ごはんを食べたら、今夜の準備をさっそく始めよう!」
    「楽しみですねぇ!」

     先程とは打って変わり、意気揚々と食堂へ向かう三人を後を、白虎は釈然としない顔で追った。



    「……上手くいきましたね。押してダメなら引いてみろ、作戦のプランG」
    「しーっ! ダメだよ青龍、白虎ちゃんに聞こえちゃうでしょう」
    「何か言ったか?」
    「ううん! 何でもない、何でもない!」

     肩を寄せ合い。声を潜めて作戦の成功を喜ぶ蘭丸と青龍の様子を、始めは微笑ましく眺めていた玄武だったが。蘭丸が耳打ちをする度、クスクスと楽しそうに笑う青龍を見ている内に、その顔からは徐々に笑顔が消えていった。

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