Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    azcr_666

    @azcr_666

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 4

    azcr_666

    ☆quiet follow

    入学式の時アズくんが炎ぶっ放した理由のとこにクララの枠も少しはあったらいいいなあと思って書いたアズクラ

    思春期シンドローム 美女しかいない! という歓声を聞いたのは、イルマを探して苛立ちを募らせていたときだった。おおかた新入生がエリザベッタと、ケロリを目にしたんだろう。そんなことより見通しが悪い。氷を溶かすか。とゆびさきに魔力を灯したところで勘づく。「美女」を見る目をした新入生たちの興味は、クララにまで向けられていた。
     ゴオ、とてのひらの中でため込んだ魔力が爆発する。
     気がつけば、氷を溶かすにしては強い火力の炎が、数人の新入生たちの間を駆け抜けていた。
    「どいつもこいつもはしゃぎおって」
     あろうことかあのクララまで、美女だなんだと言われるなんて。どうせ見た目と位階だけで騒ぎ立てているのだろう。そんな連中に家系能力をやすやす使ってやっては、また利用されかねない。
     そんな心配をよそに、クララときたら、イルマと合流できたあとも、少しでも困ってる風の一年生を見かけると、家系能力を躊躇いなく使うものだから、アスモデウスの心労は蓄積していくばかりで。果ては、問題児たちと別れ、イルマが花壇手伝いに呼び出されたあとも尚その行動は続き、とうとうアスモデウスは耐えられなくなった。
    「アホクララ、いい加減にしろ!」
     筆箱を忘れたらしき男子生徒の元へ走って行こうとするクララを小脇に抱え上げる。
    「む、何すんのさ、アズアズー! あの子困ってんじゃん」
    「自業自得だ、忘れ物なんて。放っておけ。筆記用具くらい、知り合いが貸すだろう」
    「……えー、でもさ、一年生じゃまだ知ってる子とか、あんまいないかもしれないじゃん……?」
     沈んだ声だった。純粋な心配だけを孕んだものとは違う。きっと過去を思い出しているんだろう。頼れる悪魔なんて一人もいなかった、去年の今頃を。
    「……だとしても、売店の場所を教えるとか、他にも方法はあるだろう。お前が……家系能力を使うと……」
     その頃に引きずり戻されるかもしれないんだぞ。とは言えなかった。
     美女だなんて持て囃されて、憧れの先輩扱いされてるうちはまだいい。それが、便利な家系能力を持った利用できる悪魔、という認識に変わる瞬間のことを思うと、ぞっとした。
     そうなったとしても今は、イルマがいる、アスモデウスもいる、問題児たちだって放ってはおかないだろうし、いいようにさせるつもりはなかったけど、クララの心は必ず傷つく。
     そんなのは、許せなかった。
    「大丈夫だよ」
     やわらかく響いた声にはっとなり視線を下げると、上目のクララと視線が合う。そのくちもとが描くのは、たおやかな笑み。
    「一緒に遊ぶのに贈り物はいらないって、忘れたことなんて一度もないから、もうあんなことしないし、させないよ」
     アスモデウスは目を見開く。胸を熱くさせた羞恥の原因は、心配を見透かされていたからではない。クララを信用できていなかった、自分自身だ。
     見くびって悪かった、と言葉の謝罪のかわりに、送り出すよう勢いをつけてクララを地面に下ろす。
    「アズアズ……?」
     見上げてくるクララはきょとりとしていた。時々鈍くて時々聡いこの悪魔は、放っておくにはひやひやするし、ついていこうとしたら羽が折れる。本当にどうしようもないけれど、一番信頼できる、アスモデウスとイルマのシンユーの、クララだから
    「そこまで言うなら、やりたいだけやってこい」
     クララの瞳がキララキ輝いて、綺麗な弓なり型に細まる。
    「うん!」
     スカートを翻し軽やかに駆けていくクララは、すぐ男子生徒のもとまで辿り着く。
    「筆箱忘れたの? ハイ、これシャーペンと消しゴム!」
     クララが取り出した一対のシャープペンシルと消しゴムを目の前に、最初は戸惑ったようだった男子生徒も、徐々に状況を理解し始めたのだろう。アスモデウスにまで届いた「ありがとうございます」は安心しきっていた。
     クララがこちらを振り向く。きっと意気揚々と戻ってくるだろうとふんでいたが、ニヤリ、と笑われる。見てて、と言っていた。
    「あとね、カムカムさんのお店もあるからね! 足りないものはそこで買うといいよ。場所は、んーと……説明するの難しい……ついておいで!」
     アスモデウスの言ったことも取り入れるのか、と最初はおとなしく聞いていたけど、クララが男子生徒を引き連れて校舎目掛けて駆けていくものだから、思わず頬が引き攣った。
    「……あほクララ」
     声を張り上げたつもりはなかったが、ちょこちょこ走るクララに見惚れたようだった新入生たちが、アスモデウスの顔を振り返った瞬間、一斉に青ざめる。多分、今クララの後ろを早歩きと小走りの中間じみた歩幅で追ってる男子生徒も、数秒前までのこいつらと同じような顔をしているのだろう。
     確かにやりたいだけやってこい、とは言った。
    「……だからって、一人でどこでも行けとは言ってないぞ」
     ぼそり、と呟くと周りで青ざめていた新入生たちが飛びのくように道を開ける。これならあの二人を追いやすくなる。ちょうどいい。と足を踏み出す。
     クララのことは信頼してる。それは嘘じゃない。でも、目を離すと落ち着かない。これだって、アスモデウスの中では紛れもない真実だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺💖💚💁❤❤❤😭❤❤🙏💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works