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    RmHge0LAkgetvor

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    ある日何かに取り憑かれてしまったベニの話。(ソウベニ)

    ただのネタ出しのつもりなのになんか長くなったのでポイピクにしてみた。

    #ソウベニ
    saubeni

    ネタ出し「ゔぅ……」

    「どうしたベニ?」

    「口惜しや……」

    「我らの里を滅ぼした罪……あぁなんと口惜しい……!!」

    ベニの淀んだ瞳は真っ黒で、光一粒見当たらない。

    明らかに錯乱している。いや、何かに取り憑かれているのでは。零す言葉から、それが里の長ではないかと察する。
    戸惑う同郷達の姿が目に入らないのか、内から溢れ出る怨嗟に耐えきれず刀を振り回して暴れるベニ。

    「さぞ無念だろう。だがその件はアンタの子どもであるベニマルがもう済ませた。今はオレの配下だ、返してもらうぞ!」

    なんとかベニを落ち着かせようとしてる中で、ふと族長ではないとソウが確信。それまで少し遠慮していたリムル達だったが、血縁者でないならばと力を増して祓う。

    祓ったのは、同じように滅ぼされたどこか違う里の魂だった。祓われたことで意識を失い倒れるベニ。
    ソウがすぐ駆け寄り、身の安全を確認する。意識は無いが、呼吸も安定し身体も異常はないとホッとする。

    「誰かは知らないが、滅ぼされた恨みは理解できる。だが……」

    精神を強く保っているベニがこうして取り憑かれたということは、あの悪霊と同じ気持ちがあったからでは。
    そのことに気付いて、皆気を失っているベニを見た。



    意識が目覚めたベニ。ずっと傍でみていたソウが気付き、身体の異常を問う。問題ないと返事を聞き、次いで今回取り憑かれた件について尋ねようとしたところでベニからボソリと言葉が溢れた。

    「終わった話だった」

    俯くのでは無く、ソウから顔を背け窓の外を眺めているベニ。表情は見えなくて、でも動いたら今浮かべている表情はすぐに消されてしまうだろうと察して動けない。姿勢を変えず、無言のままベニを見つめるソウ。


    取り憑かれてしまった自覚は、あった。

    「里の無念は、恨みは、あの日に精算した。リムル様の為に力を存分に使うことで同志として認め、命は取らない。そう決断したことに、二言は無い。だが……」

    「あの日に受けた、己の無力さは……今でも許せない」

    里の墓参りに行った。同郷達の、家族の墓に手を合わせ、そしてあの日を思い出す。忘れた日は無い。もっと自分に力があれば、何かが変わったのではないか。今更どうしようもない『たられば』。
    もう後悔しないよう、ギフトを授かってからも鍛錬を怠らなかった。力も付けてきている。分かってる、自覚もしている。

    けど里の前では。全てが失われたあの里の前に立った時は、今の自分の力など無いも同然。あの無力だった己が立ってしまうのだ。
    そんな拍子に、何処からか来た何かが入ってきた。普段なら入ることなど許さない。でも、この時はこの何かが感じている無力さと己の無力さに嘆く感情が、重なってしまった。それが今回の真相だ。

    迷惑かけた。すまなかった。そう呟いて、俯いてしまったベニ。布団を握る手に力が入ったのは無意識だろう。そのまま黙ってしまったベニに、ソウもすぐには言葉を返さなかった。
    静かに時が流れる。黙ってしまったソウを構う程、今のベニに気力は無かった。

    座っていたソウが、漸く動き出す。弱音を吐くななどと言って殴ってくるかと思われたが、その手がベニを叩くことも殴ることも無かった。
    そのままベニの横に、傅いた。
    驚いて顔を上げるベニに対して、ソウは顔を下げたままだ。名を頂いてからは、こんなことしなくなったのに。

    「若」

    その呼び方に、思わずびくりと身体を震わせた。

    視線はまだ、合わない。

    「若が決めたことに、オレ達は従うと決めた。若の決断は覚悟した上で決めたことだと、重々理解している。恨み、憎しみ、戸惑い、無念……全てを飲み込んで、一歩踏み出した決断だったと」

    そこまで告げて、顔を上げる。冷静に物事を把握するソウエイの瞳が、ベニマルを映す。
     
    「ベニマル。無力だったのは、お前だけではない。オレ達皆、無力だった。お前独りで抱えるな。同郷皆に分け与えろ。」

    「それができないと言うのなら」

    身を寄せ、ベニの頬に手を添える。互いの角がぶつからないよう、額を擦り寄せ瞳を覗く?

    「せめてオレには、それを渡せ」

    従者として、同じ主に遣える者として、それから恋人として、告げる。そこまで言われて目を見開くベニ。力が抜けたのか口を開け、一度開閉するが言葉は出ず、息だけ溢れて、そして笑った。

    「ありがとう、ソウエイ」
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