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    みこう

    @mikou0213
    主に作業の進捗を投げる用。たまに落書きとか

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    みこう

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     茨は幽霊というものを信じていない。正確に言えば、実在するかどうかなんてどうでも良いのだ。恐ろしいのはいつだって生きている人間であり、幽霊の影響とやらが戦局に有利に働くのであれば是非とも雇いたいくらいである。貨幣という代価が彼らにとっても価値があるのか、それはわからないが。
     つまるところ、茨は幽霊などに欠片も興味が無い。怖がるなど万に一つもあり得ないだろう。これまでの人生で一度もそういう類の存在に怖がった記憶がない茨は、目の前に立つ凪砂を見て溜息をついた。
    「……今度はなにを借りてきたのです」
    「……妖怪大戦争~天空最強妖怪決定戦編~」
    「どうやったらそんな物を見つけてこられるのですか」
     手に持ったDVDのジャケットを見ながら凪砂が読み上げたのは、聞くだけで頭痛がしてきそうなほど低予算映画の風格が漂う謎のタイトル。彼がホラー映画にハマったのは約数週間前のことで、それから折を見て茨を捕まえては一緒に観ようと誘ってくるのだ。
     凪砂の芸の肥やしになるわけでもなく、かといって新しい商売の参考にできるわけでもない。つまらない映画をつまらないと思いながら観て、特に面白みのない感想を凪砂に伝えて終わるだけの行為は、茨にとっては時間の無駄でしかない。時は金なりというが、この映画にかかった予算よりも、映画を観ている時間で換算した場合の凪砂のギャラの方が高い可能性すらある。
     正直な話、これを凪砂だけで観る分には勝手にすればいいと思うだけなのだが、なぜか彼は茨と一緒に観たがるのだ。断ろうと努力してはみたものの、結局最後は丸め込まれるのがオチであった。凪砂の【お願い】に弱い自覚はあるが、そろそろ何かしらの対策を立てなければと頭を抱えたい心地だ。 凪砂の興味をなんとかオカルト映画から逸らそうと、幽霊の存在を科学的見地から説明してみても全く効果が無い。幽霊の正体見たり枯れ尾花ではないのかと、慣用句の作者に文句の一つも付けたくなる。
    「それを自分と観て楽しいのですか?」
    呆れたように疑問を零す茨を見て、凪砂は小さく笑いながらDVDのジャケットに目を落とした。
    「……この映画にはさして興味は無いけれど、幽霊の存在をいかに科学的に説明するか頭を悩ませる茨を見ているのは楽しいよ」
     ああ、こいつは自分で遊んでいただけだと悟り、やはり生きた人間以上に恐ろしいものは無いと溜息をついた。
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