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    みこう

    @mikou0213
    主に作業の進捗を投げる用。たまに落書きとか

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    みこう

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    ##凪茨小話

     そろそろ衣替えしましょうと言って茨が厚手のジャケットを持ってきたので、もうそんな時期かと思ってカレンダーへ目を向ける。たしかにもうじきAdamの稼ぎどきだと言って茨が張り切り始める頃で、ついでに窓の外を見ればわずかに葉が紅葉し始めている。
     茨と出会って四度目の秋だ。
    「……体感温度から考えるともう少しこのままでもいいけど、やっぱり服を変えるのは季節の区切りとして大事だからね」
    「そうです。それに、もう少しいいかなという油断が衣替えを遅々として終わらせられない原因なんですよ」
     凪砂の了承が取れるや否やタンスの中身をひっくり返し始める茨の様子を見て、実感のこもった言葉だなと少しおかしくなった。彼は自分の予定を狂わされるのが心底から嫌いなので、そういった怠惰な行動も同様に好きではないのだろう。
     一足早く自分の衣替えを済ませてテキパキと凪砂の服を入れ替える茨の手は淀みがなく、普段から凪砂のコーディネートから洗濯後の収納までやっているだけあって全ての配置が頭に入っているのが窺えた。その背中からも彼が張り切っているのがわかり、その様子を見るたびに今年もこの時期がきたなと実感する。
     秋といえばスポーツや読書、芸術に食欲と様々なものが挙げられるが、この時期はEve二人の誕生日から一呼吸置いて凪砂と茨の誕生日が連続しているのもあって、彼はどちらかと言うとそちらに一生懸命なのだ。
    「……うん、私たちの季節は万全の準備をして迎えたいからね」
    「おや、閣下もそのような冗談を嗜まれるようになりましたか」
     意外そうに笑いながら振り向く茨だが、毎年のように『自分たちの季節だ』と言っていたのは他でもない彼だ。
     無意識に言っていたのかなと一瞬考えたが、どちらかと言うと自分の言葉が凪砂に移っていたことに対する驚きという方が近い気がした。
    「茨はこの時期は毎年楽しそうにしているから、影響されたのかも」
     それは由々しき事態だの人類の損失だのと捲し立てる茨の言葉を話半分に聞き流しつつ、窓の外に広がる景色へ目を向ける。年を追うごとに彩度を上げていく景色は、今年も見事に茨の色を表現してくれるだろう。
    「……今年は絵でも描こうかな。前に使っていた絵の具あったよね」
    「え、もう捨て──明日までに用意しておきます」
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