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    6rocci

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    タケヒナ前提タケマイ

    マイキー+ヒナ「ヒナちゃんはさ、なんでタケミっちのこと好きになったの?」
    「えっ!?」
     マイキーがしたなんのけなしの質問に、ヒナはぼっと顔を赤らめた。健康的な白い頬が赤らんで、その赤身は耳にまで帯びている。初々しい反応を前に、マイキーは軽やかに笑った。
    「はは。ヒナちゃんはかわいいね」
    「……からかってますか?」
    「ちょっとね。でもほんとのことだよ」
     マイキーの軽口に、ヒナはどう反応したらいいのかわからないみたいな顔で少し笑った。困ったような戸惑ったような、初めて出会った時勘違いでマイキーの頬をひっぱたき、そのことをマイキーにからかわれた時と同じ顔。
     今ヒナとこうして二人でいるのはただの偶然だった。ヒナはエマと、マイキーはドラケンと待ち合わせをしていて、たまたまその待ち合わせ場所が一緒だったというだけ。エマが今日ヒナと遊びに行くというのは朝聞いていたけれど、まさか待ち合わせ時間と場所が一緒だとは思わなかった。
     マイキーがドラケンより先にいるのはただの奇跡だ。今日はたまたま目覚めがよかったから少し早く家を出た。ドラケンがこの場所にきた時、自分よりも先に、しかもヒナといるマイキーを見てドラケンがどんな顔をするのかマイキーは今から楽しみだった。
    「それで、なんでタケミっちのこと好きになったの? やじゃなかったら教えてよ」
    「え……えーっと……」
     もう一度訊ねれば、ヒナは恥じらうように髪に耳をかける。嫌ではなさそうだが、少し恥ずかしそうだ。
     本当はずっと前から気になっていたことだった。けれど聞く機会がなくて聞けなかった。別に……聞いたところでなにがどうとか、そういうのがあるわけじゃない。でもずっと知りたかった。タケミチに聞いた時は「ヒナのほうから告白してくれたんスけど、ぶっちゃけなんでなのかはオレにもわかんねえッス」と言っていたからなおさら。
     タケミチ本人にすらわからない部分。ヒナがタケミチのなにを見て、どこに惚れ込んだのか。マイキー自身にも根がわからない好奇心がそこにあった。
    「……たすけてくれたんです」
     ヒナがぽつりと呟く。
    「小6の夏のことでした。塾の帰りに、猫をいじめてる子たちがいて……見過ごせなくて間に入ったら、今度は私をいじめようとしました。その時タケミチ君が、私をたすけてくれたんです」
     ヒナはその時のことをとても嬉しそうに話した。中学生三人を相手に、タケミチは何の躊躇もなくたすけにきてくれた。震えながらもヒナをかばって、ボコボコにされても絶対に引かなかったし折れなかった。
     勝てないってわかってるのにたすけにきてくれた。そんな彼がすごくかっこよく見えて、恋をしたと。
    「その時は名前も聞けなかったんです。聞く前にタケミチ君は行っちゃったから、どこの小学校の子なのかもわからなくて……」
     ヒナが目を伏せながら両手を重ねる。
    「だから中学校でタケミチ君を見かけた時、すっごく嬉しかったなあ」
     言いながら、ヒナは顔を上げてマイキーを見ながら微笑んだ。頬を赤らめて嬉しそうに、幸せそうに。
     マイキーは胸の中でことりと音が鳴るのを聞いた。その眩しい笑顔に眩暈すら覚えて、息が詰まる。
    「……そっか。すげーいい話じゃん」
    「あっ! タケミチ君には言わないでくださいね! 話してないから……っ」
    「そーなの? 教えてやったら喜ぶと思うけど」
    「は、恥ずかしいじゃないですか。そんな前から一方的に好きだったなんて……」
    「そんなことないよ。ぜってえ嬉しいよ」
     にこ、と目を細めて笑う。ヒナは「そうかな」と独り言のように呟いて、また恥じらうように目を伏せてしまったけれど。
    「……まあでも、オレから聞くよりヒナちゃんから聞いたほうが嬉しいと思うし。心配しなくても勝手に言ったりしねーよ」
    「は、はい。ありがとうございます」
    「うん。こっちこそ話してくれてありがと」
     それからすぐにバイクに乗ったドラケンが来て、マイキーが先に待ち合わせ場所にいることに結構な驚きを見せた。エマが来るまで少し三人で話をして、エマが来てからは四人で遊ぼうと言われたけれど、「タケミっちにわりーって」と言うと諦めた様子だった。
     ドラケンのバイクの後ろに乗って風を受けながら、マイキーは目を閉じる。
    (勝てないってわかってるのに、助けに来てくれた……か)
     ……オレが見つけた時もそうだった、と、あの日のことを思い出す。
     広場で騒いでる中坊連中を見つけたのはドラケンだった。「あいつキヨマサじゃね?」と言うから見てみれば、東卍の一員らしいが顔もろくに知らないやつだった。向かい側にいるのはボコボコにされて血流してるチビ。端から見ても実力の差は歴然だった。
     アイツじゃどうしたってキヨマサには勝てない。何度立ち向かってもどんなに諦めなくても、その先に勝利はない。なのにアイツは、タケミチは負けていなかった。勝てないってわかってるのに、何度も何度も挑んでいった。
     兄貴のように。
    (……オレもだよ、ヒナちゃん。オレもおんなじ)
     誰にも言えない。もしオレがこの話をしても、タケミっちは喜ばない。
    (オレだけのひみつ)
     ぽす、とドラケンの背中に頭を預ける。前から「寝んなよ。落ちんぞ」という声が聞こえてきて、マイキーは短く返事をした。
    「うん」
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