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    im1208nm

    @im1208nm

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    im1208nm

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    リヴァハン、エレミカ前提のミカハンミカです。
    百合です。ご注意下さい。百合です。
    R18表現はないけど、チューはしてます。百合です。
    勢いだけで書いてしまったので下書きに近い雑さかもしれない…すみません…本当にすみません…

    想う男は 疲れきっていた。
     散乱した書類を押し退けて、額をごつんと執務机につける。ご立派な一枚板の机はひやりと冷たく、ほんの一時、僅かな心地良さを私に与えてくれた。
     兵団内ではイェーガー派と名乗る派閥が、着々とその勢力を膨らませている。エレンは地下牢。ジーク・イエーガーは巨大樹の森で、リヴァイ達によって拘禁中である。

    「リヴァイ」
     その名を、小さく呟いてみる。
     久しく顔を見ていない気がする。
     また、生きて会えるだろうか。
     何が起こるか分からない情勢である。
     今この瞬間に私やリヴァイが暗殺されたって、何ら不思議ではないだろう。
    「疲れたよ、リヴァイ。……帰ってきてよ、エルヴィン」
     私の詮ない呟きは、先程押し退けた書類を僅かに震わせるのみだった。

     不意に、ノックの音がした。
    「……どうぞ」
     ゆるゆると頭を上げながら、そう応える。
     気が重かった。
     どうせ、煩雑な用事か、悪い知らせのどちらかだ。
     ドアノブが動き、扉が開く。
     そして入ってきた人影に、心臓が大きくどきりと打った。

     ──リヴァイ。

     一瞬、そう思ったのだ。
     ぴんと伸びた背筋に、隙のない動き。漆黒の髪。身に纏う張りつめた空気と、こちらを見る、射竦めるような視線。

    「……やぁ。ミカサ」

     分かっている。リヴァイの筈がない。
     私は辛うじてそう声を絞り出すと、どうにか口許に笑みを作って見せた。
     
    「失礼します。お忙しいところ、申し訳ありません。備品の請求書に署名を」
     ミカサはそう言って、私に書類を差し出した。
    「ああ……。ミカサ、今、忙しいかい?」
     書類を受け取りながらそう訊くと、ミカサは怪訝そうに眉根を寄せながら、「いえ……」と答えた。
    「なら、そこに座って待っててくれ。今、書いてしまうから」
    「……了解です」
     ミカサはそう言って、執務机の前のソファに腰を下ろした。
     書類の内容を確認し、署名する。書類は全部で五枚あった。
     わざと、少しゆっくりと作業している自分に気づく。
     ミカサが側にいるこの状況を、私は何故か、やたらと好ましく感じていた。
     視線を上げて、ミカサを見る。
     ミカサは直角と言えるほど背筋を伸ばし、ソファにただ座っていた。
     鋭い眼で前方の一点を見るその横顔に、やはり、リヴァイの面影が重なった。
     容姿で言うと、似ている所は殆どない筈なのに。
     私の視線を感じたのか、ミカサがこちらを向く気配があった。
     だから慌てて、視線を書類に落とす。
     作業は、ものの五分程で終わった。
     書類を持ち、立ち上がる。
    「お待たせ。書いたよ」
    「ありがとうございます」
     ソファに座るミカサに歩み寄り、書類を差し出す。
     ミカサが立ち上がろうと腰を浮かせたのを見て、「あっ」と情けない声が喉から漏れた。
     異様に思ったのだろう。ミカサが眼を開いて、私を見る。
    「……いや、ごめん。その……」
     ミカサの横に腰を下ろす。ミカサも私に倣って、再びソファに腰を落とした。
    「ねえ、ミカサ。……少しだけ、話さないかい? 気晴らしに付き合ってくれ。……本当に、少しだけでいいから」
     ミカサはじっと、私を見ているようだ。
     私は背もたれに身を預け、自分の膝の辺りを見る。
     肩や背中が重い。残された右目が酷く疲れていて、頭にぼんやりと霞がかかっているようだった。
    「情けない話だけど。少し、疲れていてね。……誰かと、話したくて」
    「身代わりですか。リヴァイ兵士長の」
     驚いてミカサを見る。
     感情の分からない目で、ミカサは私をじっと見ていた。
    「……参ったな」
     眼鏡を押し上げて、私は両手で顔を被った。 
    「バレバレかぁ。……ごめん、嫌なら行っていい」
    「……いえ」
     背もたれがたわむ感覚に、顔から手を退けて隣を見る。ミカサが沈んだ顔をして、背もたれに身を預けていた。
    「……私も、少し、疲れているので」
    「……エレンのことだね」
    「それ以外、ない」
     思わず、笑い声が喉から漏れる。
    「君はエレンだし、リヴァイはエルヴィン。そしてケニー・アッカーマンはおそらく、ウーリ・レイス。分かりやすいね。君たちの行動原理は」
    「ハンジさんは、巨人。……巨人、だった」
    「そうだね。……私の行動原理は、もはや過去形になってしまったよ。今はただただ、必死だ」
     ミカサが身を起こして、こちらを向いた。
    「時々あなたが、凄く、寂しそうに見える」
    「……寂しい」
     じわりと、視界が揺らぐ。
     駄目だ、いけないと思うほど、感情の統制が効かなかった。
    「そうだね。……寂しいよ」
     声が揺れた。
     涙が溢れる前に、目に手をあてる。
     部下の前で、何と情けない団長だろうと自嘲すればするほど、眼を押さえた手が生暖かい液体で濡れるのを感じた。
     情けない。
     心底、そう思った。ミカサは困っていることだろう。

    「……あのチビが悪い」
     思わぬミカサの低い声に、私は眼を丸くして、ミカサを見る。
     ミカサはいかにも憤懣やる方ないといった顔をして、口を開いた。
    「ハンジさんを、もっと、しっかり支えるべき。離れていても、便りの一つくらい寄越せるはず。こんな顔をさせるのは駄目です。……許せない」 
     腹の底から、くすくすとわき出る笑いを押さえきれず、私はミカサを勢い込んで抱き寄せると、声をあげて笑った。
     同時に、いかんともし難く、涙も溢れる。
     こんな風に私のために憤ってくれる人は、もう死に絶えたと思っていた。
     ミカサの少女らしい潔癖な辛辣さと優しさが、たまらないほど愛しかった。
    「……ハンジさん」
     ミカサの手が、私の背中に回される。
    「……ごめんね。君も大変なのに。不甲斐ない団長だ」
     ミカサの手が、私の髪をすくように撫でた。
     その優しい手つきが、じわりと心に染みた。
     ずっと年下の少女相手に、私は一体、何をしているのだろう。
     そんなことをちらと思うが、このミカサの温もりを押し退けることは、今の私にはどうも出来そうになかった。
     私を包む細く柔らかいミカサの体が、あまりにも心地よかった。
    「……ミカサ、ありがとう」
    「……ハンジさんの苦悩は、私には、想像も出来ない。でも。会えない辛さは、少し分かる……気がする……ので」
     初めて聞く、囁くような優しい声だった。
     ミカサの髪が、頬に触れる。その質感が、驚く程リヴァイの髪と似ていた。
     思わず、ミカサの髪に手をやる。眼を閉じて撫でると、リヴァイの髪に触れているようだった。
     ミカサが、私の身体をそっと押し返した。
     だからゆっくりと身体を離すと、ミカサは私の頬に手を当てて、私の涙を、親指でゆっくりと拭った。
     そしてそのまま手のひらで私の頬を包むと、私の額に、唇でそっと、優しく触れた。
     温かく柔らかく、弾力のあるミカサの唇の感触が、じわりと額に染み込んで行く。
    「ミカサ……」
    「……すぐ側に居るのに、会えない。……それに、本当のエレンは、とても、とても、遠くに行ってしまった。そんな、気がするんです」
     囁くようにミカサはそう言った。
    「……寂しいね」
    「……はい。それに、不安で。悲しくて、ただ、ただ、辛い」
     語尾が、酷く震えていた。
     ミカサの眼に、溢れ落ちそうに涙が溜まっている。
    「辛いね……」
     目にかかったミカサの前髪を、指先で除ける。
     ミカサは視線を上げると、大きな目で私をじっと見てきた。その目から涙が一筋、ぽろりと頬に溢れる。
     先程ミカサが私にしてくれたように、ミカサの片頬に手を触れ、涙を拭う。
     ミカサの頬は柔らかく、温かく、いつまでも触れていたいとさえ思った。
     手を触れていない方の頬に、そっと唇を近づけてみる。ミカサに避ける素振りはない。
     だからそのまま、その頬に、唇で触れた。
     唇に伝わる頬の感触に、陶然とする。それは、これまで触れてきたどんな男の肌とも、全く違った感触だった。
     そうして触れてしまってから、ようやく、いけないと思う。
     ずっと年下の、しかも女性の部下に、私はなんと言うことをしているのだろう。
    「……すまない、ミカサ。私は」
     そう言って身を離そうとした私の首に、ミカサの腕が回される。
    「ミカ──」
     咄嗟に呼ぼうとした声を、ミカサの唇に奪われた。
     ただ押し付けられただけの唇は、それでも例えようのない程に瑞々しく、私の唇を弾き返すようだった。
     何だか分からないような感情が、唇から全身に広がって行く。
     私はミカサの髪を撫でると、唇をゆっくりと、食むように動かした。
     ふるふると、唇が触れ合う。
     それは涙が滲む程に心地よく、優しく、そして扇情的だった。
     角度を変えながら、何度も何度も、ミカサの唇についばむように触れる。
     互いの吐息が少しずつ激しくなり始めたのを感じて、私はゆっくりと、ミカサから唇を離した。
     いつの間にか閉じていた目を開けて、ミカサを見る。
     ミカサはすっかり上気した顔をして、涙の滲んだ溶けそうな目で、私をぼんやりと見ていた。
     きっと私も、似たような顔をしているのだろう。
    「……ミカサ、ごめん」
     そう言った私の声は、情けない程に震えていた。 
     ミカサは眉根を寄せて目を伏せると、私の肩に、すとんと額を乗せた。
     そんなミカサの背中を撫でる。
    「……私からなので」 
     だから謝るなということなのだろう。
     そう言ったミカサの声は、酷く小さかった。
    「……いや。あるまじき事をしてしまった」
    「大丈夫、なので」
    「ミカサ」
     ミカサがゆっくりと顔を上げる。
     そして再び、私の唇に、ふわりと唇を重ねた。
    「……ミカサ」
     ミカサはゆっくりと立ち上がると、いつの間にか床に落ちていた書類を拾い上げた。そして私を見下ろすと、口の端で少し笑って言った。
    「……何だか。兵長の気持ちが、少し分かりました」
     その言葉に、かっと頬が熱くなる。 
    「リヴァイと私は……、そんな……」
     ミカサの手がゆっくりと伸びて、私の頬に軽く触れた。
     そしてすぐにその手は、ミカサの左胸に移動した。
    「書類、ありがとうございました」
     敬礼をしながらそう言うと、ミカサは踵を返した。
     きびきびとした動作で部屋から去るミカサの背を見送る。それはまるで、このソファに残る感情の残滓を振り切るような隙のない動きだった。
     ミカサの顔をまともに見るのに、しばらく時間がかかるだろう。
     再び背もたれに身を預け、自分の唇を指先でなぞりながら、私はぼんやりと、そんなことを思った。
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