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    im1208nm

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    im1208nm

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    二人でAVを観るリハです
    全年齢ですが直接貼り付けるのはちょっとはばかる単語等が出てくるのでワンクッション…

    Let's watch porn!「ねぇ、リヴァイってさぁ、AV持ってる?」
     そんなハンジ・ゾエの出し抜けな問いに、リヴァイは蛙を潰したような声で「あ?」と答えた。
     クッションを腹の上に抱えてリヴァイのベッドに寝転がりながら、ハンジは顔をリヴァイの方に向ける。 
    「AVだよ、AV。オーディオビジュアルじゃないよ。アダルトビデオの方」
     そんなことは分かっている。リヴァイは小さく舌を打つと、「そういう質問には答えられねぇな」と小声で言った。
    「へえ、ってことは持ってるんだ」
     リヴァイは無視を決め込んで、紅茶を一口啜った。 
     よく晴れた土曜日の昼下がりである。レースカーテンを通してローテーブルに差し込んだ陽光が、ティーカップの紅茶の赤を鮮明にしている。
     
     ハンジは、リヴァイが学生時代から借りているこのワンルームマンションの、隣の部屋に住む女である。リヴァイがこの部屋を借りた時には既に隣に住んでいて、十年以上になる今も隣に住み続けている。
     マンションのエレベーターや最寄りのコンビニで頻繁に顔を会わせるうちに親しくなり、やがて休日の度にハンジがリヴァイの部屋に入り浸るようになった。
     リヴァイに恋人がいる期間は流石に距離を取るものの、やがて別れるとまた元に戻る。そんなことを繰り返して、今に至っている。

     ハンジはごろりと寝返りをうって、リヴァイのいる二人がけのソファの方を向いた。
    「ねぇ、リヴァイってば。無視するなよ」
    「……うるせぇな。持ってねぇ」
     リヴァイはそう言って、ローテーブルの下の収納からノートパソコンを引っ張り出し、立ち上げた。仕事をする素振りでも見せれば諦めるだろう。そう思ってのことである。しかしハンジがそんなリヴァイの思惑を意に介する筈もない。
    「ねえ、AVってさ、今はデータを買ってダウンロードするのが主流なの? それともやっぱりDVDなの? そういうの売ってる専門のサイトがあるの? オススメのサイトある? 検索してみたんだけどさぁ、どこも怪しげに思えちゃって、ちょっと怖くてさ。違法アップされてるのは、なんか観ちゃいけない気がするしさぁ……」
     ベッドから半身を起こして早口でそう言うと、ハンジは丸い眼をしてリヴァイを真っ直ぐに見つめた。
    「お前、買う気かよ」
    「それしか観る方法がないならね。観てみたいんだ、AVを」
     リヴァイは溜め息をつく。
    「観たことねぇのか」
    「ないさ。……何かさ、自分がセックスしたことないのに、先に他人のセックスを観るのはどうなのかと思って」
    「……やったことないのか、お前」
    「ないよ! 処女だよ私は」
     ハンジはそう言って、腰に手を当てて胸を張った。
     薄々、そんな気はしていた。そう思いつつも、どう反応して良いのやら分からず、リヴァイは視線をハンジからノートパソコンの画面に移した。
    「……でもさ、なんか最近、処女だからこそ? そういうの観て勉強しといた方がいいのかなって気がしてきてさ。ほら、私もいい歳になっちゃったし、この先もしそういう機会があったとして、ちょっとは小慣れた所作ができた方がいいのかなって」
    「ああ……」
     その気持ちは、リヴァイにも理解できた。しかし。
    「……AVを教材にするのはやめとけ。良くねぇ」
    「そうなの?」
    「あれはファンタジーだ」
    「何それ、ますます観てみたいんだけど。どうファンタジーなの?」
     リヴァイは盛大に舌打ちをすると、ノートパソコンをインターネットに繋げ、ブックマークからサブスクの動画配信サービスのページに飛んだ。アダルトコンテンツのカテゴリーにアクセスして、ハンジに目配せをする。
    「……え、何? 見せてくれるの?」
     ハンジはひらりとベッドから降りると、踊るように歩み寄ってリヴァイの隣に座った。
     ノートパソコンの画面には、沢山のアダルト作品のパッケージが並んで表示されている。
    「ねぇ、リヴァイはどんなの観るの?」
    「秘密だ」
    「何だよ、教えてくれたっていいじゃん。……ねぇ、これなんてどうだろう」
     ハンジが指差したのは、いわゆる素人ナンパモノだった。しかも熟女系である。
    「お前の趣味はどうなってる」
    「え? 駄目?」
    「まぁ、どうしてもと言うなら止めねぇが」
    「そんなこと言われたら怖くなるじゃないか。えぇ~、どんなのがいいのかなぁ……」
     リヴァイは溜め息をついた。
    「……お前、本当に経験がないのか」
    「ないよ!」
    「全くか? 知識はどの程度ある」
     もし、ハンジがあまりに無垢なようであれば、やはりいきなり映像を見せるのは良くないだろう。トラウマになりかねない。表現のマイルドなマンガか何かから、入った方が良いだろう。
     ハンジは「う~ん」と唸ってしばし考える仕草をしてから「いや、実はさ」と話し始めた。
    「大学の時……、彼氏はいたことあるんだよ。一人だけだけど。それで、まぁ、キスと、その、触りあい? くらいは……。最後まではしなかった……、というか、出来なかったんだ。その時の反省も込めて、勉強したくて。それで、観ときたいと思ったんだ……、AV」
    「ほぉ」
     咄嗟に不快感が胸に沸き上がるのを感じて、リヴァイは少なからず動揺した。ハンジが処女だという事実に、喜びを感じていた自分に気付く。どこまでも無知でいてほしい。リヴァイは心のどこかで、そう願っていた。
    「……最初は、ストーリーものが無難だろうな。フィクションなのがはっきりしてる方が客観的に見やすい」
     胸中の極めて自分勝手な不快感をハンジに気取られぬように気を付けながら、リヴァイはそう言った。
    「ストーリーものって? どれ?」
    「……例えばこれ、……これも」
     適当な作品を、マウスでポイントする。
    『ダメ、夫が帰ってくる……。夕暮れのキッチン、秘密の中出し』『超美人OL! 備品倉庫で潮吹き絶頂三昧』あられもない姿の女優と共に、そんな煽り文句がパッケージに踊る。
    「リヴァイは、こういうのが好きなの?」
    「目についたのを適当に言っただけだ。……これもそうだな」
     『清楚系パイパン女医の精液採取物語』。馬鹿げた煽り文句だが内容の想像がつきやすい。
    「へー、色々あるね。……あ、これにしようかな」
     制服姿の女優の横に、『ねぇ、教えて。禁断のお勉強』の文字が踊る。
    「まあ、いいんじゃねぇか」
    「……よし、じゃあ観よう」
     ハンジが腕を伸ばしてマウスを操作し、再生ボタンを押す。企業のロゴマークが写し出された後、さっそくドラマパートが始まった。
     制服姿の男優が、自宅の部屋で勉強机に向かっている。そこに、同じく制服姿の女優が入ってくる。二人は幼なじみという設定らしい。
    「ねえ、この男優さんさぁ、どう見ても四十代くらいだよね。女優さんも可愛いけど、どう見ても二十代半ば以上だよね」
    「AVあるあるだ。心の目で見ろ」
    「了解」
     
     女優がベッドに座って、男優に話しかける。
     なんでも、友達とセックスの話になって、処女なのは自分だけであることが判明したのだという。
     男優はひどい棒読みだが、女優の方はなかなかに演技達者である。
    「わりとちゃんと設定が練ってあるもんなんだね」
    「そうらしいな」
    「らしい? あんまり観ないの? こういう系」
    「AVをドラマパートまでちゃんと観る奴は変態だ。普通は飛ばす」
    「そうなの?」
     ストーリーは進んでゆく。いつの間にか女優と男優が、ベッドに並んで座っていた。 
    『コウくんは、エッチ……、したことあるの?』
    『あるに、きまってるだろぉ』
    『そうなんだ……。やっぱり私だけかぁ……』
     太ももをすり合わせてもじもじした後、女優は男優の腕を両手で掴んだ。
    『ねぇ、コウくん……。私に、エッチ、教えてくれない?』
     良くない。
     ここに至って、リヴァイはそう思った。
     一緒に観るのは、良くない。
     リヴァイが横目でハンジの様子を伺うと、同じく横目でこちらを見ているハンジと視線がぶつかった。 
    「……コンビニに行ってくる」
    「えっ?」
     そう言って立ち上がりかけたリヴァイの腕を、ハンジが両手で強く掴んだ。
    「待ってよ、一人にしないでよ」
    「は?」
     画面の中では、やたらと濃厚なキスが始まっている。
     わざとらしいリップ音の合間に、女優のくぐもった喘ぎ声が混ざり始める。
     リヴァイの腕を握るハンジの手に、ぐっと力がこもった。
    「……何か怖いよ。……一緒に観てよ」
     くらりと、眩暈がリヴァイを襲う。
     愚かだったと思った。
     無垢な女に性的な知識を与える優越感。初めてのAVに対する女の反応を見てみたいという、極めて下劣で卑下た好奇心。そんなものに、押し流された。
     そして今、リヴァイは怖じ気付いている。
     画面の中では、男優が女優のブラウスのボタンを外し始めていた。
     ハンジの手がリヴァイの腕をするすると滑り、手のひらに至る。ぎょっとするほど冷たい手だった。
    「……お願い、リヴァイ」
     そう言って、やんわりと手を握られる。
     スピーカーから、女優の喘ぎ声が響く。
     ハンジは悲壮な顔で、リヴァイを見上げている。
     逃げられない。
    「……クソが」
     リヴァイはそう呟きながら、ハンジの手を強く握り返した。 
     
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