シーツの上に形容しがたい液体が広がっている。
銀のような、光沢のある液体だ。
ラインハルトが横になってなお余裕がある寝台はそれなりに広いわけだが、液体はシーツの大部分を覆いつくしていた。シーツどころか、ラインハルトの体にもまとわりついている。
枕を腕の間に挟み込んで頬杖をついたラインハルトは、なんとも生温かい目でそれらを眺めた。
「……カールよ、そろそろ起きろ」
声をかけたところで応えはない。
だが、シーツ上に広がる水銀のごとき液体が波打った。
のろのろと一か所に集まり始めるそれに、苦笑を浮かべていたラインハルトは、液体の集合先がシーツの上でないことに、その美しい眉をすこし持ち上げて肩をすくめた。
懐くように、もしくはまだ寝ていたいと駄々をこねるかのように、ラインハルトの体にまとわりついた液体がうねる。液体は徐々に人の形を取り始めていた。ひとのかたちが人間と呼んでも問題なさそうな姿になっていく。急にずしりとした重みがラインハルトの上に生まれたのにあわせて、ラインハルトは頬杖をやめて背を寝台にあずけた。
べたりとラインハルトの胸に頬をつける体勢で友人がぼんやりとしている。夜闇のごとき髪には寝癖がついていた。形を取り直したというのに、わざわざ寝癖を作っているのはさてはてなんのためなのだか。
「……きをぬきすぎた」
「見れば分かるとも」
手櫛で寝癖のついた髪を梳かせば、寝癖がついていた箇所が妙なほどすんなりと整った。