うつむいてしまった香純を前に、蓮は沈黙を返すしかなかった。
夕食を終わらせたあと、少し話がしたいと切り出された。近頃続いている殺人事件のことや、蓮がなにかを隠していること、それについて話し合いたいと彼女は言った。
しかし香純を巻き込むつもりがない蓮が、彼女に言えることはなかった。
「……色々聞いちゃって、ごめんね。もう私、寝るね!」
わざと明るく言っているが、その声は震えていた。ぱっと身をひるがえして、部屋から出ていくその横顔から、涙がひとつぶ飛び立った。もたもたと壁に開いた穴から自身の部屋に帰っていくのをなんとも言い難い表情で見送る。締まらないな……。
「まったく。卿の代役は女の扱いが下手だな」
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