藍忘機の閻魔帳 藍忘機はついぞ江澄の暴言に耐えかねて、糾弾するための証拠を集めているらしい、そんなまことしやかな噂が流れ始めたのは秋口深まる日のことだった。
実際、江澄の言葉を書き付けている藍忘機の姿は色々な所で散見された。江澄の姿が見えなくなると、藍忘機はすっと手稿を取り出し何事かを書き付けているのだ。周りにいた子弟たちは、藍忘機が江澄の無礼な態度を書き留める、いわゆる閻魔帳をつけてるのではないかと顔を青ざめている。噂の出どころはそこだろう。
一体、藍ニ公子は何をしているのだろうか、と。
その答えはいつものように静室の中にあった。
言葉が鋭く攻撃的な江澄だが、基本的に彼は寡黙で、身内以外と言葉を交わすことがまず少ない。
3425