「え…?」
龍太郎は一拍遅れてぎこちなく振り返った。
「共同浴場…スか…?」
「あぁ。…と言っても村の有志で作った小さいものだが。そういえばお前とはまだ行ってなかったと思ってな」
そう言う一人は何かを思い出すように苦笑いしたが、どこか楽しそうだ。
「皆で少しずつ改良もしているのだ。今夜あたり行ってみるか?」
「は、ぁ…いやぁ、オレは…」
かたや龍太郎はあまり気乗りではなさそうな素振りを見せる。
気乗りではないどころか悪い秘密を暴かれたように怯える瞳が一人をいたずらにざわつかせた。
「無理にとは言わんが。体調でも悪いのか?」
「そういうわけではないっスけどぉ…」
龍太郎は不自然な挙動で視線を泳がせた。
「…?そういえばお前、先月の結核検診もサボっていたな。なにか…いや俺に言いにくいことであれば村井さんか他の…」
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