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    読み聞かせ慶のふたり。

    初出 20200509

    ##十二国記

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    TANKAmore

    MOURNINGこれつまらない病になってしまった。
    三麒が冬の戴でお買い物する話だった。 鼻が痛い、とぽつりと落ちてきた声に泰麒は苦笑した。
    「鼻が凍ると申し上げたでしょう?」
    「ものの喩えかと思っておりました」
     騶虞に騎乗した景麒を見上げる。たっぷりと巻きつけられた布と帽子の隙間から、顰められた目許が見えた。
    「冬に慣れた方がいいな」
     前を歩いていた少年が軽く振り返る。雪道も歩けるようになんねぇと、戴でもうちでも困るぞ。彼も軽く苦笑したのが布に覆われていても分かる。景麒が少し憮然としたのを隠せないように、六太は明るさを隠さない。

     やわらかい湯気を道行く人々へ溢れさせる飯堂しょくどうをいくつか過ぎ、泰麒はここですと立ち止まった。六太はふぅんとその廛舗みせを見遣る。騶虞がゆっくりと身を伏せて、景麒は慎重に誰かが刻んだ足跡に足を降ろした。蒼く影を湛えた足跡は、幸い麒麟の重さでは沈まなかった。景麒は心のうちでひとつ安堵する。白圭宮の真新しい滑らかな雪原に景麒が降りたとき、彼は雪に足を掴まれて身動きできなくなったので。途方に暮れた景麒が使令に救出される様を、同胞はにこやかに、あるいは苦笑しつつ見ていた。
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