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    うすや

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    @usu_6458

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    マロリク『ロマデ(ひめ巽)』です。(似たようなリクが複数来ていたのでまとめさせてもらいました)お題くださった方々、ありがとうございます!!

    ロマデ以降二人での仕事が増えるひめ巽が仲良く撮影する話。二人はまだ付き合ってないです。

    アフターデイト 『愛★スタ』の仕事をして以降、巽はHiMERUとセットでの仕事が増えたと感じていた。実際勘違いでも何でもなく二人での仕事は激増したし、それは偶然ではなく事務所が仕組んだことだということも察しているのだが。ネット記事のインタビューからドラマのゲスト出演に渡るまで、どうも二人セットでの仕事が多くなっている。それは巽だけでなく巽のファンたちも当然気が付いていて、貰うファンレターや藍良がたまに見せてくれるエゴサなるものを一見する限り、二人セットの仕事は一部の層には大いに好評らしい。仕事が貰えるのはいい事だしそれがALKALOID全体の知名度アップ、果ては神の愛を人々に伝えることに繋がるなら喜ばしいことではあるのだが、二人での仕事がウケている理由が巽にはいまいち分かっていなかった。
     そんなわけで今日もHiMERUとのペアでの仕事で、巷で好評の『愛★スタ』に出演している話題の二人を呼んで雑誌の特集を組むらしい。しかし二人での仕事といっても一緒に現場入りするわけではなく、巽は前の仕事の都合で後からの合流になるというHiMERUより一足先に衣装に着替えて撮影をスタートさせていた。
     衣装とは言うが上は殆どボタンを外した白シャツ一枚を羽織った姿で、大の大人が二人並んで寝転がっても余裕がありそうなくらい大きなベッドに巽は寝かされている。ソロ時代にもこういったグラビアの仕事は経験したことがあるが、コズプロの考えるプロデュース方針に沿わなかったのか周りのアイドルほど回数は多くはなかった。
     だがグラビアというものはアイドルの仕事の中では定番であり好評である。巽からすれば無駄にはだけた服を着た半裸の写真の何かそんなにいいのかさっぱりだが、需要があるのなら受け入れるのがアイドルとしての巽の考え方であった。だから企画を説明された時も何も言わず首を縦に振ったし、素肌にシャツ一枚だけ着てそこのベッドに横になってくれと言われても黙って従った。
    「じゃあ次はもっとアンニュイな感じで」
     表情作りは演技の一環である。ライブでもファンサとしてファンの求める表情や仕草をすることは当たり前のことで巽はそれについて不得意ということはなかった。むしろ、ウィンクや投げキッスなど初めのうちはみんな照れくさそうにする類のファンサも、巽は特段羞恥を感じることなく出来ていたタイプだった。別に羞恥心がない人間というわけではないのだが、これもアイドルとしての最低条件だと言われてしまえば仕事だと割り切ったし、元々他人からの求めに応えるのを歓びとする質なので、その点アイドルという職は天職なのかもしれない。
     しかし、今回のようなリクエストに応えるのは不得意だった。それは純粋にこの手の表情の引き出しがないからだ。生まれてこの方性的なものへの興味関心がほとんどなかったし現在進行形で持ち合わせてない巽には「アンニュイ」とか「色っぽいかんじで」とか言われてもまったくピンと来ない。逆に今日の相方は得意にしている分野だが、己はこういうものには向いていないと感じている。だが、得意ではないから出来ません、というわけにはいかないのがアイドルのつらいところで、巽はカメラマンの指示に試行錯誤しながら撮影を進めていった。

    ***

     それから何度か態勢や表情を変え、単体での撮影は無事終わった。ベッドから起き上がると引っかけていただけのシャツをきちんと着直す。次は二人揃っての撮影とのことで、巽は衣装を着替えるべく楽屋に戻ろうとする。すると、スタジオの入口のところでパイプ椅子に座るHiMERUを見つけた。
    「おはようございますHiMERUさん。もう来ていたのですな」
    「おはようございます。まぁ、誰かの撮影が少し押したせいで待機中ですが」
    「すみません。ああいった撮影は不慣れなもので」
     HiMERUは既に衣装に着替え、メイクも完璧に施された状態で簡素な椅子に腰かけていた。それが何だか可笑しくて思わず笑いそうになるのをすんでのところで抑える。
    「そう言う割にはなかなか様になっていたと思いますが」
    「ありがとうございます。HiMERUさんにそう言って頂けたなら安心ですな」
    「……そんなこと言ってないで、早く着替えてきて下さい」
     そう言われて追い出されるようにスタジオを出た巽は控え室に向かう。今回のメインとなるツーショットで着るのは『愛★スタ』でも使用した衣装で、バレンタインらしく赤がアクセントとなった華やかなものだった。普段ALKALOIDで用意されている衣装とは色も系統も全く異なるそれはどこか新鮮で、初めて袖を通した時には鏡に映る自分をまじまじと見てしまったほどだ。
     着替えが終わって軽くメイクを直してもらっている間にセットの方は完成したらしく、巽が再びスタジオに入るとすぐに撮影が再開された。先程まであった大きなベッドは撤去され、小道具も何もなくなったカメラの前に立つ。
    まずは普通に二人並んでとのことで、半身分間隔を開けて並んだら「ほら、二人とももっと近寄って!」と指示が飛んできた。巽としては意識して間を開けた訳ではなかったし、ユニットの誰かと二人並んで撮影する時と変わらない距離感だったのだが、カメラマンは肩が触れ合うほど近づけと言う。ちらりと隣を見ると、HiMERUは苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。HiMERUが一向に動こうとしないため、巽が半歩横にずれると二人の肩がギリギリ触れ合う。
    「そうそう、仲睦まじいかんじで頼むよ!」
    「……善処します」
     一息置いて絞り出すような声で答えたHiMERUに巽は共感の念を持った。巽としてはHiMERUと仲が悪いわけではないと思っているが、だからといって「仲睦まじく」というオーダーに応えられるほどの関係値を築いてはいないだろう。これがファンの間でも疑似家族のようだと言われているALKALOIDの誰かとだったなら“家族”としての仲睦まじい様子を演じられたしそれをすることに抵抗感も疑問も抱かなかった。しかし、HiMERUと巽との間には“家族”という言葉はあまりにも不釣り合いに思える。なら“友達”ならどうかと考えるけれど、過去も今も巽はHiMERUと“友達”になることが出来なかった。とにかく言われるまま肩を寄せ合いポーズをとっていると、隣から肘で軽く小突かれる。
    「仕事中ですよ、集中してください」
    「すみません。どうしたら仲睦まじく見えるのか分からなくて」
    「それはHiMERUも同意見です。ですがまぁ、撮影は順調に進んでいるのでこれでいい、ということではないでしょうか」
     今しがた撮った写真を確認しているカメラマンやスタッフたちの顔は皆明るい。それに巽はほっと胸を下ろしたのもつかの間、次なる指令に二人は思わず顔を見合わせてしまった。
    「次は座った絵が欲しいな……それじゃあ、HiMERUくんが巽くんを後ろから抱き締めてる感じで頼むよ! 仲良さそうにね!」
    「…………HiMERUさん? 大丈夫ですか?」
     うんともすんとも言わなくなってしまったHiMERUを気遣うように声をかける。すぐに意識を取り戻したが、その顔には不満の色がありありと浮かび上がっていた。
    「HiMERUさん」
    「巽に言われずとも、仕事である以上はしっかりとやり遂げます」
     それからカメラマンの指示通り巽はHiMERUの足の間にいるような形で床に座り、後ろから伸びる長い腕にゆったりと拘束されている。二人の仲が良いように見せたいという先方の気持ちは十分に伝わってくるのだが、果たしてこれでいいのだろうかと巽は首を傾げるばかりだった。
    「はぁ……」
     HiMERUのため息が首筋に当たるのがくすぐったくて、巽は撮影の妨げにならないようにしながらも少しだけ身をよじった。きっとHiMERUもこの状況に戸惑っているのだろう。今回の撮影のコンセプトもそうだが、幼少期から誰かと触れ合うという経験をしてこなかった巽にとって今日は戸惑うことばかりだ。
    「どうしました?」
    「え?」
     先に沈黙を破ったのは意外にもHiMERUの方だった。
    「先ほどからそわそわして落ち着かない様子でしたので」
    「……実は誰に抱き締められるというのが初めての経験でして。自分では自覚していなかったのですが、やはりどこか緊張していたようですな」
     お恥ずかしい、と巽は力なく笑えば、HiMERUは巽の頭を擦り寄せるように近づいてきた。はらりと落ちた髪の毛が頬に当たって、巽はふふっと笑ってしまう。
    「やはり俺は寂しい人生を送って来たのでしょう」
    「……HiMERUもこうして他人と密着するのは初めてです」
     まるで内緒話でもするかのように、耳元でひっそりとHiMERUが呟いた。
    「もしかして、慰めてくれていますか?」
    「っ! HiMERUはただ単に事実を述べただけですっ! 慰めてなんていませんから!」
    「ぐぎぎ!? 締まってます! 首が締まってます!」
     突然回された腕に力が込められ、巽の首を圧迫する。撮影の最中にアイドルが同業者の仕事相手を殺してしまったとなれば一大事どころの話ではない。巽はHiMERUの腕を咄嗟に掴んで声を掛けると次第に首を絞めつけていた腕の力は弱まっていった。ほっと一息ついた後、ただのおふざけだったのだと言い訳しようと辺りを見渡したが幸運にもカメラマンは他のスタッフたちと一緒に話し合いをしていて誰も巽たちの方を見てはいない。
    「死ぬかと思いました……」
    「まったく。巽が変な事を言い出すのが悪いのです」
     巽としては何もおかしなことは言っていないつもりだったのだけれど、HiMERUには受け入れ難かったようだ。死ぬか生きるかの瀬戸際を乗り越えた身体は意志とは無関係に力が抜け、そのままHiMERUに体重を預けるようにもたれかかってしまう。自分と同じくらいの背丈の男がもたれかかってきたら重いだろうに、先ほどのことを反省しているのかHiMERUは苦言を呈することなく受け止めてくれた。
    「ふふ」
    「……何ですか巽」
    「いえ、何でもありませんよ」
     かつての日々とあったかもしれない未来を思いながら、巽はただ笑うのだった。





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