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    okayudesuga_rn

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    okayudesuga_rn

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    ◆12/24Webオンリー本の部分的ぶつ切りサンプルです。
    ◆ウヤイロが気持ちを通じ合わせてます。
    ◆サンプルには直接的な行為はないのですが何をもって年齢制限になるか不安でしたのでR設定にしました。

    #R-18

    火のないところに煙は立たぬ 剣聖様の噂のお相手


     そもそも付き合うということは何をするものなのだろう。
     幼い頃から剣の修行に明け暮れていたイロンデールはその手の話題に触れる機会は少なかった。
     興味がないわけではないが彼らの性的嗜好に共感ができなかったので、そのような会話に時間を割くくらいなら鍛錬をしようと自然とその輪から離れたのである。
     加えてジダ城に出入りするようになったこともその無知に拍車をかけた。サイファは勿論、周りの大人たちが下世話な話を少年相手にすることはなく、結果的にイロンデールは相手のことを好きだという感情は持ててもその先のことが全くわからないまま成長したのである。
     城の蔵書室に足を運んでみたものの、勿論自身に必要な本はなく、人体の構造を知ることができただけであった。
     これまでの生活の中で見てきた情報といえば城下を歩く所謂恋人関係にあるだろう者たちは手を繋ぎ、お互いの体を寄せ合っていたということだ。
     それは流石にイロンデールの性分ではなく、ウーヤとそのようなことはできない。
     ――他に男女でやることと言えば口を吸って、あとは肌を合わせるくらいか?
     接吻はした。それならば今考えられるものとして有力なものは肌を合わせるということになる。
     ――肌を……合わせる……?
     ふとイロンデールは思考を止める。
     どのようにやるのだろう。
     男性が女性に、というなら知識はある。
     だが相手はウーヤだ。
     ――俺が……旦那に入れる? 旦那のどこにだ?
     唸りながら蔵書室から出たイロンデールは好奇の眼差しを向けられていることに気付いた。
    「うん……?」
     そちらを向けば兵士たちが慌てて目を逸らす。
    「おい、どうした?」
     問いかけても彼らはいいえ、と顔を引き攣らせるだけだ。
    「なんでもないようには見えないんだが……?」
     イロンデールの声色で返答すべきだと思ったのか、兵士の片方が口を割った。
    「そ、その! イロンデール様のご結婚が近いと伺いまして!」
    「……結婚?」
    「いい人ができたという話が耳に入りました!」
    「こういった場所には基本的に足を運ばれないのでそういったしきたりなどを調べていらっしゃるのかと!」
    「……」
     サラリと失礼なことを言われたことはさておき、結婚など青天の霹靂だ。
    「なんだ、俺は結婚することになっているのか? 誰とだ?」
     政略結婚だろうか。そのようなことを考える者は以前のジダ皇国ならば兎も角今はいないと思うのだが。
     問いに、兵士たちは互いに顔を見合わせた。
    「誰……って、どなたなんですか?」
    「イロンデール様が懇意にしている女性ではないのですか?」
    「俺が懇意にしている……?」
     益々謎めいてしまいイロンデールはその場で考え込む。
    「昨日その方と逢って来たのではないのですか?」
    「いや……昨日は――」
     昨日のことはよく憶えている。
     ウーヤと気持ちを確かめ合ったあと、宣言通り猪肉を手に入れるために山に入ったイロンデールは手際良く罠を仕掛けてジダ城に戻った。
     山道はただでさえ悪路だというのに加えて小型のジャープワオーンに遭遇したので予想以上に体力を消耗した。体を動かしたことで襟巻きの内側に熱が籠ってしまい、それを逃がそうと首元の布をパタパタと動かして空気の入れ換えをしていたところで桜華の剣士とすれ違う。
     こちらの疲労を察した彼は『今なら誰も風呂に居ない筈だ』と教えてくれたのだが途中でぎこちない態度へと変わり、別れ際に一言
    「あまりそこを寛げると見えてしまいますよ」
     と妙なことを言い残した。
     それだけだ。
    「――昨日はウーヤの旦那と縁日に行って、夕刻には猪肉を手に入れるために山に行っていた」
     イロンデールの答えに兵士たちは目を丸くした。
    「しかし情熱的な女性だという具体的な話も聞きました。お付き合いをしていなくてそんな話が出るなんて……」
    「そう言われても心当たりがないのは確かだぜ。俺はずっと剣の腕だけ磨いてきたからな。そういうのは縁がなかったしどうしたらいいのかもさっぱりわからない」
     だからこそ、この書庫に来たのだがそれは伏せる。
    「し、失礼しました!」
     片方が謝罪し、もう片方が続ける。
    「喜ばしい話だと思い、自分のことではないのに舞い上がってしまいました!」
    「構わないが、そうか……」
     つまりはそういう話が出てもおかしくない年齢なのだ。
     本来の歳のとり方ならば。




    **********

     自己韜晦 とうかい


     ウーヤの朝は早い。
     陽が昇りきらないうちに布団から出て、洗面を行ない、武闘着に着替えてから髪を簡単に纏める。
    「うぅ……旦那?」
     眠い目を擦って燕が布団の中から顔を出した。いつからだったか、潜り込んでくるのが当たり前になった。
     巣にされてしまったと言っても過言ではない。
    「まだ早い。お前は寝ていろ」
    「……」
     イロンデールは返事もせず薄く射し込む日差しを避けるように布団の中に潜っていった。
     共に眠るようになってからわかったことだが、この男は有事の際は目覚めが良いくせにそれ以外ではのんべんだらりと朝を過ごす。
     以前指摘したところ、
    「旦那が早すぎるんだよ」
     と不満を口にしていた。
     そういったわけでイロンデールとは動き出しの時間が一刻程違うのである。
    「旦那は城の風呂を使わないんだな」
     ある夜、イロンデールが俄かに口を開いた。砥粉色の髪に櫛を通してやっていたのでどのような表情をしているかはわからず、その意図を汲めなかったがただ興味があって聞いてきただけのようにも取れる。
    「む……」
     考えていると、更に畳み掛けられる。
    「湯船に浸かって話してると心なしか距離が縮まるっていうか、親睦が深まるんだぜ?」
     誘われているのだろうか。ここは気付かないフリをしてやり過ごしてみることにする。
    「この部屋にも湯殿はある。それで賄えている」
    「それもそうだが、窮屈じゃないか?」
     イロンデールの言うことも一理ある。確かに備え付けの風呂は足を伸ばして入ることはできない。イロンデールくらいの身長ならば問題ないだろうが、そこまで言うと怒り出すだろうから口にはしないでおく。
    「 城の者たちはきっと俺に気を遣うだろう。好きな時に自由に風呂が使えるというのは心にゆとりを作るものだ」
     答えるとイロンデールはなるほどな、と相槌を打った。
    「俺は俺たちも城の者たちに含まれるから好きな時に使いたいって思っちまうが、まぁ、旦那の言うこともわからなくはない……」
    「うむ」
     返事をしてウーヤはイロンデールの髪から手を離す。次に向日葵油の入った小瓶を傾けて掌に適量を出し、それをイロンデールの髪に馴染ませていく。油自体は無臭なので指を入れる度にイロンデールから石鹸の香りが漂った。
    「……」
     湯上がりの彼はどこか色気を孕んでいる。
     無防備に晒された首筋はほんのりと朱色に染まっていてゆったりとした浴衣は彼を華奢に見せた。
     警戒することなく他者に背中を向けるなど、この男は絶対にしない。それを許されているのだから誠実でありたいところだがこうも隙だらけな姿を見せられるとそれも中々難しいものである。
    「――終いだ」
     イロンデールを自由にすると、彼は指を組んで腕を垂直に上げ、ぐうっと伸びをした。
    「ありがとな、旦那」
    「大したことはしていない。先日触れた時に全体的に痛んでいたのが気になっただけだ」
     寝台の上で抱きしめて唇を重ね、髪をぐしゃぐしゃと混ぜた時に気付いた。
    「……そうか」
     イロンデールが思い出したのか頬を染めて返事をした。
     ――可愛い、などとは……。
     そう考えながらウーヤはイロンデールから目を逸らす。
     性的興奮を覚えてはいけない。
     イロンデールの気持ちを受け止めた時にそう自戒していた。
     肌を合わせるのはやぶさかではない。ただ、その時を迎えることにウーヤは二の足を踏んでいた。それでも何度か踏み止まれずに口を吸って所有痕を残すことはしたが。
     イロンデールもそれなりに知識はあるだろう。
     彼は情欲を持て余した時によく姿を見せるのでその先に進む可能性がある事も承知で来訪していると考えられる。時々伺うような言葉を紡ぐのが何よりの証拠であった。
     それでも決定的な誘い文句を言わないのは、こちらの気持ちを見透かしているからなのだろう。
     自分のことが本当に好きなのかと問われたことはない。
     こんな子供騙しのような上辺だけの関係はもう疲れたと言われたこともない。
     恋愛関係にあるからと肌を重ねる必要はないしお互いを大切に想っていればそれで良いと言ってしまえばそれまでだが、互いにそれを口にしたわけではないのでこのままではいけないと思う。
     だがウーヤからはどうしても言い出せなかった。
    「――旦那」
     いつの間にか寝台に移動していたイロンデールが布団の上で四肢を広げて横になっている。
    「明日は東の村まで行くんだぜ。晩酌なんてしないで早く横になった方がいい」
    「その割には俺を寝かせようという気が感じられん」
    「今日誘ったのは旦那だろう?」
     薄く笑みを浮かべたイロンデールが片膝を立てて浴衣の裾から大腿を覗かせた。
    「俺は髪に油を入れると言っただけなのだが……」
     ぼやきながらウーヤも寝台にその身を乗せた。股の間に膝を置いて見下ろすとイロンデールから笑みが消える。
    「口……吸ってくれればそれでいい。明日は早いし、俺もわかってるつもりだ」
     何を理解しているのかと問うことはできなかった。
    「イロンデール……」
     名を呼んで唇を重ねる。寂しそうにしているので舌を絡めてやった。
    「んっ……ぁ、ん……」
     トロっと瞳が蕩けた。
     その場の空気に酔うのが早すぎで心配になる。
     腰が揺れているので快感を逃がそうとしているのはすぐに理解できた。
     ウーヤは膝をイロンデールの恥部に押し当てた。それを使って良いと口にはしなかったが、彼はすぐに状況把握をして、芯を持ち始めた場所を大胆に擦り付ける。
    「んむ……ん……」
     唇を離してはもう一度重ねる。




    **********

     百聞は一見にしかず


     鴉の英雄と剣聖イロンデールという立場はどこででも優遇されるらしい。
    「では二名様で特別室一室。こちらの階段から上がった部屋でございます」
     ウーヤと動くようになり、以降何度も出先で宿に泊まることを経験してきたが、その殆どは別室を用意してもらっていた。
     部屋の鍵を渡されたウーヤが問いかけるようにこちらを見てきたので視線で問題ないと返事をした。
     同室になるのはアルヴァロとフーゴの謀反でサイファが毒に倒れ、自分が自暴自棄になった時以来だ。あの時とは互いの関係性が違うので同室ということに異議の申し立てをするはずもなかった。客室に露天風呂があるらしいので堪能させてもらうことにしよう。
     扉を開けると無垢材の床面が広がり、部屋の中央には机と椅子が置かれている。正面にある大きな窓から夕陽に染まるジダ城が確認できた。
     右側に寝室が確認できる。出入り口には扉がなく、覗いてみると幅広の寝台が二つ並んでいた。ジダ城からはそれなりに距離があるので、これだけふかふかの布団を調達するのは苦労しただろう。
     一方で反対側は扉で間仕切られている。厠と洗面台があり、そして目玉の露天風呂が姿を現した。石造りの浴槽はたっぷりの湯で満たされている。
    「すげえな。これだけの部屋をあの値段でなんて破格すぎる……」
    「うむ。あとで心付けを渡さねば」
     荷物置き場に背負っていた応急薬の袋を置き、装備を取り外しながらウーヤが答えた。
    「……取り敢えず休んでからだな。土埃も被っちまったわけだし」
     イロンデールもウーヤに習って背負っている次元刀を置いた。チラリと鴉に視線を送ると、まだ肩の防具を外したところだ。
    「あーもー! ……ったく、いつまでそうしてるつもりだ?」
     語気強くそう口にしたイロンデールはズカズカとウーヤに歩み寄り、その顔を睨み付ける。
    「……」
     ウーヤはこちらの勢いに気圧されたのか、はたまた思うところがあったのか何も言わなかった。
     構うものかとイロンデールは続ける。
    「左腕、痺れてるんだろ? 足にも少しきてるんじゃないか?」
    「……」
     ウーヤはその視線を自身の腕に移す。
    「森の中にいる時から妙だなとは思ってた。小枝にぶつかっても気にせずに歩くし、この宿に入る時には足も……僅かだけど引き摺ってたからな」
     言いながらウーヤの左手を掴む。だらんと力ないそれはウーヤの体幹にただくっついているだけの飾りのようだ。
     毒性が弱いのならばとウーヤの言葉を信じていたが、この状況から鑑みるとあの巨体と共生しているうちに神経毒が変性してしまっていたと考えるのが自然である。
     イロンデールは長い溜息を吐いた。ニボカブラを切り落とした方角が悪かったとか巨絶屍人にトドメをさすのが遅れたとかそういった後悔を今しても仕方ない。実害があったこの男がそれを隠しているのも気に食わなかったがきっとこちらを思いやる気持ちから現れた行動なのだろう。
    「……椅子に座りなよ、旦那。俺がやってやるから」
    「うむ、面目ない」
     らしくもなく従ったウーヤの防具を不慣れながらも外していく。
     改めて触れた腕はがっしりと太くて逞しい。ボロボロの長手甲のあちこちに血液が付着していて傷は深いように見えた。
     普段から稽古をしていたし、寝所でだって何度も触れてもいたが、ここまで傷付いているのは滅多に見ない。
    「この状態で風呂に入るのは無理だから湯を汲んでくる。帯を解いてくつろげといてくれ」
     イロンデールは箪笥の中から手巾を取り出し、次に風呂場から湯を調達した。衛生面を気にしたらあまり褒められたものではないかもしれないが綺麗にしないよりはマシだ。
     机の上に桶を置いて手巾を沈め、ウーヤが持ってきた荷物を確認する。
     彼の部屋にあった消毒薬や軟膏、湿布に包帯など簡単なものばかりだが充分だ。それらをまるで店のように机の上に並べたイロンデールはウーヤの手当てに取り掛かる。
     艶のある黒髪を手巾で挟んで汚れを拭い、それから長手甲を外して腕を拭いていく。痺れが強い所為か、ウーヤが痛みに顔を顰めることもなかった。薄皮が剥けないように、傷の部分は押さえるようにして丁寧に行なう。
    「甲斐甲斐しいな」
    「怪我人を大事にするのは当たり前だろ」
     ウーヤの言葉に即座に返答した。優しい目でこちらを見つめてくるので恥ずかしくて仕方がない。
     桶の湯がすぐに汚れていくので何度か新しいものを準備した。左腕が綺麗になったのならば次は別の場所だ。
    「この辺りは感覚があるのか?」
     問いながら、イロンデールは背部を拭いた。僧帽筋や広背筋の盛り上がりから並々ならぬ鍛錬が成されたことを感じ取る。
    「うむ。今のところは、と言うべきだろう」
     ウーヤが自身の右手を眺めた。
    「こちらにも僅かに痺れが広がっている。破壊者おれには毒の類は効果がないのだがここまでとなるとかなり強力だな。お前が浴びていれば森を抜けられなかったかもしれん」
    「聞いてゾッとするぜ。旦那がこうなっちまって良かったってわけじゃないが」
     イロンデールは眉根を寄せる。
     ウロボロスの所為なのかははっきりしないが、これからも変異した相手と対峙する可能性はあるだろう。次もこの程度で済めば良いが。
    「ふむ? また一人で抱え込んでいないだろうな、イロンデールよ?」
     ウーヤの声にぎくりとする。否定して誤魔化そうとしたが言葉が出てこない。
    「……心配をかけてしまったか」
     静かに言われて、イロンデールは観念した。
    「心配なんて、当たり前だろ。旦那がいなくなったら……いなく、なっちまったら……」
     唇を震わせ、イロンデールはそのまま俯いた。
     サイラスの時もサイファの時も昨日のことのように憶えている。
     あの喪失感は二度と味わいたくない。
     ウーヤが右の示指を動かしてちょいちょいと呼ぶので前に回った。
    「なんだよ?」
    「辛気臭い顔をしている」
    「……馬鹿にしてるのか」
    「もっとどっしり構えろと言っているのだ。ここが戦場なら士気が乱れる」
    「そ、れは……」
     その通りで、イロンデールは奥歯を噛み締める。
    「とはいえ、今回は俺も少なからず油断をしていた。今後はこのようなことがないよう精進しよう」
    「……」
    「さて、反省は終いだ。一度布団で休みたいのでもう少し手を貸してもらえんか?」
    「あぁ、任せときな」
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    okayudesuga_rn

    DONE◆スマホアプリゲーム アルカラスト の二次創作です。
    ◆ウロボロス討伐前の、十傑集合より前くらいの設定で書いてみました。
    ◆なので設定かなり捏造です。
    ◆なんだったらオメガバースネタなので更に設定捏造です。
    ◆東方鴉×世話人にしようと思いきや前段階の皇王×世話人になりました。
    ◆なんでも許せる方のみ先に進んでください。
    世話人はそれに逆らえない! その日、イロンデールは謎の高揚感に悩んでいた。
     異形のものを討伐しに出かけ、予定通り任務を遂行したことが原因かと思っていたのだがどうにもいつもと感覚が違う。
     ――体が熱い……。
     汗が頬を伝い、首へと流れ落ちていく。体を動かしたからではない。どちらかというと発熱の時に近い現象だ。
     とはいえ、イロンデールにはその状態になるようなことの心当たりがまるでなかった。剣士として修行を始めてからは健康体そのもので昨日も一昨日もその前も感冒症状はなかったのだ。
     ――くそ……。
     心の中で悪態をついたイロンデールに声をかけたのはアイリスだった。
    「大丈夫か? 熱があるのではないか?」
    「熱? 俺がか?」
     極めて平然を装ったが体の方は限界を訴えていた。呼吸も荒くなるし何よりも困るのは下肢の違和感だ。
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