ハロウィンとか相談所(7) 霊幻が布団の中で一人悪戦苦闘している頃影山家では。
「シゲオ、明日空いてるか?」
「明日は部活だけど…何かあったの?エクボ」
風呂上がりのモブは相変わらず牛乳を飲みながら部屋の中に浮かぶ相棒を見上げた。
「いや…まだ何かあるか分からねぇんだが…ちょっと気になることがあってな…」
エクボは昼間相談所にやって来た市長のことを話した。どのみち本当にイベントに出ることになれば誰もが知ることになるわけだから、これは告げ口したことにはならない…はずだ。
「ふぅん…そんなことが…。まぁ、普通のイベントなら師匠は上手くやると思うけど」
「そうだな。俺様が心配し過ぎなだけかもしんねぇ」
「エクボ、そんなに師匠のこと、心配なんだ?」
「は?いや、俺様は別に…!」
と言いつつ、昼間からどうにも引っ掛かっているのは事実である。
「そりゃ、あれだ、これが霊現象に関係することだったら、俺様しか気付きようが無いわけで、後からあーだこーだ言われるのは面倒くさいからなっ!」
「ふぅん…?」
しかし以前のエクボだったらここまで積極的に事件に関わろうとはしなかっただろう。それはエクボにも分かっている。だが、自覚はなかった。
「とにかく。何か裏があるかどうか調べてからってこったな」
「うん。僕が行った方が良ければいつでも連絡してって師匠に言っておいて」
「ああ…」
そうは言ってもあの意地っ張りな霊幻のことだ。揉め事が起きてもモブに助けを求めるのはおそらくギリギリになってからだ。それまでに大体の場合事態はこんがらがって面倒くさいことになる。エクボはそれを危惧していた。
「じゃあ、僕の代わりに律に行って貰おうか?」
「いや、りっちゃん、今は受験勉強で忙しいだろ。俺様が部屋に入っただけでも消されかけるってのに霊幻の世話なんて頼めねぇよ」
「それもそうか。あ、そうだ。彼なら助けてくれるかも」
そう言ってモブはスマホを取り出し、どこかに電話をかけ始めた。
数回コールののち、電話の向こうから声がした。エクボもそこに耳を寄せる。悪霊に耳があるのかは謎だが。
「影山くん?久しぶりだね」
「久しぶり。ちょっと話、いいかな?花沢くん…」
電話の向こうでは市外の高校に通う花沢輝気の声がした。