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    ekri_relay

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    書いた人→ひづき

    ハロウィンとか相談所(11)「これはね、ある男の呪いですよ。んー、男達と言った方がいいのかな?」
     島崎は魔法陣から離れると、テルとエクボに向かってゆっくりと歩きだした。相手に敵意が無いとわかっていても、自然と身構えてしまう。
    「聞かされた話をそのまま話しますが、どうやら世界とは複数の類似した時空間から成り立っているそうです」
    「それは、パラレルワールドって話ですか?」
     ある時空から分岐し、それに並行して存在する別の世界。もし、第二次世界大戦で日本が勝利していたら。もし、ヒトラーが生まれてこなかったら。『もし』の数だけ存在する可能性の世界……しかし、島崎はそうではないと首を振る。
    「もっと有り得ない世界の話です。時が永遠に止まった人間が友人とお茶を飲んだり、太陽の光で死んでしまうほど弱いのに人の血を吸って生きている者が居る世界」「……それは、何かの比喩ですか?」
    「いいえ、そのままの意味です」
     ニッコリと笑う顔は、この男がかつて世界征服を目論んだ超能力組織「爪」に所属する、ボス直属の幹部"5超"の一人だとは到底思えない。パッと見は人当たりの良さそうなただの青年だが、その実、盲目にも関わらず無数の銃弾すら余裕でかわす程の実力の持ち主である。意識的か無意識なのか、テルはジリジリと後退し島崎との距離を僅かでも取ろうとする。まぁ、瞬間移動能力を持つ男の前では実際の距離などなんの意味も持たないのだが。
    「不幸にも、どの世界線でもその男は愛する者と結ばれる事が無かったそうです」
    「はぁ?じゃあ、この魔法陣は『リア充爆破しろ!』とかそういうモンだってことか?」
     島崎から視線を向けられ、エクボは慌ててテルの後ろに隠れる。
    「消えるのは世界です」
    「……は?」
     男は……いや、男達はこの世界を呪った。ある者は首を刎ねられ、ある者は塵と化し、こんな報われぬ世界なら、いっそ無くなってしまえと本気で思ったのだ。想いは、時として強い呪詛となる。
     話の規模があまりにも大きすぎて、テルもエクボもそれが本当の事なのか島崎の作り話なのか断定できない。仮に嘘だったとしても、どうしてそんな虚言を吐くのか理由がわからない。飄々とした男の態度が、更に二人の判断力を鈍らせる。
    「私も、誰かにそんな風に強く想ってもらいたいものですね。……話がそれました。たぶん、今後調味市中に同様の魔法陣が現れるでしょう」
     島崎としゃべっている間にも、魔法陣はどんどんと薄くなって、そこにはまるで初めから何も無かったかのように消えてしまった。
    「市長がウチの零能力者にハロウィン監修を依頼してきたのもその辺の理由か?」
    「さぁ、私は怪しい気配を感じて飛んで来ただけですから。コレが何を意味するのかすらわかりません。私が来た時には既に首謀者の姿はありませんでしたしね」
    「僕が感じた違和感の正体はその『首謀者』さんだったのかな」
     そう言って、テルが首を捻る。薄っすらではあったが島崎とは別の「ナニカ」の跡を確実に感じた。
    「ったく、世界征服の次は世界滅亡かよ。お前んトコのボスは一体何考えてやがるんだ」
    「今回の件にウチのボスは関係ありませんよ。むしろ、重要なのはそちらの所長さんです」
    「はぁ?ウチの零能力者が世界の消失にどう関わるってーんだよ」
    「さぁ。でも、私よりも付き合いの深いあなた達二人の方が良くわかるんじゃないですか?」
     その言葉に、二人の脳裏によぎるのは影山茂夫の暴走である。あの時、霊幻が居なければ事態はもっと深刻な状況に陥っていたであろう。あのレベルの災害が再び調味市を襲うとでもいうのだろうか。テルはゴクリと唾を飲み込む。
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