うちのこ小噺▶さがしさがされ
すみかで目が覚めるとあにのこはいつも居ない。いつもの事なので気にしない。のでいつもの様に探しに行く。
孤島、草原、雨林、峡谷…捨てられた地は怖いから、すみっこをそろそろと飛んでいく。
飛んで飛んで、書庫に行く手前で力尽き、へなへなと砂の丘陵に落ちる。
あぁ、今日も見つけられなかったなぁ。わたしもあにのこと同じ数の羽があったらなぁ…。
いつも眺めてばかりの大きな背中。記憶の中の背中の星を数える。11枚の大きな翼。わたしもいつか、あにのこのように…そこで意識が途切れた。
私を呼ぶ声がする。
…不思議な事に、いつも目が覚めるとそこにあにのこがいる。なんでだろう、わたしは見つけられないのにわたしを見つけるのは簡単なのかな?
▶ひびわれたものたち
雨林の廃墟でぼーっとしている。絶えず降る雨の音、渡る鳥の囀る声、死んだ鯨の呼ぶ声、それをぼーっと聞いている。見ている。別にすることなんて俺にない。
崩れ落ちた廃墟、廃れた文明の残りカス。自分にお似合いだ。顔の大きな傷跡を見て逃げる星の子達は、こんなとこには来やしないから。あいつ以外は。
しばらくして聞きなれた声が聞こえてきて溜息をついた。騒々しい奴。立ち上がって空を見上げる。
桃色の羽を広げ、あねのこが降ってくる。
やっほー!と言ってごく自然に肩に飛び乗ってくるあねのこに、悪態をつきながらも完全にそれを受け入れて今日も空を飛ぶ。二人はいつも一緒。