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    Gray_reign_

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    アダソン現パロ
    アダ記憶あり、ソン記憶なし。
    続くか未定。

    ❅*・「…ソーンッ!やっと見つけた」

    ずっとずっと、探していた。俺が見間違えるはずがない。雪のように白く、絹のように透き通った白髮に、俺と同じヘリオドール色の瞳。
    その容姿は、紛れもない前世での俺のたった一人の肉親、ソーン=ユーリエフだった。
    幼い頃から、俺には前世の記憶があった。王宮で弟たちと過ごした日々、そして聖戦。最初は戸惑いこそしたが、弟はどこにいるのだろうか、寂しい思いはしていないだろうか、段々とそんな気持ちに移り変わっていった。ずっと長い間、探してはきたが、本格的に探すようになったのは、大学を卒業してからだった。もし、仮に本当に弟が見つかったら、なに不自由なく暮らせるようにしよう、そう決めていたからである。また、一緒に暮らせる日がくることを願いながらも、数年、見つかることもなく、そろそろ諦めどきなのではと考えていた矢先であった。
    この世界で、再会できた喜びのあまり勢いよく、しかし大切なものに触れるかのように柔らかに抱きしめる。やはり身体は覚えているのか、抱きしめた心地からして、俺の探していた弟で間違いなかった。

    「ひゃっ!…ぅう、えっと、、どちら様でしょうか?なぜ、僕の名前を知って…」
    「…お、俺のことが分からないのか、、?」

    まさか、前世の記憶があるのが自分だけだとは思ってもみなかった。俺が覚えていたのだから、弟も覚えているのは当たり前だとばかり思っていたが、神様は優しくはなかったようだ。この世界はなんて残酷なのだろうか。哀しさと困惑の気持ちが交じる。それでも、前世での弟である彼を困らせたくはなかったものだから、抱きしめるのをやめては、にこりと偽りの笑みを浮かべる。

    「その…急に抱きついてすまなかったな。人違いだったみたいだ」

    きちんと笑えていただろうか。泣きそうな、そんな表情で困らせてしまってはいないだろうか。ふと、そんな不安が頭をよぎる。

    「いえ、大丈夫です。それに…なんだか、少し懐かしいような気がしたんです。どうしてなんでしょうか?」
    「ふッ、なんで俺に聞くんだ?おかしなやつだな」

    こてりと小首を傾げ、俺には今のお前の気持ちなど分からないというのに、こちらに問いかけるのだから、思わず自然と笑みが零れた。記憶がないというのに、お前は全然変わっていないな。もっと話していたいという思いもあるが、これ以上、ここにいたらさすがに泣きそうであったのも事実で。

    「じゃあな、"ソーンくん"。元気でな」

    今の自分は、彼にとっては赤の他人であるはずで、そんな自分に呼び捨てにされるのもどうかと思えば、呼び慣れない君付けをしてみる。
    それでも、少し名残惜しくて、わしゃやわしゃと数回彼の頭を撫でた。
    それから、俺はここから立ち去ろうと踵を返した。だが、すぐにぐいっと片腕を引かれる感覚がして、視線をまた戻した。

    「どうかしたか?」

    再び見た彼はなぜか少し泣きそうな表情をしていて。本当は抱きしめたかったのだが、すんでのところで思いとどまった。きっと、今抱きしめてしまったら、絶対に離してやることができない。

    「あの…えっと……また、会えるでしょうか?」
    「ッ…」

    腕を掴む手に、ほんの少し力が込められたのがわかった。俺はこれっきりにするつもりだったんだがな。お前がそれを望むなら、会いにいこうじゃないか。

    「あぁ。会えるんじゃないか、そのうち。また、会えたら、そのときは……俺の名前を教えるよ、ソーン。」

    約束ではないのに、こんな曖昧な言葉であったのに、嬉しそうに笑顔を見せるのだから、会いにいかないわけにはいかなさそうだ。「兄様」とまではいかないが、再び俺の名前を呼んでくれるときがくるのが、待ち遠しい。

    「はいっ!絶対、お名前教えてくださいね」
    「また、会えたらな。そのときは、お前の話でもたくさん聞かせてくれ」
     
    記憶がなくとも、傍にいることができるのなら、それだけで十分である。今のお前の好きなもの、嫌いなもの…色々知りたいことがたくさんある。次、会えたら、お茶でもしながらゆっくり語りたいものだ。

    「わかりました。引き留めちゃってすみませんでした。えっと…それじゃあ、また会いましょうね!」
    「気にしないでくれ。またな?」

    手を振り、暫しの別れを告げる。もう二度と会うこともないだろうと思っていたが、また会えるらしい。今度はいつ会えるのだろうか。お前の天使のような透き通ったその声で、また俺の名が呼ばれるとき…そんなときがくるのであれば、この世界も悪くはない、そう思える気がする。
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