夜×朝「今日来るはずの"俺"はどんな性格をしているのでしょう?楽しみですね、先輩っ!」
「どうでもいいでしょう、そんなこと。それから、その先輩っていう呼び方をやめろといっているのに、何故やめないのですか、黒」
新しく別個体のアダム=ユーリエフが増えると管理人から告げられては、自然と興味が湧くもので。その話題を「コンサート」フォームにすれば、彼はそうでもない様子だった。同じアダム=ユーリエフという存在であるのに、やはり衣装によって性格は様々であるのだ。
「どうでもいいことないですよ。普通、気になりませんか?どんな性格なのでしょう……それに、先輩は先輩ですよ。だって、俺より早く此処にきたのだから、そう呼んでも間違ってはいません」
「私は全くもって気になりませんね。ただ、黒のような性格だけはごめんですが…」
呼び方の訂正については諦めたのか、はぁ、と1つ溜め息を溢した。次いで、口から紡がれた言葉は辛辣で…
「ぅ…ひどいですよ、先輩」
「しかし、これが本音ですので。そもそも、気になるなら、会いにいってくればいいじゃないですか。先程管理人殿に聞いたのですが、そろそろ来る頃だと思いますよ」
「…ほ、ほんとですか!じゃあ、行ってくるので、失礼しますね、先輩」
本音であるなら、自分はいらないといわれているようで、少し悲しいが今は落ち込んでいる暇もない。もうすぐ会える、そう思えば、軽い足取りで解析システムの施設内にあるヒーローの集う共同スペースへと急いだのだった。
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「…」
やっと、見つけた。きっと、彼のことだろう。見た目は写真集フォームの彼と同じだろうか?でも、少し違う部分もある気がする。刺青の色は黒ではなく空のような水色で…ズボンも雪のように白い。
初めて見た彼を、俺とは真逆の色だと思った。性格も正反対なのだろうか?気になって仕方がない。
すると、此方の存在に気がついたのか、彼は俺へ向けてにこ、と微笑んでみせた。
その笑みをみれば、不覚にもドキりとしてしまった。
「初めまして…アダム=ユーリ…いや、それはお前も同じだったな。えっと…「写真集」フォーム【朝】だ、宜しくな。」
「えぇ、宜しくお願いしますね、朝。俺は、「コンサート」フォーム【夜】です。どうぞ、夜とでも呼んでください」
朝か…やはり、自分とは反対の存在だ。俺は夜で、彼は朝。なんだか、少し運命を感じてしまうだなんて、可笑しいだろうか。
「朝…?嗚呼、それが所謂区別名のようなものか。ん、それなら夜と呼ぶことにするよ。なんだか、朝と夜とは、また随分と運命のようだな。…ぁ、断じて変な意味ではなくて……」
彼の口から自分が求めていた言葉がでるなんて、思ってもいなかった。吃驚しては思わず、目を見開いた。それに気づいたのか、彼はその言葉に特別な意味はないと付け加えたようだった。
「まさか、同じことを考えていたとは思わず、吃驚しちゃいました。俺も運命みたいだと思いましたよ」
気を使わせてしまったように感じたので、同じように、思っていたから吃驚しただけだと伝えると、彼は安堵の表情を浮かべた。
「ふ、運命というものがあるといいな、夜」