アタアダssスリスリと耳を柔く撫でられては、慣れぬ感覚に困惑を隠せないまま、ピクリと身体が振るえた。
「…ッ、あの…アタリ。もう撫でるのをやめてくだ…さい」
このままではまずい、そう本能で感じとれば、やめるように自分の耳を撫でている恋人へ注意を促す。
未だ自身の頭に猫耳が生えているという状況に理解が追いつかないが、それ以上に耳へと触れ続けられては身体に電撃を流されたような感覚がするもので色々と身がもたない。
「こんなふわふわで撫で心地いいのに…ダメなのか?」
「…ダメではない…ですが」
彼のほうがまるで耳が垂れているかのようなあまりにもしょぼんと落ち込んだ様子で告げてくるものだから、だめであるとは返しづらい。
「少し…だけですからね」
少しくらいならいいかという考えにいたれば、許可をだしてしまう。
「へへ、ありがとな、アダム!」
無邪気に笑みを零す姿をみれば、これだけのことにも、ドキりと胸が高鳴った。所謂惚れた弱みだとでも言えば、わかりやすいのだろうか。
撫でられるたびにゾクゾクと背中が粟立つものだから、バレていそうで微かに恥ずかしい気持ちもあるが、それでも優しい手つきで撫でられるのは嬉しい。それが、ついつい耳にも現れていたようで、猫耳のとがった先端がピクっと振るえていたようだった。
「やめてッていってたわりに、随分嬉しそーじゃん。ほんとお前のそういう分かりやすいとこ、カワイーよな」
「……ッ」
ほんと、自分は彼にかなわないらしい。かといって、嬉しいのは事実であるため、否定しようがない。この耳は自分の意思でも動かせるが、どうやら感情によっても動いてしまうらしい。
思っていたことを当てられてしまい、恥ずかしさから顔に熱が集まっては赤く染まる。
戦闘となれば、冷静になれるというのに、彼の前だとこうも余裕がもてないのはどうしてなのだろうか。どうしてもこうもないが、彼に好意を抱いているせいであろうことは確かだ。
「アタリ…」
ふいに呼びたくなって名前を呼ぶと、柔らかい笑みとともに彼の声が返ってくる。
「ン、どーした、アダム?」
未だに優しく撫で続けられる感覚に少し物足りない、なんて感じてしまっては、求めるように手を伸ばし、服の裾を摘まんだ。
それだけの仕草で、理解してくれたのか、耳を撫でるのをやめたかと思えば、距離を縮められて軽く口付けを落とされる。
それは2,3秒といった短い時間だったが、永遠のように感じた。