たぶん、朝が近い。
どちらからともなく始めた共同研究も缶詰になって今日が3日目。薄暗い床には、自分と同じぐらいの体温の塊が、薄い布団に包まって潰れている。
「起きてるのかい」
問いかけると、気怠げに耳が動いた。
「テメエこそ」
「寝たまえよ」
「テメエが寝たらな」
「きみ昨日も遅くまで起きてたろう」
「お前に言われたかねーよ」
「きみが寝るのを見届けたら寝るさ」
「こっちもお前が寝るのを見届けたら寝るわ」
「永遠に寝れないじゃないか」
「じゃあ寝るな」
「君も寝れないんだぞ」
「オレは寝る」
「おや前言撤回かな?」
「うるせえ寝ろ」
「君が寝たらね」
「堂々巡りやめろ」
「君が眠れば済む話さ」
「…なんだよ」
「うん?」
「寝付けねえのか」
「…」
まあ、そういうことでもあるが。
返さないでいると、それは沈黙を肯定と受け取ったようだった。
酷く気怠げに、身を起こすような音がする。それはそのまま這って私の隣に来ると、側に身を横たえ、布団ごと私を抱き込んだ。
「おっと?」
「寝れねえなら大人しく抱き枕にでもなってな」
「…おやおや」
いつだったか、寝つきが悪いと嘆いていた彼女に添い寝を申し出たことがあった。
効果の程までは聞けていなかったが、これが彼女なりの不器用な優しさの形だというのなら。
私も小さく身を寄せる。
「仕方ないな、他ならぬ君の頼みだからね」
「ちったァしおらしくしたらどうだ」
「…んん…」
四肢が心地よく火照り、彼女の低い声が耳元に掠れる。
私は小さく欠伸をした。悪い気分ではなかった。
根比べはどうやら、彼女の勝ちのようだった。