オクシアSSやっちまった。
オクタビオは一人、天を仰ぐ。やられてしまった味方のバナーは回収した。残った敵は何とか二人で撃破し、相討ちになってダウンしたオビを起こす為に蘇生用の注射器を撃ち込んだつもりが、ちょっとした手違いがあった。
以前も同じ事をやらかして、散々小言を言われた記憶が鮮明に甦る。やべぇ、どうしよう、一応蘇生用の注射も打っとこう。
ぐったりと動かないオビの胸に、おずおずと針を打ち込む。
「…シルバ」
「はい」
止血をしながら、低く地を這うような声に背筋が凍る。オビが気付かない訳がない。試合用に濃度を高めて調合している興奮剤だ。使い慣れない人間なら、刺してすぐ心拍数が上がり体温の上昇と気分の高揚、その他諸々の症状が出るはずだ。
「貴方、また……またやりましたね…」
「わ、悪いって…わざとじゃねぇよ本当だ、謝るから…と、とりあえず今は体勢立て直そうぜ!バナーも回収したし、別の部隊が来るかもしんねぇし」
「…良いでしょう」
何とか説得し、ゆらゆらと起き上がったオビの額にはじんわりと汗が滲んでいる。薄く開いた唇は浅く呼吸を繰り返し、苦しそうだ。
医療キットを使用して何とか落ち着きを取り戻そうとしているその姿はなんとも痛々しいのだが、不謹慎にもどこか艶かしく、色っぽさが拭えない。
直視していると妙な気を起こしてしまいそうで、オクタビオはそそくさと視線を反らした。
「シルバ…ちょっと肩を貸してくれませんか…すぐに歩けそうにありません…」
「お、おう。わかった」
そんなオクタビオの気など、勿論オビは知るよしもない。むしろ彼は被害者である。そんな邪な思いを向けてはならないと言い聞かせ、頬を叩いた。
しかし、膝に手を付いて苦しげに見上げてくるその額から流れた汗が、ぽたりと地面に伝い落ちる様を見て思わず生唾を飲み込んでしまう。上の空で返事をして、とりあえず腕を肩に回して身体を支えながら歩き出す。
触れ合う素肌も汗でしっとりと濡れていて、意識するまいと思えば思うほどかえって熱を感じてしまい、どんどん悪い方向へと引き摺られてしまう。
これ以上余計な事を考えると淫らな事を連想してしまうと、慌てて何か冷静になる方法を考えた結果は、幼馴染みの顔を思い出すことだった。
ありがとうシェ、お前のお陰で俺は今理性を保てるよ。
「っ…!」
「おいっ!」
そんな事を考えていると、今度は意識が全く向いていなかったせいでオビが段差に躓き、転びそうになってしまう。慌てて身体を滑り込ませて支えるように踏ん張るが、そのままもつれるように二人で床に倒れ込んでしまった。
「ってて…」
「す、すみません…」
「いや、良いんだよ。オビさんこそ大丈夫…か…」
何とかオビの下敷きになりクッションになることが出来たが、そこでオクタビオはある事実に気付く。
覆い被さるように倒れ込んだオビの下半身が、ちょうど自分の下腹部辺りに重なっている。そしてそこは、間違いで無ければその形をはっきりと感じられる程に固く、その存在を主張していた。
「………」
まずい。これは、非常にまずい。確かに興奮剤にはそういう作用も無くはない。無くは無いのだが、今この状況でオビがそんな風になってしまうのは想定外だった。慌てて身体を押し返そうとすると、かえって主張する股間が自分のそれと擦れてしまい、頭がパニックになる。
「お、オビさん、起きれるか、おいっ」
「…無理、です、視界が…回る…」
耳元にはぁはぁと熱っぽい息が掛かり、ふしだらな劣情が抑えられない。駄目だ駄目だ、今は試合中で、バナーになった仲間をリスポーンしてから体勢を立て直し、それから、それから。
「し、るば……身体が……熱いんです…、」
あぁごめんよオビさん。俺の弱さを許してくれ。
・・・
この後普通に棄権した。