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    Mea44981629

    オクシア

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    Mea44981629

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    稀血のタビオくんと吸血鬼オビさんのはなし。
    注意書必読。

    オクシアSS【!注意!】
    ・オビさんがリアル吸血鬼の設定
    ・刃物で身体を切る描写があります
    ・流血注意
    ・何時もの甘々な感じではない














    「よぉ、オビさんよ。俺の血が欲しいかい?」

    この男は、こんなにも解りきった事をニヤニヤと笑いながら聞いてくる。人間の一生など吸血鬼にとっては一瞬で、オビからすれば赤子のようなこの目の前の人間に屈服させられているという事実。それでも、本能に抗うことは出来ない。

    「貴方は本当に悪趣味ですね」
    「ッハハ、今更言うか?それ」
    「ええ、何度だって言いますよ」

    行儀悪くダイニングテーブルの上に腰掛けたオクタビオは、手の中で器用にバタフライナイフを回して遊んでいる。風を切りくるくると回るその鈍色の刃を見るだけで、口の中がカラカラに渇き喉の奥が熱くなる。早く、早く。今にも叫び出しそうな本能を理性で無理矢理抑え込み、少しでも抵抗するように冷静さを装った。

    「俺はあんたが、そうやって俺を欲しがってる姿を見てるとサイコーに興奮するよ」
    「あぁ失礼、うっかりしていました。悪趣味な上に、変態でしたね」
    「何とでも言えよ、あんたは俺の血飲んだらどうなる?え?人のこと言えた義理じゃねぇよな」

    そう言ってオクタビオは、身を乗り出してずいと顔を近付けて来る。もし、彼がごくごく普通の人間なのであれば、こんな無礼を働いた瞬間に一息に殺してしまっていたはずだ。けれどもそうしないのには、理由がある。

    「なぁオビさん、教えてくれよ」

    耳元で低く囁かれ、全身がぞわぞわと粟立つ。身体が、細胞が、彼の血とその先を求めている事が、ただただ情けない。けれど、もう引き下がる事も出来ない。

    「…いい加減にして下さい。今ここで貴方の喉を食い破っても良いんですよ?」
    「いーや、あんたには出来ないね。誓ってもいい」

    首筋に、ナイフの刃がそっと押し当てられる。肌に食い込まない絶妙な加減で押し付けられる金属の感触に、目を細めながらオクタビオを睨み付けた。すると、彼は嬉しそうに笑いながら思ってもみない事を言う。

    「ま、あんたに喰われるならそれはそれで良いけどな」
    「…心外ですね」
    「どうせ俺の方が先に死ぬんだ。最後は腹一杯になって満足すりゃ良いだろ」

    無邪気な笑顔と弾む声で、そんな事を言うこの男が理解出来ない。けれども、彼の特別な血を味わうその瞬間の喜びを想像するだけで、無意識に背筋が快感に震えてしまう。

    「そんな事はどうでもいいや。ほら、何時もみたいにおねだりしてくれよ」

    いつの間にかオクタビオの空いた手には、きらびやかな金の装飾が施された真鍮のワイングラスが握られていた。喉が渇いて仕方がない。ゆらゆらと揺れるグラスに映った自分は、何とも醜く歪んでいる。オビは抗う事を諦め、首元のナイフをそっと押し返すと恥もプライドも捨てて乞うた。

    「シルバ、貴方の血をください」

    ニヤリと笑ったオクタビオの手から、ワイングラスが落ちてくる。それを受け取るのと同時に、ゆっくりと離れていったバタフライナイフの刃先が彼自身の腕に押し付けられた。そのまま躊躇いもなくナイフを引いた彼の細い腕から、赤黒い鮮血が滴り落ちるのを一滴も溢さぬよう受け止める。ぽたぽたとグラスに満たされていく、まるで上質なアルコールのように香るその血こそ、オビが渇望していた物だ。知らず生唾を飲むとオクタビオが鼻で笑う声がしたが、そんな事はもう、どうでも良かった。

    「ほら、好きなだけ飲めよ」

    ナイフを折り畳み、傷口を拭ったオクタビオの声と共にグラスを口へと運ぶ。
    彼は、人間の中でも特に希少な血の持ち主だった。その味は普通の人間とは比べ物にならず、長く生きているオビですら随分と久し振りに出会った良質な「食糧」の筈であった。

    生暖かい液体が、舌先に触れる。それだけで脳がピリピリと痺れ、身体の奥がじんと熱くなるのが解った。そのまま一息にグラスを呷り、一気に喉へと流し込むと高級ワインでも飲んだかのような幸福感と、心地よい目眩に苛まれる。

    「は、ぁ…っ」
    「飲んでるだけなのにほんとエロいよなぁ、あんた」

    オクタビオの声がどこか遠くから聞こえる。心臓の鼓動が、速い。

    「シルバ…」

    彼の稀血には、もう一つ厄介な事がある。それは、彼が常日頃から愛用している興奮剤なる薬物だ。どうやらその成分は彼の血と混ざり、吸血鬼であるオビに気分の高揚と僅かな催淫効果をもたらすらしい。そうなる事が解っていれば、初めから彼の血など飲まなかったのに。今更後悔したところで、もう遅いのだが。
    渇きを癒しても、今度は疼く身体が勝手に彼を求める。ねだるように手を伸ばすと、その手を引き寄せられてキスされた。

    「うぇ…血なんて俺らにとっちゃ美味いもんじゃねぇのにな。ま、あんたが喜んでるならいいか」

    唇を離すと、しかめっ面でオクタビオは笑う。そのまま位置を入れ替えるように強い力でダイニングテーブルの上に引き上げられ、押し倒される。

    「んじゃ、今度は俺の番だな」

    何時からか、オビもまた彼の「食糧」になっていた。本来であれば狩るべき対象に、狩られるこの屈辱すらもすべてこの血にもたらされる快感に、拭い去られる。

    乱暴なキスを受け入れながら、オビはゆっくりと、オクタビオの背中に手を回した。







    ・・・
    捕食者達
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