真夏の雪時雨〜蒼空〜 ボツ案③「カイト、話ってなに?」
仕事を終え、ちょうどキャラバンに戻ってきたところで、アデルが部屋を訪れた。武器や諸々の道具をそこら中に置いたばかりで、座る場所がないとわかると、彼女はベッドに登ってちょこんと正座をする。……本人は無自覚なのだろうが、その場所にその座り方は、少々思うところがある。
「いや、そんな改まるようなことでもねぇんだが……こいつを渡しておこうと思ってな」
上着のポケットから革のキーケースを取り出すと、手渡した。
「え……これ、私に……?」
「ああ、中にはこの部屋の鍵が入ってる」
「合鍵……ってこと?」
「そうだ。遊びに来てもいいし、何かあれば相談に来ても……その、寂しかったら……」
「ふふ、わかった。カイトが寂しそうな時は遊びに来てあげる」
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