スパイということ宇佐美をスパイにすべく鶴見が教育する。
柔道によって鍛えられた体術に磨かれた白兵戦の技術、観察力、思考力、対応力、記憶力、分析力、
そして何より。裏切らないということ。
言語力、尋問耐久訓練、監視術
但しこれは秘密裏に行われた。
スパイというのは本人とその教授以外知るべきものではないからである。
月島軍曹は露西亜語が堪能であり、それで鶴見中尉殿に是非にと買われたのだ。
尾形上等兵も露西亜語ができるそうだ。
そんな話が師団内を飛び交うことがある。
月島のそれは公然のもので読み書きと口頭の会話と両方を仕事で使う様は師団内の彼の人望と相まって羨望と憧憬を織り交ぜた声で語られる。
尾形の方は聞く者も少なく、というよりわざわざ皮肉を万度言う尾形と積極的に話そうとする者がそもそも少ないため半分眉唾のようなしかし、彼ならもしかしたらという信憑性で語られるのであった。
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