俺得ぽもめも初めてアンドレと出会ったとき、ちょっぴりハンサムで二枚目の色男だと思ったアラン。ちょっかい出したり、つい揶揄ったり、その度に喧嘩がはじまる二人。だが、日々を重ねる事に、いつしかアンドレをそういう対象として意識するようになってしまう。まさか……と、アランは自身の邪(ヨコシマ)な心に目を逸らしていた。
ところが、アンドレが大怪我を負った知らせを聞いた時、アランの蓋をしていた想いは溢れかえり、それを認めざるを得なくなる。
陽だまりのような優しさい温かさと、愛する者のためには平気で命を捨てるような狂愛な男……そんな男にアランは惚れてしまっていた。
それでも、この情は墓まで持っていくと決意する。
アンドレにとって、初めて対等な立場で話せる男友達のアラン。自分より歳下で、よく突っかかってくるが、その中に彼の温かさを感じていた。
大切な家族や愛する者には言えないことも、気軽に話せる相手。若しくは、言わずとも相手から察してくれる、そんなアランと過ごす日々は、塵に積もっていた心のしこりを、自然と軽くしてくれた。
不穏な雰囲気が深まる日常。時に地獄を味わうこともあったが、それに反するよう二人の間には明るさが増した。
貴族だが地位も金もなく貧しい生活を送るアランと、平民だが不自由ない生活を送るアンドレ。対称的だからこそ、互いに惹かれ合う。決して、恋情ではないが、アランとアンドレは友情以上の特別な信頼関係を築いていった。
出動前日、アンドレの秘密を皆に曝したアラン。最後の殴り合いを交わす。その時のアランの表情を、アンドレが知る術は無かったが、アンドレの頬に伝う彼の涙がアランの想いも伝えてくれた。
アンドレはその想いを知った上で、共に戦場へ行くことを懇願する。苦渋の決断で承諾するアラン。
しかし、あの戦闘でアンドレを守り抜くことが出来なかった。最後の最後まで、愛する者の影として、その生を全うしたアンドレ。過ごした年月は短くとも、アンドレの最後を見届けたアランの心には、二人の築いた関係が深く強く刻まれていた。
後にアランは、彼等の想い(十字架)を背負い、このフランスの地で生きていく。