ノンアルコール・モヒート!(4)「……魏嬰」
まるで魔法を唱えられたように、血の巡りが速くなるのを感じた。頬が熱くなり、何かを堪えるように歯を食いしばる。無意識に。
呼んだ本人は、真面目な顔で俺の反応を待っていた。これは、名で呼ぶべきなのか。
「…藍湛」
微かに掠れた声で名を呼ぶと、藍湛は満足そうに目を細めてグラスを持ち一口飲んだ。俺は酒に強い。だからこれは、アルコールが原因ではない。いや、原因は全てわかってる。それを、認めたくないだけ。
乾いた喉を潤すように、日本酒を呷る。ゆっくり飲み下すと、アルコールが喉を通って胃に落ちて行くのを感じた。
藍湛は、この空間を少しでも心地好いと感じてくれているのだろうか。藍湛の事が、知りたい。近付きたい。
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