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    @amber2551910

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    【FB】3特典映像(ニュート宅で麒麟と交流)後のテセウスが麒麟と遊んだり、アルバスにイライラしたりする

    #ファンタスティックビースト
    fantasticBeasts
    #ファンタビ
    fantasy
    #テセウス・スキャマンダー
    theseusScamander.
    #ニュート・スキャマンダー
    newtScamander.
    #スキャマンダー兄弟
    theScamanderBrothers

    テセウスと麒麟 もう少し眠ったほうがいいと促してからしばらくの間、ニュートはソファの上で身じろぎをしていたが、やがて寝息が聞こえ始めた。魔法生物の研究の中で、様々な環境下でのフィールドワークをすることも多い――むしろそれが主な活動と言っていいはずだ――弟の寝つきが案外悪いことをいささか意外に思いながら、テセウスは音を立てないように椅子から立ち上がって伸びをする。
     ニュートの足元で、退屈そうな様子でブランケットの端をかじっていた麒麟キリンが、床板とひづめでささやかな音を立てながら近づいてきたので、ピンと天を指した耳の間をやさしく掻いてやる。柔らかな毛並みと硬い鱗が同時に指先に触れるのは、なんとも不思議な感触だった。尻尾が揺れるのは、恐らくは上機嫌の印だろう。
     テセウスがこうして麒麟をあやせることについて、ニュートは驚いていた様子だったが、誰の兄を何年間やっていると思っているのか。ニュートと接するということは、魔法生物と接することとほとんど同義であるため、能動的でこそないものの、交流が多くなれば自然と彼らに対する親しみの気持ちも湧く。加えて、害をなさない接し方の見本がすぐそばにいるのだから、見よう見まねでもある程度の正しい交流を持つことができるというものだ。
     ニュートという人間は、自分が周囲にもたらす良い影響に無自覚なところがある。それを笠に着て威張り散らすようになれと言うのではないが、自身が正しい意味において持つ能力については多少なり胸を張ってもばちは当たるまいし、それがあるべき姿であるとテセウスは考えている。優秀であるというのに、常に自信なさげに背を丸めた弟の姿を思い浮かべ、テセウスは鼻から短く息を吐いた。
     小さな生き物が動き回る気配に、改めて足元に視線を落とす。
     麒麟が何かと戯れていると思えば、それは窓から差し込む日の光に照らされる、空気中に舞う埃だった。微笑ましく思うと同時に、痛ましい気持ちがテセウスの胸の内に湧き上がる。この生まれて間もない聖獣が、正しくあるべき姿で森の中で過ごしていたとしたら、じゃれつく先は木の葉や蝶、そして一番の遊び相手である兄弟だったろうに。
     テセウスは窓辺に近づく。しばらく開けていないのか、窓の縁には薄く埃が積もっていた。不在が多いニュートのことだから意外ではないが、当然のことながら喜ばしくはないため、テセウスはわずかに眉間にしわを刻むに至った。蝶番の調子が悪いようで、いささかの抵抗を感じながら窓を開け放つと、新鮮な空気が室内に流れ込んでくる。
     魔法生物たちの生活環境にはあれほどこまやかに意識を払うというのに、こと自分の暮らす環境となると呆れるほどに気にしないのがニュートという男だ。兄としては可及的速やかに改善を望みたい悪癖だったが、注意をしたところで歯切れの悪い返答しか戻ってこないのは目に見えていた。だが、それが注意をしない理由になりはしないため、弟が起きたら言い含めてやらなくてはならない、とテセウスは決意する。
     ハンカチを口に当てて咳をひとつしてから、テセウスは懐から杖を取り出した。しばらく使っていない呪文を脳内で探し当て、小声で呟けば、蛹からの羽化の瞬間のように、杖先から一匹の蝶が生まれ落ちる。手のひらに収めてしまえるサイズの蝶は、深紅の紋様が入った黒いはねを優雅に動かして杖から飛び立った。外からの風に乗り、鼻先をくすぐるように飛ぶ蝶を麒麟は楽しげに追いかけ回し始め、木琴のような足音を奏でる。
     それはさほど大きな音ではなかったが、テセウスは念のためニュートの様子を伺った。幸い、ブランケットに埋もれた弟は睡眠のふちから浮かび上がってきてはいないようだ。それに、万が一起きたとしても、麒麟の蹄の音で目覚めたなら文句も言わないだろう。
     麒麟の屈託のない姿は、母親を殺され、兄弟を奪われたという悲劇をひととき忘れさせるほどに愛くるしい。
     聖獣の棲む孤島で、グリンデルバルドの配下と思しき魔法使いが放った死の呪文による緑の閃光が、弟の頭の横を掠めた話をニュートから聞かされ、テセウスは寿命が縮む思いだった。どれだけ有能な魔法使いであっても、直撃した死の呪文から逃れるすべはない。かつて闇の魔法使いと相対した同僚や部下がそうであったように、無言の再会となる可能性もあった。もしかしたら、肉体すらものこらない、残酷な最期となる可能性だって。
     杖を握る手に力がこもった。脳裏に過ぎった愛した人の姿を、テセウスが落ち着いて受け止め、悼むことができるようになったのは、ここ最近のことだった。
     ニュートがその島に足を運んだのが、誰の指令によるものだったかを思うと、テセウスの胸の中に苦い感情が滲む。
     アルバス・ダンブルドア。
     彼が偉大かつ優秀な魔法使いであることは疑いようのない事実であり、今まさに魔法界が直面している危機において、彼の脳が弾き出した計算結果はほとんど最良と呼べるものなのだろう。今後の更なる混乱を避けるためには、麒麟を英国へと連れ帰ることが必須であり、そのためには魔法生物に造詣が深く、なおかつ目的を伏せられたとしてもダンブルドアを信用して行動することができるニュートが適役だった。予測の域を出ないが、おおよそそんなところだろう。闇祓い局局長として、テセウスはそのことに概ね、納得している。
     だが、テセウス﹅﹅﹅﹅スキャマンダーとしては﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅、それがどうした、という気持ちもある。
     思えば、今日こうしてニュートの様子を見に行くようテセウスを促したのも、ダンブルドアその人だった。意図を問うてもいつものようにはぐらかされ、訝しみながらロンドンに構えられたニュートの家を訪問した途端、意識を失った弟と対面させられた。あの襤褸ぼろ切れのような有り様を目の当たりにして、よく心臓が潰れずに済んだものだと、自分でも感心する。ニュートの命に別状がないことは、相棒であるピケットをはじめとした魔法生物たちの反応からすぐに判ったものの、体のあちこちに真新しい傷を作った姿はテセウスを絶句させた。特に手のひらの傷の深さは、仕事柄、穏やかではない場面に慣れているテセウスですら、目を背けたくなるような痛々しさだった。
     人間はいずれ死ぬ。それは避けられない運命だ。避けられないのならば、自分の大切な存在くらいは、悪意あるものに害されることのない生と、穏やかで苦痛のない最期があるように願うのは、テセウスばかりではないはずだ。命を奪われるような危険がある場所には極力送り込みたくないと思うのは、当然のことだろう。
     ダンブルドアが徹底した秘密主義であることに、今さら文句を言うつもりもない。本人が望むと望まざるとに関わらず、彼の言葉や行動は大勢の人間に影響を及ぼす。来たるべきときまで口をつぐむことは、大局を見据えた判断なのだろう。ただ、だからと言って、ろくに理由も告げずにテセウスの弟を危険に晒した事実を、ああそうですかと受け入れられるはずもない。文句を言うつもりがないことと、文句がないことは全くの別物だ。
     不意、手の中の杖がじりりと熱を持った気がして、テセウスははっと我に返った。
     杖は魔法の指向性を強めるための優れた道具だったが、時にそれに留まらず、持ち主の感情に呼応して生き物のような反応を見せることがある。魔法界の多くの子どもたちがそうであるように、テセウスが初めて自分のものとして杖を手にしたのは入学前のことで、そこから何度かの新調を経て、現在の杖を持つに至っている。シンプルな金細工と鉱石で作られた持ち手から、光沢のある滑らかな木材が先端まで伸びたその一本は、テセウスの手によく馴染んでいたが、こうして燃えるように呼応したのは初めてのことだった。自分は思ったよりも、怒りを感じていたらしい。杖を通じて自覚したその事実に、テセウスは苦笑する。
     テセウスは目を閉じ、握った拳で自分の額を何度か軽く叩いた。手からは、ニュートの傷の治療に使った薬草の青く苦いにおいがした。数秒の間を置いて、改めて杖に触れる。熱が収まっていることを確認してから懐の定位置に収め、テセウスはひとつ息を吐いた。
     怒りに限らず、感情は、魔法を使用する際の大きなエネルギーとなる。
     母校ホグワーツにおいて、他者を害する禁じられた呪文について――自らが使うためではなく、身を守ることを目的として――初めて学んだとき、テセウスの手にあったのは杖ではなく教科書と羽根ペンだった。それは当然のことと言えた。教師が語る理論だけでも、それらはあまりに恐ろしく、杖を振ることの重みを改めて感じさせられた瞬間だった。その授業の中で、魔法は良くも悪くも意志や感情に左右されること、他者への害を強く望む者の魔法がどれだけの被害をもたらすものか、半ば脅しのように説明を受けた。当時の学生たちは、生半可な知識で魔法を扱うことへの注意程度にしか受け取っていなかっただろう。ただ、闇の魔術が人々を蹂躙することが現実のものとなった今、それらが紛れもない真実であったということを、まざまざと思い知らされている。
     理想を言うのならば、許されざる呪文をはじめとした他者を害する術は二度と唱えられることなく、戒めとして厳重に保管することができれば、それが一番良い。ただ、様々な思惑や欲望が絡み合い、各々が持つ理想が一致しないこの世界において、それは不可能なことだった。テセウス自身も、戦場に身を置き、杖を振るう中で、許されざる呪文によるものではないにせよ、結果的に他者を害するに至ったことはある。叶うのならば二度と体験したくない、忘れられない、忘れてはならない記憶だ。
     クン、という甘えるような声に、テセウスの思考は途切れる。隣を見ると、いつの間にか蝶を追いかけるのをやめたらしい麒麟は、前脚を器用に窓枠にかけ、水晶のように透き通った瞳でロンドンの路地を見つめていた。髭が優しい風に吹かれて揺れていた。それを眺めていたテセウスは、そういえば、と思い至る。麒麟が島の外の風景をしっかりと見るのは、これが初めてなのではないだろうか。
     テセウスは腕を伸ばし、麒麟を抱き上げた。麒麟は一度テセウスの顔を見上げたが、嫌がって暴れることもなく、安心したように体重を預けてくる。腕に伝わる鼓動を感じながら、テセウスはいつか同じように誰かを抱き上げたことを思い出す。それが生まれたばかりの小さな弟だったと思い出すのに、さほど時間はかからなかった。
     視線をソファへと投げる。その先で、ニュートの胸が規則的に上下していることを確かめ、テセウスはわずかに目元を和らげた。
     我々は、蝶を生み出すのと同じ杖で、他者を殺めることができる世界に生きている。その歪みを正すことは、今のテセウスには不可能なことだ。だが、それがどうした。
     不可能だからと諦めることは、テセウス・スキャマンダーの正義に反している。

     自分が歩みを止めず、ニュートとともに正しく杖を振るうこと。
     それが、麒麟の目に映る景色を、平和なものに近づけるのだと信じる。そう決意したテセウスの視線の先で、黒い蝶が羽ばたき、太陽に輪郭を溶かした。
     
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    PAST【FB】テセウスの実体は出てきませんが気配は濃いめ
    お互いに噛み合ってないけど、まあ……それでも別にいっか……大人だし……という関係性の兄弟が好き
    ハグの日スキャマンダー兄弟 ロンドンの自宅、その地下に広がる、ケルピーを飼育している水場――そう呼ぶには、それはあまりに広大だったが――から上がったニュートは、体温の低下を感じて身を震わせた。構われたい気分だったのだろう、普段よりも幾分しつこくじゃれつくケルピーとの遊びに付き合ってやる時間が少し長かったかもしれない。けれど、優雅な角度をした水草の尾が上機嫌に水面を叩いたのを見て、ニュートは微笑んだ。魔法動物がのびのびと快適に、彼ららしく美しく生きることと天秤にかける価値のあることなど、そうそうない。寒さなど、シャワーを浴びて、温かいものを胃に入れれば済むことだ。
     水を含んで頬に張り付く前髪を指でどかしながら、ニュートは階段に足をかける。つい先ほどまで跨っていたケルピーの体について、脈動や、筋肉の動きかた、体温に思いを馳せる。ニュートは、魔法動物たちの体温をよく知っている。現在確認されている魔法動物のほとんどについてそうであったし、特に、この自宅の地下室や、トランクの中で飼育している彼らのそれは、正しく健康を維持することに直結するものであるので、暗記していると言ってよかった。
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    PAST【FB】1年生のテセウス・スキャマンダーと卒業数年後のアルバス・ダンブルドア
    ラブではないし将来的にもラブにはならない距離感のふたり
    テセウスとアルバス 大広間の一角がにわかに騒がしくなったので、テセウスは手紙に落としていた視線を上げた。扉の前で、長身の男性が教師と話している。鳶色の髪は、ほのかに濡れているのが見て取れた。外では雪が降っているらしかった。
     周りの生徒たちも、その男性の存在に気づき出したようで、長テーブルのあちこちから興奮した囁き声が上がる。鼓膜で捉えた名前に、テセウスは納得する。ホグワーツ魔法魔術学校に通う生徒で、その名を知らない者はいないだろう――アルバス・ダンブルドア。我が校始まって以来の秀才であり、呪文や変身、錬金術など多彩な分野で才能を高く評価されている、極めて優れた魔法使い。
     つい数年前までここに在籍していた彼が、今度は教鞭を取る側になるという噂は本当なのだろうか。それが現実となることを、多くの生徒が待ち望んでいる。収まるどころか徐々に大きくなっていくざわめきが、そのことをを表していた。テセウスは小さく嘆息し、母からの手紙を折り畳んでローブのポケットにしまった。愛すべき大広間だが、今は何かに集中するに相応しい空間とは言えなかった。
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