その素肌は私にだけ 「ねぇ、本当に変じゃない?こんなに布に覆われてる服初めてでむずむずするんだけど…」
「そんなことはありません、よくお似合いですよ。きっとシャロン様もお喜びになります」
女中達の言葉にそお?と言ってアスパシアは鏡を見ながらくるりと一回転した。
キングダムは砂の王国で気温が高いことから前より露出は少なくなったとは言え袖は半袖におさまっている。しかし、以前のアスパシアの服とは違いズボンからひらひらとしたスカートに。髪も少しだけ巻かれてしまい黙ってさえいればどこからどうみても一国の姫だった。(実際EVUUの姫君ではあるのだが)
「着替えたか?」
シャロンの言葉に意識を現実に引き戻すアスパシア。女中の声に招かれて部屋の中に入ったシャロンは顎に手を当ててじっとアスパシアを見ていた。
「な、何よ…あんたが言い出したんだから似合わないとか苦情は受け付けないわよ」
「…いや、その逆だ。というか君は私が自分から着せておいてそんなこと言うと思っているのか」
「いやー、だって私的に言えば自信がないというか…こういう服はじめてだし」
「ふむ、そうか…だが、心配する必要はない。よく似合っている」
「…本当?」
「ああ、やはり私の見立て通り君には白がよく似合うな。」
「…そんなこと初めて言われたかも」
というか誰かに服を見立てられるというのがこんなにもこそばゆいものだと知らなかったアスパシアはその喜びに頬を緩める。
「よし、次は青系統なんてどうだろう。君の髪がよく映えると思うんだが」
そう言って楽しそうにシャロンは女中と共にアスパシアの服を選び出す。
まだ着なきゃならんのか、と思いつつシャロンが心底楽しそうにするのは久しぶりだったかもしれないとその横顔をアスパシアは見つめる。
(ま、シャロンのためだし…なんか楽しそうだし、いいか)
「アスパシア?どうした、じっと見つめて」
「うん?シャロンが楽しそうだなって思って見てただけ。私、あんたが楽しそうにしてるの好きだからさ」
「…っ、そう……か」
「そうよ。何当たり前のこと言われて照れてんのよ」
「当たり前…」
「当たり前よ、こんなこと」
「ははっ、姫君には敵わないな」
「…ねぇ、シャロン。」
「どうした?」
「今度、今日買った服でデートしようか?」
「元からそのつもりだったが?…というより、今日買った服はこれからも日常的に着てくれ、じゃないと買った意味がない」
「どういうこと?」
「…君の祖国の装いも君によく似合っていたし君らしかったが、君の恋人としては…あまり」
「ふぅん?」
「だから、私の選んだ服を着て欲しい。呆れたか?」
「全然?」
そう言って楽しそうに笑うアスパシアに驚き、そしてシャロンは肩を竦めた。元、魔神であるアスパシアにとってはさほど気にするような問題ではないのだろうと思いつつもアスパシアが嫌がる素振りを見せていないのがシャロンの心を温かくさせた。
「楽しみね、デート」
「…ああ」
小悪魔的な笑みにシャロンは笑みを深めた。
-Fin-