君と続く幸せ 「わっ」
「大丈夫?」
「うん、ありがとう」
「いいよ別に、謝らなくて」
隣町に行った日の帰りの電車、私と鳴海は満員電車に巻き込まれていた。ぎゅうぎゅう詰めの電車の中で私と鳴海の距離はすごく近くなっていてーー、
「咲耶、もっと、こっち寄って」
「えっ」
鳴海は抱きしめるみたいに、ううん、本当に抱きしめながら私を守るように支えてくれた。
「な、な、鳴海!?」
「…苦しくない?」
「え、うん…大丈夫」
「ならよかった。咲耶、こういう時は頼って欲しい…俺は、咲耶の恋人だから…」
「うん…」
きっと私の顔は赤くなっているだろう。それがどうにも恥ずかしくなって俯く私だけれど…どうにも視線を感じでしまって顔を上げた。
「鳴海!」
「…何?」
優しい瞳で、甘い声で、幸せそうな顔でそうやって問いかけられれば更に顔は火照っていく。
「し、視線が…その、み、見過ぎだよ…」
「そうかな?」
「そうだよ!私なんか見慣れてるはずでしょ?」
「見慣れるなんてないけどな」
「えっ」
「咲耶のことが好きだから、見慣れるなんてことあり得ない。毎日、知ってる咲耶も知らない咲耶もすごく好きで…見ていて飽きない。俺はずっと咲耶のことを見て過ごせたらいいのになって思うよ」
「な、鳴海ってさ」
「うん」
「私のことすごく好きだよね!?」
「…多分だけど、咲耶が思ってる倍以上に俺は咲耶のこと好きな自信あるよ」
「ええっ」
そう驚いたところで降りる駅に到着し鳴海に手を引かれながら降りる。
「咲耶、」
鳴海の顔が近づき耳打ちされる。
『だから、覚悟しておいてね』
そんな言葉と共に頬にあたたかいものが触れ、私は口をぱくぱくとさせるしかなく、それがおかしいのか嬉しいのか鳴海は珍しく大きく口を開けて笑っていて、それでも繋いだ手を離さないようにしっかりと握り合っていた。
-了-