俺のヒロイン 「大ちゃんの学校も体育祭の時、フォークダンスした?」
「したよ~」
そう言われ自分で聞いておいてショックを受けてる自分がいた。
「美奈子ちゃん?」
「あ、えっと…私も大ちゃんと踊りたかったなって…」
思っていたことを言えば大ちゃんはなぜか黙ってしまう。
「大ちゃん…?」
不思議に思って顔を覗き込めば何故か大ちゃんの顔は赤く染まっていた。
「そんなん…俺もや」
「え」
そう言って大ちゃんは私の手を取った。
「俺だけのお姫様、俺と踊ってくれますか?」
慣れない標準語の言葉に思わず笑ってしまいながら「よろこんで」と握り返す。
夕日が私たちを照らす中、ずっと踊っていたいと思わせられるもので。そして夢のような時間だった。
「大ちゃん、王子様みたい」
「【みたい】やなくて美奈子ちゃんの前やったらいつも王子様のつもりやで?」
「そうなの?」
「そうやって!…美奈子ちゃんは俺のヒロインやから」
前に似たようなことを言われたなと思いながらくるくる回って、ステップをして踊る。違う制服で踊るのが可笑しくて本当に大ちゃんに結ばれたんだという実感をくれた。
「大ちゃん!」
「ん?」
「大好き!」
「おっ、おれもやっ…!」
やや上ずって返される返事に嬉しくなって私は笑うのだった。
-Fin-