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    satm_vxy10

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    satm_vxy10

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    ルーク&シキで潜入ミッションして戦闘するお話。

    キミとじゃなければ 「ルーク!」

     シキはとっさに彼の名を呼んだ。
     次の瞬間、世界の全てがスローモーションになる。
     目の前の敵に向かって銃をかまえるルークの後ろ姿も、銃口を向けられて怯む男の顔も。そして、ルークの背後で鉄の棒を振り上げるもう一人の敵の姿も、シキの瞳がしっかりと捉えた。
     たとえ、シキの声に反応して、ルークが振り向いたとしても、背後の敵の攻撃は避けられない。手詰まりだ。諦めと惨めさがシキの胸に広がっていく。
     この状況、ルークならどうするだろう。
     そんな考えが、ふと頭をよぎった。

    『大丈夫、シキのことは僕が守る。だから安心してくれ!』

     この任務が始まる前、彼がかけてくれた言葉だ。シキはそのとき、うまく言葉を返すことができなかった。どう反応すればいいのか、わからなかったのだ。
     だが、今ならはっきりと分かる。

    「ボクだって……!」

     シキはぐっと唇を噛みしめて、腕を振り上げた。
     カラン、という金属音とともに、世界は正しく動き始める。


     銃声が響き渡り、ルークの目の前にいた男は手に持っていたナイフを弾き飛ばされ、怯んで尻餅をついた。目の前の危機に対処したルークは、すぐに振り返って銃をかまえる。

    「あれ?」

     敵がいるとばかり思っていたそこには、気絶して倒れた男がいた。すぐそばには、武器と思しき鉄の棒が転がっている。そしてその奥には、シキガミロボットに囲まれたシキが立っていた。ロボットたちは電気を纏っていて、臨戦態勢であることがわかる。

    「シキ、大丈夫か! ケガは……」

     ルークが慌てて駆け寄ろうとしたところで、シキはすっと腕を上げてルークの背後を指さす。

    「危ないよ」

     静かな声とともに、ルークの背後でバチッという音と男の悲鳴が聞こえた。見れば、ルークがさっき応戦した男が気を失って倒れていく。どうやら銃撃を受けても、懲りずに殴りかかろうとしていたらしい。顔を上げると、ルークを庇うような位置に、シキガミロボットが一体浮かんでいた。

    「助かったよ、シキ」

     駆け寄ってそう声をかけると、緊張が解けたのか、彼の顔に感情が戻ってくる。同時に、電気をまとっていたシキガミロボットが大人しくなった。

    「あ、ごめん……さっき、隠れてろって言われたのに」

     戦意が消えた彼は、身を縮こまらせて視線を落とす。

    「いや、僕だけで対処できる状況じゃなかった。シキがいてくれて良かったよ」
    「あれは……偶然うまくいっただけで」
    「運も実力のうちさ」

     そう言葉をかけたが、シキの表情は晴れない。
     ルークはシキを気遣いつつ、任務を続けることにする。まだここは敵地の真ん中であり、いつまた敵に遭遇するか分からない。
     二人は周囲を警戒しながら、敵のアジトであるビルの中に入っていく。


     少し開けた場所に出て、敵がいないことを確認する。
     ルークはシキを振り返って大丈夫だと頷き、二人は並んで歩き始めた。足音しか聞こえないその場所で、シキはさきほどの出来事を思い返す。

    「さっきルークが危ないって思ったとき、どうしてここにいるのがボクなんだろうって、思ったんだ」

     無意識のうちに、口を開いていた。少し前を歩いていたルークが振り返る気配がしたが、シキは俯く顔を上げられない。

    「BONDのみんなだったら、あんなことにはならなかったのにって」

     胸のあたりで強く服を握りしめた。

    「アーロンなら、最初からルークの背中に立って戦うだろうし、モクマさんだってそうだ。チェズレイなら、そもそもルークを危険にさらさないかもしれない」

     あの場にいたのが自分以外の誰かなら、あの危機はなかったはずだ。
     自分以外なら、誰でも。

    「シキ」

     優しく呼びかける声と、手の甲に伝わるぬくもりで、シキは閉じていた瞼を開いた。いつの間にかルークが、シキの握っている手に自身の手を重ねている。

    「誰だって、誰かの代わりにはなれないよ」

     柔らかい言葉が、胸の奥に響く。

    「シキはシキだ。君にしかできないことがある。実際、僕を守ってくれたのは君だ」

     力強い声に引かれるようにして、シキは顔を上げた。澄んだ翠色の瞳が、こちらを真っ直ぐに見つめている。

    「今のシキは、僕にとってのヒーローさ!」

     ルークは明るく言い切って、ふわりと微笑んだ。

    「ルーク……」

     シキは自然と服から手を離し、ルークに釣られて口元が緩む。

    「……まあ、ヒーローを目指す身としては、守られてばっかりなのは格好つかないけどな」

     シキの様子に安心したのか、ルークはぱっと手を放して気まずそうに頭をかいた。

    「背後が疎かだったなんて、アーロンに聞かれたら笑われそうだ」

     さきほどの出来事を思い返しているのか、ルークの眉間には皺が出来ていく。

    「ふふっ、前にアーロンが言ってたよ」
    「えっ? なにを?」

     ルークは相棒の名前にぱっと反応して食いついてくる。
     本当に犬みたいだな、と心の隅で思いながら、シキは以前のアーロンとの通話を思い返す。

    「『クソドギーの後頭部見てろ。いつだってがら空きだぞ』って」
    「なんだよそれ! どうせ僕のこと話すなら、褒めてくれたっていいじゃないか!」
    「まあ、そうだね」

     そう返事をしながらも、シキの頭にはルークを褒めそやすアーロンの姿は浮かんでこなかった。

    「でも、驚いたよ。シキも前に出て戦うんだな」

     ルークは再び歩き始め、シキもその隣に並ぶ。

    「イアンと組んでると、そういうときもある」
    「た、戦いまくるシキ、か……」

     さっきみたいなことが何度もあるってことか、とルークは呟いて眉を寄せた。『心配』が顔に書かれているようで、シキは彼に気づかれないようにくすっと笑った。

    「シキガミロボで戦うんだろ? 精密機械だろうし、攻撃されたら壊れちゃうんじゃないか?」

     ルークはシキの周りに漂うシキガミロボットに軽く触れた。

    「防弾仕様に改良したから簡単には壊れないよ」
    「シキ自身はどうなんだ? 防弾ベストは?」
    「着てる」
    「シキの戦闘経験値あがっとるー!」

     ルークはそう叫んで眉間に指を当てる。

    「ダメだった?」
    「いや、ダメじゃない! むしろ頼もしいんだけど! 僕としてはなんか複雑な思いがあるというか……」

     焦ったり困ったりと、あたふたして色んな表情を浮かべるルークを見て、シキは今度こそ吹き出した。ルークが慌てて唇に人差し指を当て、シキも口を押さえる。二人で周囲を見回したが、敵に気づかれた様子はない。一周させた視線が交差し、二人はふっと笑い合った。
     一つ上の階へ移動すると、途端に人の気配がする。扉一枚隔てた向こう側には、複数の敵がいるようだ。

    「……シキ」

     さっきまでとは違う真剣な表情で、ルークは銃を持ち直す。

    「うん、わかってる」

     視線だけ向けられたシキは、姿勢を低くして頷いた。シキガミロボットが電気を纏う。

    「じゃあ、背中は頼んだ」
    「任せて」

     それだけの言葉を交わし、二人は扉の向こうへと突入した。

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