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    kinari_random

    すべてにおいてらくがきばかり

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🍫 🍕 💯 💴
    POIPOI 15

    kinari_random

    ☆quiet follow

    フェイディノ未満、一瞬だけ嘔吐ぽい要素。ほぼ医務室で話してるだけ。
    ディノの耳の良さ(仮定)と西ルーキーの音系攻撃って相性悪くない?という発想から練ったお話。

    【倣いごと】



    身を投げ打つ予定なんてものは己の中に存在していない。つい数ヶ月前にやった行動はなんだ、と過去が囁くのを一笑に付しながら思う。あのときはまだ生きていくことを想像していなかったせいだ、と簡潔な答えを添えてしまえばすべて解決する。
    だからみんなと共に歩んでいくと約束した今になって、そんな手段を選ぶことはないと。そんな悪行は棄て置いたつもりで、けれど……と思考がつんのめる。頭のどこかで、それをきちんと理解していないような酩酊が泳ぐ。いざとなれば許されるのではないかという甘えが、果たしてつま先ほどにも残ってはいなかったかと。
    「──ディノ!前に出んな!」
    友人が珍しくも鋭く叫んだ言葉に、こういった場面において本当に的確な指示が出来るやつだ、と感心した。それに反応が遅れてしまったのは、ひとえにこちらの不足でしかない。距離感が速度か、あるいは能力自体の把握か。自身のそれもルーキーたちのそれも知っているつもりだった。そんな慢心から生まれた状況が、決して致命的ではないというのも瞬時に察せてしまった。それもまた油断に他ならないと、もう一人の友人なら口を挟んでくるかもしれないな。
    出現したサブスタンスと、そのお鉢を奪い合うように現れたイクリプスとの戦闘だった。とはいえ相手の数は多くなく、メンター含む研修チーム揃っての対面ともなれば負け筋は見えなかった。連携も随分とよくなっていて……そういう意味ではどうしようもなく、もう一歩の理解が足りなかったのはディノ自身なのだけれど。
    (あ、そういうことか)
    手遅れの理解を叩き落とすようにして衝撃波と耳を擘く雷鳴が、重なって届く。くわん、と脳が揺らされる心地に膝をついた……のだと思う。衝撃だけならば堪えることが出来ただろう、軽度の脳震盪みたいなものだ。いい話ではないがヒーロー業務というのは肉体労働、頭に限らずあちこち殴打された経験はざらにある。
    頭蓋の中でキンキンと楽しげに暴れまわる残響が、体の輪郭を意識させるのを阻む。ヴェアヴォルフの能力が十二分に発揮されていたからこその弊害だろう。
    (……ひどい顔、させちゃってるな)
    襲いくる不快感への対処よりも先に浮かんだのは、目に映った彼らに対するそんな気持ちだった。それぞれに異なる様子で焦りや戸惑いを浮かべているルーキーふたりに向けて、笑ってやれたら良かったのだけど。ディノ、とこわごわ口にしたような震えた声が聞こえた。誰のものだったんだろうか、どうか泣かないでほしいのだけれど。
    かろうじて意識は飛んでいないが、よく利く耳が今は疎ましい。頭蓋を揺らし痺れさせるような音も衝撃もとっくに止んでいるのに、信号は正常には機能してくれない。呼吸を整えて蹲り、揺れない地面に手をついてみても回復には時間がかかりそうだった。
    「……、っ…おぇ……、ゲホ、が、……」
    「あーあー言わんこっちゃねぇ」
    キースの気遣わしげな、けれどなんとなく間延びした声が頭上から聞こえた。地面についた手の上からさらに押さえつけるみたいに手をのせられ、軽度の痛みによって少しだけ揺らぎがマシになる。
    俯瞰の上手い友人がイクリプスやサブスタンスを放置することはないはずだから、既に対処済みなのだろう。先ほどの彼らの攻撃も効いていたはずだ。強くなってる、えらいなと、そう手放しにルーキーを褒めてやれる機会を失ってしまった気がする。ごめんな、君たちは悪くないんだ……キースもきっとそう言ってくれる。だから泣きそうな顔しないでくれ……今は、よく見てやれないけれど。
    浅い呼吸を繰り返しながら、追撃がないならもう倒れてしまっても大丈夫かと思い至る。そう結論を出してしまえば、体の末端から血の気が引いていく感覚と脂汗の滲む感覚ばかりが表立ってしまう。ほどなくして脳が限界を迎えたのか、痛いほど握り締められた手の感触を最後にふつりと意識が途切れたようだった。


    目が開くより先に、医務室特有の匂いにクンと鼻が働いて急速に覚醒する。そっと持ち上げた瞼の向こうにある視界は薄暗く、夕日も落ちて夜になる頃合いなのだろう。まさか夜を跨いだ朝ということはあるまい……と時計に目をやれば、想像通りのデジタル文字が見えて安堵する。
    誰か呼んだ方がいいだろうかと上半身を起こしたところで、別室につながる扉からノヴァさんが顔を出した。目が合った途端ぱあっと表情を明るくさせたかと思えば、すぐに落ち着いた声で話しかけられる。
    「目が覚めてよかったよ~、気分はどうかな。吐き気とかは?」
    「問題ないです、お手数をかけました」
    「まあまあ、それはこっちの役目だから気にしないで。検査が終わったらチームの方にも連絡入れるね」
    チーム、という言葉にぎくりと肩が揺れた。それに気付いた様子もなく簡易検査の機器を淡々と準備する姿にほっと息を吐き、動揺を少しばかり閉じ込めてから口を開く。
    「ありがとうございます。えっと……どんな様子でしたか」
    「キースくんはさすがに落ち着いてたけど、ルーキー二人は少し動揺してたみたいだね」
    「そうですか。……キースが宥めてくれてたとは思いますけど、心配だなぁ」
    「こらこら、今は君が気遣われる立場だよ」
    ここをまっすぐ見て、深呼吸……次は手にちょっと力を入れてみて? うん、おかしな反応もないし数値も正常だね。普段はどちらかといえばおっとりした印象を受ける人が、己の領分において意識を研ぎ澄ませる様子を見るのが好きだなと思った。自身が保護されたという経緯もあるが、どれほど内側を探られようとも研究部に対して悪感情を抱くことはなかった。真摯であろうとする気持ちが、十二分に伝わっていたからかもしれない。
    じゃあ気遣われてみますと返せば、ふふ、と笑ってくれたので安心した。兄のような……と称するには実感が足りないので当てはまらないが、紛れもなく年上なのだなぁと時々思わされる。我儘や意固地を許されるような、ふわりとした許容をこの人からは感じるのだ。
    「それじゃ、キースくんに連絡を……うわっ! びっくりした~、ずっと待ってたの?」
    通路につながる扉の向こうを覗き込んだ博士は肩を跳ね上げて叫んだかと思えば、柔らかな声音に変わり外に出ていく。なんだろうか、やはり彼は多忙で約束のひとつでもあったのではないか。そんなことを考えているうちに戻ってきた彼の隣には、また別の見慣れた顔があった。
    「フェイス?」
    「連絡も君に任せるね。検査結果は異常なし、もう部屋に連れていって大丈夫だよ」
    「……どうも」
    「うん、それじゃあよろしくね~」
    いくらかくたびれた白衣をひらひら揺らしながら、その柔らかさと同じ雰囲気で彼はラボへと戻っていった。医務室にはそれに相応しい静けさが訪れ、ノヴァに対して小さく返事をしたきり黙ったままの相手へと視線を向ける。気絶同然で運び込まれてからようやく見ることが出来たその顔は曇ったままだ。騒がしくはないけれど適度に言葉を挟んでくれる口が、淡く開いては閉じる。なにか言いたげな仕草に、上手に引き出してやれるだろうかと不安を抱くのはどうしてだろう。この子に対してもう失敗したくないと、そう思っているせいかな。
    「ノヴァさん、驚いてたみたいだけど」
    「俺がずっと待ってたと思ったからでしょ。実際は少し……前に来ただけなのに」
    「そっか、来てくれてありがとな」
    「……うん」
    こう言ったらきっと怒るだろうけど、ベッドまであと数歩という位置で立ち尽くす姿が幼い子供のように思えた。立派に育った彼には申し訳ないことだが、アカデミーで出会ったときにみたいに可愛がらずにはいられないような雰囲気がある。
    端末に手を伸ばす様子もないままの彼を、こちらもベッドに座ってじっと待つ。そばに置いてある椅子をトントンと叩いて促せば、さまよった視線が下を向いて静かに近寄ってきた。立ったままいるよりは座って落ち着いたほうが良いんじゃないかと思ったのだが、どうやらこちらが催促したように感じたらしい。先ほどよりも焦ったような、困ったような色を覗かせる目が時々こちらの姿を掠めていく。
    無理に喋らせたいわけではなかったし、今が本当に望まないタイミングならば気づかないふりで「部屋に戻ろう」と促してやることも出来る。けれどずっと、開いてはゆるく閉じる口元の葛藤を見ていたら、わからない顔はしてやれなかった。言葉にすることにも葛藤はあるだろうけれど、俺が切り離してしまっていいものじゃない。だから無茶な行動をしてしまった罪滅ぼしもかねて、吐き出すきっかけを少しだけ手伝わせてもらおうと思った。
    「俺の主観ではあるけど。フェイスは、タイミングを読んで言葉を使えるやつだと思ってる」
    「……相変わらず評価が甘いよね」
    「え、事実だろ?だからさ、話したいことがあれば……なんて促し方は野暮だと思ってる。けど」
    「そうするつもりなの?」
    「うん。ごめんな、俺の堪え性がなくて。なんでもいいから話してくれないかな、フェイス」
    ずるいやり方をしている自覚はある、俺は天真爛漫な幼子なんかではないのだ。自覚は……していない部分もあるけれど、どのように動けば人の弱みを突けるのかよく分かっているんだ。どういう顔をしてみせたら彼が俺に対して心を開きやすくなるのか、それを勘で決めつけるのは随分な話だけれど。彼に対しては「ずるいやり方をしている」と自覚的な顔を見せると、それが覿面だった。
    フェイスは、ディノ・アルバーニという人間に対してほんの少しだけ盲目的な部分がある。思い出話として伝え聞いたキースの振る舞いとはまた別の……他者に影響する場でのそれではなく、彼の意思決定に小さく関与してしまっている感覚があった。それが申し訳ないと同時に、ちょっとだけ仄暗い喜びも覚えている。
    この子は俺のことが好きだよなぁ、と思う。穿った意味だけでなく、いつの間にか消え失せた小さな敵愾心がすっかり信頼へとすり替わってしまっていると。だからなんとなく分かってしまうこともある……俺がいたら、きっと君は嬉しいんだろう。きっと、俺がいなくなったら悲しいのだ。浮かんだ考えに口角が上がってしまい、それに気付いたのか相手は聞こえよがしなため息を吐いたあと口を開いた。
    「復帰前にキースが……多分ブラッドも、意識の戻らないあんたを気にしてて」
    「ああ、なんだか懐かしいな」
    「あの頃は全然……他人事っていうか、薄情なくらい興味がなかったから」
    外向けの顔をよそ行きの態度で覆って整えることは、処世術として正しいとさえ思う。事実、君から目に見えて不快な態度を取られた印象は受けなかった。そうして少し踏み込んだあとのそっけない態度を思い出し、それもまた可愛らしく真っ当な抵抗だったと笑みが浮かんでしまう。もっとひどい言葉はいくらでも使えただろうに、苛立ちの原因が俺にもある、だなんて。言われた側の俺だって納得してしまったのに、途方もない過ちだと己の口を塞いで苦々しく顔を歪めていたことを思い出す。
    優しい子だと、それはエリオスで初めて顔を合わせたときから今に至るまで変わりない評価だ。ぽつぽつと転がり落ちてきた話が謝罪でなかったことにも安心した。なんだかんだキースの言葉がきちんと届いて、受け入れられている証拠だろう。
    「……今は、キースだって内心はともかく平気そうな顔を出来てるのに。俺が、焦って苦しんでるのは違うんじゃないかって思ってもさ」
    「……君が心配してくれて嬉しいよ」
    キースには申し訳ないけど、あいつの前では自分もブラッドもそこそこ無茶を見せてきたから、慣れさせてしまった面もある。様子がわかる状態であれば、手が届く状態であれば、彼の持ちうる冷静さが失われることはないと知っていた。いや、復帰に絡んだ一連の騒動で思い知った……と言うべきか。ブラッドは否定するかもしれないけど、物事のバランスを取る役割はどうしてもキースが長じていた気がするから。そういう意味では、フェイスがあいつの振る舞いを身近で見てきたのは良いことだったのかも。
    「キースはなんて言ってた?」
    「……あいつの失敗だから…落ち込みすぎるな、……って」
    「なるほど。俺もその通りだと思うし、君も理解は出来たんだろう?」
    「あと、回復したらめちゃくちゃ反省させるって言ってた」
    「うっ……うーん、部屋に戻るのがちょっと怖いな」
    身内に対してわりかし甘い男だが、今回ばかりはだいぶお灸を据えられそうな予感がした。俺一人がバカをやらかしただけならともかく、そこにルーキー二人を巻き込んでしまった事実がある。どういう感情与えてんだトラウマ作らせる気か?ラブアンドピース星人が聞いて呆れるわ……困ったことに言われそうな文句は尽きない。もちろん、そんなことにならないために彼はきっと言葉と態度を尽くしてくれたのだろうけれど。
    今度また酒に付き合って……そんで、良いものでも奢ってやらないと。そんなことを考えながら、目の前の彼から吐き出したいことがすべてこぼれ落ちるのを待っていた。たとえ逡巡の末に伝えないことを選んだとしてもディノにとっては正解で、とにかくフェイスが……要領がいいことで周りも慮ってしまえるこの子が、素直に自分の欲求で行動してくれたらいい。
    反省させるという言葉に渋面を作った俺に対して少しだけ笑ったあと、ふと綻んだ口元から言葉が漏れた。本当は、と。音を認識した瞬間に彼自身が口元を反射的に押さえたので、ほとんど無意識だったのだろう。それを決して捕まえることも追いかけることもせず、ただ黙って言葉を待つ。
    「……本当は、ずっと部屋の外に居たんだ。どうしても離れられなくて」
    「うん」
    「ああ、俺もう……あんたのこと、大切になってしまったんだと…そう思って、」
    「そっか。待たせてごめん」
    「そんな話をしたかったわけじゃないんだけど。……いや、したかったのかな」
    彼だって戦闘におけるダメージや疲労がなかったわけじゃないだろうに、それを押して待つことを決めたのか。その選択を非難するつもりはないし、もしもそれで弊害が出たとしても責任をすべて負わせるなんてことは勿論しない。
    憔悴してもなお艶やかさを失わない目元が、祈りを求めるように静謐に閉じられる。瞼の下で、その目の奥で、一体どれだけの思考を巡らせたのだろう。言葉を紡ぐことをためらうほどの熱を、その内側に閉じ込めたまま黙り込んでいたそれを俺は愛だと思ってしまった。あくまで空想の中にだけ存在した己に向けられる好意が、目の前に差し出されている。
    「……俺がいなくなったら、君は悲しむのかな」
    「そうだよ。でもきっと俺は遠慮してしまうから、冗談でも言わないで」
    誰も彼もを差し置いて一番に悲しい顔なんて、してやれないでしょ。その一言で、俺は今日の行いをひどく恥じた。ああ、ああそうだ、君の美点はいつだって君の心を押しやってきた。今ここに他の誰かが一緒に待っていたとしたら、きっとその人に立場を譲ってしまうんだろう。
    よかった、諦めないで待っていてくれて。俺の目がこうして君だけを捉えられたことが神様の思し召しなら、それに感謝を示そう。下賜されたなんて発想は絶対にしたくないけれど……わずかに青ざめて作り物じみた頬が顔が、自分の手で色を取り戻したらどう思う。なんの価値も感じられないほど達観していない。ごめんな、君が見せてくれる苦しみで……俺は少し嬉しくなってしまうみたいだ。
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    kinari_random

    DONEヌヴィリオ。カプと言いつつ+も同然です。
    キャラストや伝説任務もろもろのネタバレを含みます。
    「濾過の果て」俺が望む”正解”は存在しないかもしれない、そんな無知ゆえの諦念を一瞬で奪い去っていった男がいた。己を……いや、水の国におけるすべての罪を裁定する者。存在だけは耳にしていたその象徴を目に映したのは、あの場所に立たされたときが最初だった。証言台に立つには不釣り合いな背格好に対して、なんとも形容しづらい悲嘆と畏怖がさざなみのように注がれたのを覚えている。ゆえに……拙い物語の主役として祀りあげられてしまったのだから、役割をまっとうするしかないと考えたのは本音だ。
    それはカーテンコールまでここに立ち続けてやろう、という意味でしかなかったが。残念なことに、歌劇には一流の作品もあれば三流以下の作品だって存在する。愉快さも滑稽さも足りない、ただ事実だけを読み上げる朗読劇を果たして観客たちがどう感じたか……それはもちろん、推して知るべし。テコ入れをしようとした彼らの雑音を薙ぎ払ったのは、澄み切ったひとつの声だ。最高審判官と諭示機が答え合わせをして、そうして下された結論によって裁判はつつがなく終幕を迎えた。惜しみない拍手を送ってやりたかったよ、だって彼が、あんまりにも考え込んでいる様子だったから。たとえば長い一曲のなか、たった一音の素晴らしい演奏をした者に送られるべき称賛のように。
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    kinari_random

    DONEフェイディノ未満、一瞬だけ嘔吐ぽい要素。ほぼ医務室で話してるだけ。
    ディノの耳の良さ(仮定)と西ルーキーの音系攻撃って相性悪くない?という発想から練ったお話。
    【倣いごと】



    身を投げ打つ予定なんてものは己の中に存在していない。つい数ヶ月前にやった行動はなんだ、と過去が囁くのを一笑に付しながら思う。あのときはまだ生きていくことを想像していなかったせいだ、と簡潔な答えを添えてしまえばすべて解決する。
    だからみんなと共に歩んでいくと約束した今になって、そんな手段を選ぶことはないと。そんな悪行は棄て置いたつもりで、けれど……と思考がつんのめる。頭のどこかで、それをきちんと理解していないような酩酊が泳ぐ。いざとなれば許されるのではないかという甘えが、果たしてつま先ほどにも残ってはいなかったかと。
    「──ディノ!前に出んな!」
    友人が珍しくも鋭く叫んだ言葉に、こういった場面において本当に的確な指示が出来るやつだ、と感心した。それに反応が遅れてしまったのは、ひとえにこちらの不足でしかない。距離感が速度か、あるいは能力自体の把握か。自身のそれもルーキーたちのそれも知っているつもりだった。そんな慢心から生まれた状況が、決して致命的ではないというのも瞬時に察せてしまった。それもまた油断に他ならないと、もう一人の友人なら口を挟んでくるかもしれないな。
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