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    kinari_random

    すべてにおいてらくがきばかり

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    kinari_random

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    妄想&捏造だけを詰め込んだジュード(+ビアンキ)のお話。
    無痛症に自己再生のサブスタンスが最悪すぎて困ったことに萌え狂ってしまった。この適性はあまりにもギフトだな〜〜贈り物、神から押し付けられたもの。
    全然関係ないけどニューミリの宗教観ってどんな感じなんだろ。

    【生き甲斐は他人の形をしている】



    触覚がきちんと機能していることは不幸であるか、慈悲とも言える幸いなのか。鉄くささと土煙、それから様々な何かが焦げるにおいが立ち込める路地裏で、ふとそんなことを思った。普段より視界が明瞭さを欠いているのは、足元に広がる血溜まりのせいだろう。
    指先を地面へと滑らせれば、ぬるりとした感触とざりざりとした感触がそれぞれに伝わってきた。……ソファーの柔らかさも金属の硬さも、目を向けなくたって理解できる。指先でなぞればきちんと形だってわかる……あくまで、それだけの情報だが。人の肌であったとして、それだけなら死体と生者の区別もつきやしない。それゆえに断言できる、生きた触覚は幸いであると。
    少なくとも俺は指先から伝う、己とは明確に異なる異物の感触を愛してきた。肉の柔らかさ、骨の硬さ、俺の頭はそれによって対象を生き物と証明していた。翻って、己の身においても同じことだ。指先に受け取る情報は、日々同じものに触れることで異常を感知させる。
    (……手足の動きも鈍い。でも、こんなものだ)
    なんでも、痛みというのは熱を持つらしい、そう聞いた。健康優良児にはほど遠い体だというのに、そのものを知らないまま続いていく命を軽んじるのは道理だ。熱が出ているよ、痛みがあるはずだ。周りから繰り返し聞かされた言葉は、しかし電子メッセージを読むような味気なさを残すだけだった。
    そう教えられた瞬間の思い通りに動かない感覚を記憶したとて……無いものを『ある』と認識できる人間がどれほど存在するんだ?子供であれば尚更だ。どれだけ賢いやつだって何割を経験から得たんだろうな。たらればに意味はない、俺は俺の体で生きることしか出来ないんだから。
    幼い頃に点々と残る出来事は、今でも退屈と落胆の象徴だった。いつも通りに動かせない手足がもどかしく、じたばたと動かそうとする俺を押さえつける手と半泣きの声が響く部屋の中は味気なかった。お願いだからじっとしていて、いい子にしていて。ああ、なんだ、何にもしていないのに悪い子になれるのか。ただ走り回るだけで、両親は不安そうな顔をして手を伸ばし……触れられた熱の記憶は、やはり無い。
    (失血もじきに回復するだろうけど……)
    生き永らえるためのアラートを胎に落としてきた子供の代わりに、命の綱を必死に手繰り寄せていた両親。そこに感謝が皆無かといえばそんなことはない……はずだ、多分。その証拠に俺はいつだってこの言葉を返していた。『ごめんなさい、もう──』
    「"もうしません"、とでも言うんでしょ。……ハァ、やってらんないわ」
    「ビアンキ、俺の心を読んでくれたのか?」
    「読んでないわよ、気持ち悪いこと言わないで。ねえ、アタシがアンタに"そういう戦い方はやめなさい"って言ったの何回目かしら」
    「16回目だ、もちろん覚えているよ」
    「…………、……最低ね」
    苦虫を噛み潰したような顔をして……いや、想像上の虫すら噛ませることはあってはならないのだが。そう吐き捨てられ、一体なにが不足だったのだろうかと首をひねる。謝罪は汲み取ってもらえた、質問への答えも澱みなく返せたはずだ。となれば内容が不十分だったということだろうか。言い回しは異なれども同じ文言の台詞を頭の中で指折り数えたが、3回ほど繰り返しても結果は同じだった。
    「間違ってないはずだ。意識がないときは……カウント出来ていないかもしれないが」
    「つまり15回、アンタはアタシのことを無視したの。踏み躙ったのよ」
    「俺がビアンキを無視なんて出来るわけないだろう?謝っているし、きちんと受け入れている」
    「子供の面倒を見る気はないんだけど。いい加減、聞き分けなさいよ」
    「聞き分けているさ、他ならぬビアンキの言葉なんだから」
    「……ああ、最悪。16回目も早々に起こりそうね」
    丁寧に結われた髪を気にすることなく手のひらでガシガシと頭をかき回す仕草も美しい。疲弊した表情には嫌悪と呆れが余すことなく滲んでおり、その感情の矛先が誰であるかなど言うまでもない。
    願われるままにずっと我慢をしてきた、その褒美がビアンキとの出会いだというのなら俺は全てを許せてしまう。死なないための行いだけをしてきた、これからは生きるために動いていいんだろう?ありがとう、俺を真綿の中で上手に殺さずにいてくれて。
    「乱れた髪も綺麗だな、ビアンキ。けどもったいない……止めてやれないのが残念だ」
    「は、自分の機嫌くらい自分でとるわよ。もう良いから黙ってちょうだい」
    次の言葉を吐き出そうとするより早く、彼の手にある武器というには優美なそれがひらめく。辺りを埋め尽くした香りを意識するより早く、脳がぐるりと回るような感覚に意識を手放した。
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    Replies from the creator

    kinari_random

    DONEヌヴィリオ。カプと言いつつ+も同然です。
    キャラストや伝説任務もろもろのネタバレを含みます。
    「濾過の果て」俺が望む”正解”は存在しないかもしれない、そんな無知ゆえの諦念を一瞬で奪い去っていった男がいた。己を……いや、水の国におけるすべての罪を裁定する者。存在だけは耳にしていたその象徴を目に映したのは、あの場所に立たされたときが最初だった。証言台に立つには不釣り合いな背格好に対して、なんとも形容しづらい悲嘆と畏怖がさざなみのように注がれたのを覚えている。ゆえに……拙い物語の主役として祀りあげられてしまったのだから、役割をまっとうするしかないと考えたのは本音だ。
    それはカーテンコールまでここに立ち続けてやろう、という意味でしかなかったが。残念なことに、歌劇には一流の作品もあれば三流以下の作品だって存在する。愉快さも滑稽さも足りない、ただ事実だけを読み上げる朗読劇を果たして観客たちがどう感じたか……それはもちろん、推して知るべし。テコ入れをしようとした彼らの雑音を薙ぎ払ったのは、澄み切ったひとつの声だ。最高審判官と諭示機が答え合わせをして、そうして下された結論によって裁判はつつがなく終幕を迎えた。惜しみない拍手を送ってやりたかったよ、だって彼が、あんまりにも考え込んでいる様子だったから。たとえば長い一曲のなか、たった一音の素晴らしい演奏をした者に送られるべき称賛のように。
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    kinari_random

    DONEフェイディノ未満、一瞬だけ嘔吐ぽい要素。ほぼ医務室で話してるだけ。
    ディノの耳の良さ(仮定)と西ルーキーの音系攻撃って相性悪くない?という発想から練ったお話。
    【倣いごと】



    身を投げ打つ予定なんてものは己の中に存在していない。つい数ヶ月前にやった行動はなんだ、と過去が囁くのを一笑に付しながら思う。あのときはまだ生きていくことを想像していなかったせいだ、と簡潔な答えを添えてしまえばすべて解決する。
    だからみんなと共に歩んでいくと約束した今になって、そんな手段を選ぶことはないと。そんな悪行は棄て置いたつもりで、けれど……と思考がつんのめる。頭のどこかで、それをきちんと理解していないような酩酊が泳ぐ。いざとなれば許されるのではないかという甘えが、果たしてつま先ほどにも残ってはいなかったかと。
    「──ディノ!前に出んな!」
    友人が珍しくも鋭く叫んだ言葉に、こういった場面において本当に的確な指示が出来るやつだ、と感心した。それに反応が遅れてしまったのは、ひとえにこちらの不足でしかない。距離感が速度か、あるいは能力自体の把握か。自身のそれもルーキーたちのそれも知っているつもりだった。そんな慢心から生まれた状況が、決して致命的ではないというのも瞬時に察せてしまった。それもまた油断に他ならないと、もう一人の友人なら口を挟んでくるかもしれないな。
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