下校時刻のチャイムが鳴り、ゆっくり廊下を歩く。校庭を囲む木々の桜の花びらは散り、新緑の色に変わっていた。グラウンドを眺めると部活動の準備をしている後輩たちを数人見つける。
ほんの数週間前までは一緒に活動していたのに、なんだかすごく遠い昔のように感じる。
「大門山」
立ち止まって外を見ていた俺に、担任の先生が声を掛けてきた。
「なんすか?」
「お前の進路調査表、空欄だったぞ」
先生は目の前に白紙の進路調査表を差し出した。
そんなの知ってる。
黙っている俺に何か察したらしく、先生は話を続けた。
「お前の家、自営だったよな?」
「はい」
「兄貴はどうしてる?」
「家を継いでます」
「まぁ色々思うところがあるとは思うが、あまり思い詰めるなよ」
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