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    yamagawa_ma2o

    山側(@yamagawa_ma2o)のポイポイ部屋。

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    yamagawa_ma2o

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    何でも修理屋さん魏嬰がアンドロイド藍湛を拾う忘羨近未来AU①。
    注意:藍湛が途中までアンドロイドです。くっつく話なので最終話のみR18でお届けします。
    完結済みまとめ: https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17171805

    ##忘羨

    忘記星霜①「魏さん、いるか?」
    「どうした、何かあったのか?」
     貧しい山間の村。魏嬰は住んでいる小屋で作業をしていたところ、村人の中年男性に呼ばれて、散らかった机の上をそのままに玄関へ駆け寄った。尤も、駆けるまでもなくほんの二、三歩で近くに来れる距離である。
    「また夜中に不法投棄の連中が来たみたいだ。魏さんがめぼしい物もあるかもしれないからと思ってな。役人にはそれから連絡する」
    「分かった! ありがとう、すぐ行くよ」
     魏嬰は元々地域医療の拡充のためにこの村にやってきた医者であったが、いざ村に辿り着くと、そこには凄腕の医者が既にいて故郷の医療に尽くしていた。本来であればすぐに都会に帰るべきところを、この山村をすぐに気に入った彼は、仕事を放りだし、見つけた空き家に住みついて、機械修理や便利な道具を作ってその日暮らしをしている。
     山中への不法投棄は嘆かわしい問題であるが、魏嬰にとって投棄されたものは宝の山である。そのため気を利かせた村人が、たまにこうして魏嬰に知らせてくれるのだった。村人の中には、捨てられたゴミの山から屑鉄や金属を探して売ることで糊口をしのぐ人もいるので、魏嬰はそういう人たちの邪魔をしないようにしている。
    「ああ、魏さん!」
     魏嬰が裏山に着くと、そこには既に何人かの顔見知りがいた。いつも一心不乱に金属を集めているにも関わらず、魏嬰が来たことに気付くと心配そうな表情で駆け寄ってきた。
    「どうしたんだ? みんな、いつも俺なんか目もくれずに仕事に精を出しているだろう?」
    「いやあ……それが。捨てられたものの中に変なのがあってな。馬鹿でっかいんだが、中を見てくれるか?」
    「へえ、どれどれ……」
     村人に案内され、魏嬰はゴミの山を進んだ。少し進むと、四、五人の顔見知りが見たことのない機械の周りに集まっている。
    「これが何だか分かるか?」
     村人の一人が指をさした機械は、一見すると医療機器のような形をしているが、扉のようなものが付いており、中に人が入れそうな感じである。
    「まさか! 俺も知らないよ。……でも、扉が付いているんだし、開くんじゃないか?」
     魏嬰は躊躇なく扉の横についていたボタンを押した。それを見た村人たちは、皆恐ろしさのあまり魏嬰の後ろに逃げた。
    「魏さん、開けるなら言ってくれ!」
    「俺たちは用が済んだから帰る!」
    「分かった分かった。俺が夕暮れまでに帰ってこなかったら温情に知らせてくれ」
     魏嬰は呆れるように村人たちへ声を掛けた。彼らは「分かった、気をつけろよ」と言い残し、ちゃっかり集めていた鉄くずの袋を抱えて帰って行った。
    「おいおい、あいつら……。俺にこの機械をどうにかしてほしかっただけだろ」
     魏嬰はそう独り言を言いながら、外扉の開いた機械の内扉が開くのを待った。どうやら電源に繋がれていない状態でもシステムが生きているらしく、機械は色々な音を立てている。
    『緊急解凍します。残り六十五分……』
    「緊急解凍? 最新型の冷凍庫か?」
     一時間以上待たされるのはあまりにも暇だと思った魏嬰は、解凍とやらが済むまで温情の自宅兼診療所にでも行こうかと思った。温情は、魏嬰がこの村に住む前からいる名医で、気が強い女性だが腕は確かである。診療所には具合が悪い人もそうでない人も集まることが多いので、行けば大抵何かしらの暇つぶしになるのだ。それに、温情の弟で看護師をしている温寧は、気が弱いもののとても心優しく、しばしば魏嬰の下らない発明の実験台にもなってくれる。
     そう考えてその場を離れようとしたが、件の機械がまた何か喋り出したので魏嬰は足を止めた。
    『緊急解凍、残り三分』
    「おいおい、見当違いも甚だしいだろ……。随分時間の観念がガバガバな機械だな」
     結局魏嬰は大幅に縮んだ解凍時間を待ち、機械の内扉が開く瞬間を待った。解凍された結果、食べられそうな食糧が入っているなら村の人に配ればいいし、空っぽであれば機械をばらして何の機械か調べるのも良い。魏嬰は生来好奇心旺盛で、この三分間をわくわくしながら待ち、機械から音が鳴った時にはすぐに駆け寄った。
    『解凍完了、扉が開きます』
     独特な音のアナウンスの後、プシュと音が鳴って機械の内扉が開いた。
    「は……? どうしてまた、こんな高級品が」
     中に入っていたのは、薄着の男性型のアンドロイドと思しきものだった。

     アンドロイドは、数十年前から先進国で普及し始めた人間型のロボットで、精巧な人体に近い身体を持ち、従順でプログラムされた感情しか持たないため、多くの場合人手不足の現場の労働力や、金持ちの家のハウスキーパーとなっている。しかし、アンドロイドは一般に極めて高額で、おいそれと不法投棄されるようなものではない。処分についても厳しい法規制が敷かれ、持ち主はアンドロイドの悪用防止のため厳格な検査の後登録がなされる。勿論、軍事目的での利用を規制するため、人体同様痛覚や三大欲求も備えており、生殖器官を持たない人間と見て遜色ないほどだ。

     魏嬰は「彼」に何があったのか確かめるため、起こすことにした。
    「おい、大丈夫か? 起きろ」
     目を開けた彼は、魏嬰とそう変わらない年頃の青年で、この世のアンドロイドの中でも非常に均整の取れた美しい顔をしていた。
    「……君は?」
    「おはよう美人ちゃん。俺は魏嬰。お前の名前は?」
     魏嬰が尋ねると、青年は少し考えた後で答えた。
    「……藍湛」
    「ランジャンか。良い名前だな。後で字を教えてよ」
    「うん」
     魏嬰は、この不思議なアンドロイドのことがすぐに気に入り、もう彼が入っていた機械のことは一切忘れて、彼が機械から出るのを手伝った。
    「――ずっと寝ていたんだろう? 喉が渇いていると思うから、とりあえず家に来いよ」
    「家?」
    「俺の家。ここからすぐ近くだ。お前、持ち主は誰だ? かわいそうに、どうして捨てられちゃったんだ?」
     魏嬰は、もし尋ねて彼を傷つけてしまったらどうしようかと思ったが、アンドロイドが持ち主や人間に深く関わるにつれて抱くようになる感情を持たない設計であることを思い出し、何でもないように尋ねた。
    「……分からない」
    「記憶もないのか……。でも大丈夫。俺、一応機械は得意なんだ」 
    「魏嬰」
    「何だ?」
    「覚えた。君の名前は、魏嬰」
    「そうだよ。ハハ、お前ちょっと面白いアンドロイドだな。まさかゴミの山からこんなお宝を拾うなんて!」
     魏嬰が上機嫌に山を降りると、その先では村人が井戸端会議をしていた。魏嬰は適当に挨拶をしてすぐに家に戻ったが、彼が廃品の山からアンドロイドを拾ったという噂はこの村中に広がるだろう。

     魏嬰から差し出された水を、藍湛は問題なく飲んだ。ついでに魏嬰が作った粥も、辛い味付けに噎せながらも完食した。
    「よし、お前は水も飲めるし、食事もとれるし、字も書ける。見たところ問題なさそうだ。服はちょっと小さいかもしれないけど、ちょっと伸びてる俺のやつを貸すよ。ここは一年中暖かいから、調子が悪くなったら教えてくれ」
    「分かった。ありがとう」
    「いいんだよ。お前は俺と暮らすんだから、これから『ありがとう』とか『ごめんなさい』はいらないよ」
     藍湛は屈託なく笑う魏嬰を見て、少し目を見開いたが、すぐに元の落ち着いた様子に戻った。
    「君は……」
    「ん? どうした」
    「いや、何でもない。――私は君の所有物ということでいいだろうか?」
    「そうだ。それも調べないと……。でもお前、普通うなじに入ってる製造番号とかがないんだよな」
     パソコンを開き、魏嬰は遺失届が出されているアンドロイドの情報データベースにアクセスした。魏嬰は仕事さえきちんとすれば収入を得られるので、たまに村の景色に飽きてくると出稼ぎに行き、都会の病院でアルバイトをしている。スマートフォンも持っているが、この村にいる限りはほとんど使わないので、普段は家に置きっぱなしだ。
     高価なアンドロイドは、しばしば攫われて売り飛ばされてしまうことがある。しかしどういう訳か、いくらデータベースを検索しても藍湛を探しているという者の情報は存在しなかった。
    「藍湛、二十年分のデータを見たけど、お前に元の持ち主はいないみたいだ」
     一時間ほど経って魏嬰が言うと、藍湛はそれを特に残念がるふうでも喜ぶふうでもなく頷いた。
    「そうか」
    「という訳で、これからお前は俺の同居人……でいいか?」
    「君が望むなら」
    「俺はお前がここに住んでくれるなら嬉しいよ。藍湛」
     魏嬰が笑いかけると、藍湛は胸のあたりがじわりと温かくなるのを感じた。

    「魏さん、今時間あるか?」
     少ししたところで、魏嬰の家に村人がやって来た。
    「どうした?」
    「おお、そいつが噂のアンドロイドか。すごく上品な顔だな」
    「そうだろそうだろ? 今日から暫く一緒に住むよ。藍湛って言うんだ。よろしく」
    「ああ、よ、よろしく……」
     村人がおそるおそる言うと、藍湛はそれに対して特に何も感情を示さず頷いた。
    「ところで用事は?」
     魏嬰が聞き直すと、村人は粗末な布の袋から大事そうに小型の機械を差し出した。
    「ああ、うちのラジオがまたぶっ壊れちまってな。家内が直してこいって」
    「すぐ直すからちょっと見せてみろ。……スピーカーが壊れてるみたいだ。三十分くらいで直るから取りに来てくれ」
    「ああ、頼むよ。こいつがないと家内の機嫌が悪くてさ」
     村人は一度買い物に行くと言って魏嬰の家を出ていった。
    「――魏嬰、君は機械修理をしているのか?」
    「そうだよ。お代は現物支給が多いから貧乏だけど、実は元々は医者で、たまに出稼ぎに出てる」
    「専業で医者をすればよいのでは?」
    「いやいや。ここには温情っていう凄腕の医者がいるからな。俺はたまに手伝うけど、基本的には人間以外を直しているんだ」
     魏嬰はそう言うと、食事に作業に書き物にと日常の殆ど全てを行っている机の上に壊れたラジオを置き、早速その辺にあったドライバーを持って作業を始めた。藍湛はそれきり何も聞かず、魏嬰がラジオを修理するのを近くの椅子に座ってじっと眺めていた。
    「お前も修理に興味あるのか?」
    「……」
     藍湛は、魏嬰が器用にねじを緩め、中の部品を検分してどこが壊れているのかを見つけ出し、ストックしている代用の部品と交換するのをじっと眺めていたが、その実修理には全く興味がなかった。まるでちょっと待っていてほしいと言われて大人しく母親を待つ子供のように、じっと魏嬰が真剣な表情でラジオを直す姿を見つめた。
    「よし、これで終わり。――藍湛、どうした? そんなに俺を見て。穴が開いちゃうよ」
     魏嬰が揶揄うと、藍湛はふいと顔を背けた。しかし、横顔から耳が僅かに薄紅色になっているのが見えて、魏嬰は悪戯心を十分にくすぐられた。
    「ハハハ、藍湛、もしかして照れちゃったのか?」
    「……っ」
    「恥ずかしがることはない。久しぶりに人と暮らして、俺が構ってくれないとつまらないのも分かるよ。ここにあるものは好きに使っていいから、まずはこの家での暮らし向きに慣れてくれ」
    「うん。――魏嬰、君は、出かけることもあるのか?」
    「この間出稼ぎが終わったばっかりだから暫くは村にいるよ。でも、誰かの何かが壊れたら、呼び出されることはあるかな」
    「私も、行きたい」
     魏嬰はそれを聞いて、少し驚いた様子で藍湛を見た。
    「藍湛、留守番でもいいんだぞ。俺が作業しているのを眺めてもしょうがないだろ?」
    「少し、手伝えると思う」
    「ん? ひょっとして昔やってたとか? ちょっと何か思い出したか?」
     魏嬰の問いかけに、藍湛は首を振った。それを見て、魏嬰はため息をついた後、困ったように笑った。
    「――分かったよ。お前、俺について行きたいだけか。ハハ、お前は俺のアンドロイドだけど、召使じゃなくて同居人だからな。好きなことをしていいんだぞ?」
     魏嬰に言われて、藍湛はそっぽを向いたまま言った。
    「私が好きでやりたいことだ。――気に入らないだろうか」
    「そんなことないぞ。今は村のみんなもおそるおそるお前に接してるけど、そのうちきっと人気者になれる! じゃあ、俺の助手として手伝いを頼むよ」
    「うん」
     魏嬰の方を向いた藍湛は、ほんの少しだけ玻璃の瞳の奥にさざ波を立てた。魏嬰はそれを見て嬉しそうに言った。
    「ハハハ、藍湛、良かったよ。お前、ちゃんと笑えるじゃないか!」
     藍湛はそれを聞いて照れたのか、座っていた椅子ごと後ろを向いてしまった。
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    Replies from the creator

    yamagawa_ma2o

    PROGRESS花怜現代AU音楽パロ完結編。幸せになあれ~~~!!!!!って魔法をかけながら書きました。ハピエンです。
    すみませんが、③以降は原作(繁体字版とそれに準ずるもの)読んだ人向きの描写がはいっています。

    金曜日くらいに支部にまとめますが、ポイピク版は産地直送をコンセプトにしているので、推敲はほどほどにして早めに公開します。
    よろしくお願いします。
    花を待つ音④(終) コンサート本番、謝憐はどういうわけか花城の見立てで白いスーツを着ていた。
    「哥哥、やっぱり俺の予想通りだ。すごく似合ってる!」
    「本当かい? なんだか主役でもないのに目立ち過ぎないかな?」
    「俺にとっては哥哥が主役だからね」
     そう言って笑う花城はというと、装飾のついたシャツに赤い宝石と銀色の鎖のついたブローチをつけている。ジャケットとスラックスは黒いものだったが、ジャケットの裏地から見える光沢のある赤い生地が華やかさと季節感を演出していた。
     師青玄も白いスーツだったが、彼の方が生成色寄りで謝憐は雪のように白いものという違いがあり、共通点と相違点が適度に見えて舞台映えする。師青玄は中に緑色のシャツを着ていて、謝憐はあまり中が見えないが、薄い水色のシャツを着ていた。
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    yamagawa_ma2o

    DONE天官賜福(英語版)読破記念&日本語版3巻発売おめでとうにかこつけて書いた初書き花怜。何でも許せる人向け。帯の言葉をどうしても入れたくて捻じ込みました。ネタバレというほどではないけど暮らしている場所とかが完走した人向けです。捏造モブ神官(名前なし)がちょっと出てきます。
    太子殿下弹奏古筝(太子殿下、琴を奏でる)「ガラクタや不用品を回収しています。お家の中に処分に困っているものはありませんか?」
     ガラクタ集めは、色々なことが終わった後の今でも彼の暮らしの中にある。八百年の中で染みついた行動は、中々変えることが難しいのだ。そういうわけで、謝憐は今日も朝からガラクタを集めていた。
     昔と違う点は、必ずしも生活をするためのガラクタ集めをしているわけではないことだ。謝憐はガラクタ集めに関してあまり苦労したことはないが、その昔は換金性の高いものが集められないと少しがっかりすることもあった。けれども今は、千灯観か極楽坊に持って帰って楽しめそうなものであれば、謝憐は何でも集めている。
     それに、ガラクタ集めからは人々の暮らし向きが見える。神々の噂話の書物を拾うこともあれば、打ち捨てられた小さな神像にこっそりと居場所を提供してやることもあった。貧しい村では拾った本を子どもに読んで聞かせたり、売れそうなものを自分たちの神像の横にこっそり置いていったりすることもあった。
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