園部飛龍が肖飛龍になる話「飛龍ってさあ、中国人なの?」
友人の何気ない問いに、飛龍は言葉を失った。
それが彼にとって、特段聞かれたくない質問だったわけではない。ただ、単純に、彼自身にもその答えが分からないのだ。自分が何者であるのか。当時小学三年生であった彼は、その疑問に至る機会すら無かった。
「うーん……日本人……?」
「ハーフなんだ」
「ううん。父さんも母さんも中国人」
「じゃ、中国人じゃね?」
友人の視線はテレビゲームに集中していた。飛龍は傍らのポテトチップスを一つつまみ、思案げに眉をひそめた。
「でも僕、中国語喋れないよ」
「えーっ?両親が中国人なのに?」
「ほら、僕の母さんは僕が赤ちゃんの時に死んじゃったからさ。今の母さんは日本人。父さんは滅多に中国語喋んないし」
9741