約束「なぁ俺らってずっと一緒におられへんよな?」
そう問われた時俺は何と返したのか。思い出せないが確かその問いを肯定したと思う。
安心きたような顔をする簓を見て自分の答えは間違っていなかったのだと俺も同じ様に安心した。その日はその後どうしたんだったか、それも思い出す事ができない。
◇◇◇◇◇
『ごめん今日行けんくなった』
暗かったスマホの画面が簓のからの通知によって明るく光る。
蒸し暑い梅雨終わりの夕暮れ。天谷奴はいつもの喫茶店で冷めた珈琲を流し込んだ。約束の時間から早二時間。昔は天谷奴が待たせる方であったというのに最近は待ちぼうける事が多くなった。待ちぼうけるだけならまだいい。しかし最近は今日の様に『行けなくなった』の一言で約束を反故にされる。
文句の一つでも言ってやろうと思った事はある。しかしその一言が見え隠れしている終わりを確実に見えるものとしてしまいそうで。喉元まで迫り上がってきたその言葉をまだ一度も簓に届けられた事はなかった。
「二ヶ月、か……」
行けなけくなった、と初めて送られてから二ヶ月が経った。その間一度も簓の顔も声も聞いていない。テレビを付ければいつでも見る事はできる。芸人の白膠木簓には。だというのに恋人の白膠木簓には会えない。電話をかけても切られる。送ったメッセージには他人行儀な返答しかない。そのくせ一週間に一度ほど『会おう』と送ってくる。そして当日に来るのは本人ではなくあの言葉だけ。
どついたれ本舗を結成していた時はミーティングと称してあれだけ会っていたというのに。ただのメンバーから恋人に変わった時はそれよりももっと会っていたのに。もう恋人とも、友人とすら名乗れないかもしれない。
一体いつからおかしくなってしまったのか。考えても考えても始まりが分からない。
——なぁ俺らってずっと一緒におられへんよな?
あの問いを肯定したのが駄目だったのか。そんな事ない、ずっと一緒だと言えばよかったのか。
いや、そう言ったらきっとその時に完全に終わってしまっていた。俺が永遠を願っていると知った時、きっと簓は俺から離れていってしまう。
『明後日ならいけるから。時間と場所は今日と同じで』
また暗くなっていたスマホの画面が明るくなる。
どうせ来ないと分かっているのにまた俺はここに来てしまうんだろう。