駄目な男ダメな男ほどよく夢を語る。
いつか遊園地に行こうな。
いつか家族みんなで遊びに行こうな。
いつか迎えに来るからな。
いつか本当の事を話すから。
いつか一緒に暮らしたいな。
いつか親子だって正式に公表しよう。
いつか、いつか、いつか。
そしてその約束は果たされない。
いつか、幼い頃はずっといつかは来ると信じていた。
今はもうその『いつか』が来ない事を知っている。
分かった、待ってる、約束だからね。
今度こそ約束を守ってくれる。次こそ守ってくれる。
今度も守ってくれない、次も。きっとその次も。
待っても無駄だ。
約束するだけ無駄だ。信じるだけ無駄だ。
声が思い出せない。顔が思い出せない。
写真を探す。
無い。どこにも無い。
顔が思い出せない。
目の前にいる男が本当に父親なのか分からない。