メンズバレンタインデーのバルいぶ 「おはようございます。お渡ししたいものがあるので、魔王城まで来ていただけますか?」
というバルバトスからのチャットをうけ、私は今、彼の部屋にいる。多分いつものお茶のお誘いだろうと思って来たけど、どうやら今日は2人っきりらしい。ディアボロやルークと一緒にティータイムを楽しむことも多いから、後で羨ましがられるんだろうな…と思いつつ、彼の手作りケーキに舌鼓をうつ。美味しい。ケーキから視線をあげると、バルバトスと視線が重なる。にこりと微笑まれて体温が少し上がった気がした。…バルバトスと2人っきりであることにドキドキしている心は見て見ぬふりは出来なさそうだ。
ちらり、気づかれないように彼を盗み見る。優雅な仕草でお茶を楽しんでいる。あぁ、好きだなぁ、と思う。どこが…と聞かれると難しい。いつでも冷静で、執事として有能すぎるところ、柔和な笑顔、穏やかな口調。簡単には語りきれなくて。
「そういえば、これを。」
不意に声をかけられて意識を現実へと戻す。いつの間に席を移動したのだろう。正面に座っていたはずのバルバトスが可愛らしい紙袋を持って私の隣にいる。
「人間界にはメンズバレンタインデーという文化が存在すると知りまして。」
「メンズ、バレンタインデー…ですか?」
「ええ。男性から女性へ下着を送り、愛の告白をする日だと聞いたのですが…もしかしてご存知なかったですか」
「私のいたところではあまり認知度が高くなくて…」
「そうでしたか。では本当に驚かせてしまいましたね。」
「いえ、下着を贈っていただいたことに驚きはしましたけど…でも嬉しいです。」
申し訳なさそうにするバルバトスに笑みを返すとそのまま唇に柔らかい感触。
「すみません。あまりにも可愛らしかったもので我慢が出来ませんでした。」
突然の事で顔が赤くなっているのが自分でもわかる。「急に何するんですか」と怒れば
「やはり本当に可愛らしい。皆が貴女に惹かれる理由がよく分かります。それでも、今この瞬間、私が貴女を独り占めしている。」とかえってくる。その瞳は雄弁に「愛している」と私に伝えていた。
「いい機会ですので、普段お伝えできていない分まで貴女に愛を贈らせて頂けますか。」
こくり、と頷けばまた優しくキスが降ってくる。
「嘆きの館へ、遅くなると連絡を。貴方への愛を語るには、きっと少しの時間では足りないでしょうから。」