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    hananyan

    @hananyan49

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    hananyan

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    るしいぶ 教会で結婚式が挙げられている。互いに少しはにかんで新郎新婦は見つめあっている。新婦のベールがあげられるとその顔はよく見知ったものだった。誓いのキス。皆が二人を祝福している。ただ一人、俺を除いては。その排他性は、どこかこの場所そのものに俺の存在が許されていないような、そんな気を起こさせた。

    目が覚める。先程まで自分が見ていたものが夢だと知り、安堵する自分がいる。
    夢の中の新婦は伊吹だった。愛する「人間」と結ばれ、結婚をし、子供を産み、命を繋いでいく。そんな人間なら一度は想像する光景を俺では叶えることは出来ないのだろう。
    だから、彼女は人間界で真っ当に暮らしてゆくべきだと思っていた。彼女が幸せならそれでいい、そう考えていたはずだった。だが蓋を開けてみればどうだろう。先程まで見ていたものがたとえ夢であったとしても、彼女が他の誰かのものになる光景をただ見ているだけしか出来ないと言うのはかなり心にくるらしい。

    不意に隣でもぞもぞと動く気配を感じる。伊吹が寝返りをうち、幸せそうな寝顔を浮かべる。昨夜は俺の仕事が忙しいからとそれぞれ別で寝たはずなのだが、いつの間にか潜り込んできていたらしい。それだけの事で胸があたたかくなる。
    教会で結婚式をあげてやれないことを悲しむだろうか。人としての当たり前の営みが叶わなくなることを嘆いたりするだろうか。
    「だとしても、もう離してやることは出来ないな」
    思ったよりも弱々しい声音に苦笑する。傲慢の悪魔が聞いて呆れる。もし、悲しみ嘆いたりするとしても、その分だけ、いやそれ以上に俺が愛して幸せにすればいいのだから。


    あどけない寝顔にそっとキスをする。
    「ゆっくりおやすみ、my sweetie」
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