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    ひぐらし

    ひぐらし@higurashi113043
    ※作品は全て二次創作です。公式様とは一切関係ありません。

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    ひぐらし

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    3(ウェンティ)

    3「ハハ…モンド一の吟遊詩人には全部お見通しってわけか」

    ガイアは苦笑いをしながら言った。

    「…そっか、君はこのままじゃ死ぬってわかってたんだね。でもいいの?君はまだ生きていたいんじゃないのかい?君は、自分がどうして生き返ったのか、心当たりがあるんでしょ」

    ウェンティはそう言って地面へふわりと降り立つ。
    ガイアは何も言わなかった。

    「ガイア、ひとつ忠告させて」

    俯いて何も言わないガイアを覗き込んで、ウェンティは話し出す。

    「君の体はもう普通の人間とは違うんだ。君の体は死体とほぼ同じ。だから、放っておくと体は硬直していき、最終的に朽ちていく。まぁ君は氷元素使いだし、まだもう少し持つだろうけど」

    ウェンティはガイアの顔を覗き込むのをやめて、今度は背伸びしてガイアの頭を撫でる。

    「でも、いつかはそんな未来がくる。それを変えるには、君は誰かから血を貰うしかない」

    「は?!」

    ガイアは思わずガバッと顔をあげる。

    「おっと、ようやく顔をあげてくれたね。よかった〜」

    ウェンティはバランスを崩しかけたが、なんとか持ち直してにっこり笑った。

    「待ってくれ、血ってどういうことだ!?」

    ガイアはウェンティの細い肩を掴み、必死に問いただした。

    「血は生命の根源とも言われるんだ。だから、君のような死人はその根源を貰って栄養源にするしか、生き残る道はないんだよ」

    ウェンティは両肩に置かれたガイアの手をそっと退かし、風を呼び起こす。

    「待て!まだ話が!」

    「そろそろ君のお義兄さんが来る頃だから、ボクはもう行くね。君自身がどうしたいのか、ちゃんと考えて動くんだよ……あっ、でも血を求めて無差別に人を襲ったりしたらダメだからね!」

    ウェンティはそう言って去っていってしまった。

    「どうしたんだい、ガイア。声が聞こえた気がしたけど」

    見計らったかのようなタイミングでディルックが出てきたため、ガイアは慌てて伸ばしかけた手を下ろす。

    「なんでもないさ、ただ気分転換がしたかっただけだ」

    「…そうか、じゃあ僕の片付けも終わったことだし、帰ろうか、ガイア」

    ディルック少し訝しげな表情をしたが、すぐにその表情を消して、優しげな声でガイアを呼び、手を差し伸べる。
    ガイアはそんなディルックを見て少し胸が痛んだが、あんなことは絶対に言えるわけがないと思う。
    だってそうだろう。自分は血を飲まなければこの姿を保つことができないなんて。
    そんなことを言えば、きっとディルックは喜んで自らの血を差し出すはずだ。でも、それは嫌なのだ。望んでいないのだ。自分はそんなことをしてまで生きていたくないし、迷惑をかけたくないのだ。

    「あぁ、帰ろう」

    だから、自分はまた嘘をついて、矛盾を抱えていくしかないのだ。
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