7ガイアの体調が元に戻らない。
それどころか、この前倒れた時からどんどん酷くなっている。
ガイアはずっと笑っているが、その顔にだんだん色がなくなってきていた。そのことにディルックが気づかないなんてことはなかった。
彼の体調を何とか元に戻せないだろうかと、少しでも彼の力になれないだろうかと、ディルックは彼の世話を付きっきりでした。
それでも、彼の体調が良くなることはない。
日に日に窶れていくガイアをただ見守るしかできないディルックは、夜の帳が怖くなっていた。暁の光が怖くなっていた。
ディルックはもう、月も太陽も見たくなかった。
だってそうだろう。
夜の空気に触れる度、朝の光に照らされる度、ガイアが消えてしまうんじゃないかと思ってしまうのだから。
どうすればいいのだろう。やはり、彼と共に生きるのは無理なのか。嫌だ。もう奇跡のようなことは起こらないんじゃないか。嫌だ。彼ともう一度やり直すなんて、不可能な話だったのだろうか。いやだ。もう、彼と一緒にいることは許されないのだろうか。いやだいやだいやだいやだ。…こんなことになるなら……
…今、僕は何を考えようとした?
「僕は、ガイアと、一緒に、生きるんだ」
ディルックは頭の中の雑念を追い払うように、一つ一つ噛み締めるように言う。
そう、ガイアとこの先も一緒に生きていくのだ。だから、こんなところで立ち止まるわけにはいかない。
方法がないと諦める前に、焦りと絶望に負ける前に、もっとやるべきことがあるはずだ。
ディルックは自分の頬を叩き、立ち上がった。
このままガイアの世話だけをしていても、きっと彼の体調は戻らないだろう。それに、ワイナリーに閉じこもっていてもきっと解決策は見つからない。ならば、外で情報を集めるしかない。
勿論、ガイアの傍を離れるのはとても恐ろしかったが、このまま彼の死を待つだけというのも勘弁願いたいのだ。
ディルックはいつもの上着を着ると、眠っているガイアの髪をそっと撫で、部屋を出た。