恋に気づけば 冨岡が髪を切った。
あの黒々として豊かな髪を、あっけなくバッサリと。
そりゃああいつは別に女でもなんでもないし、髪を切ることに思うことも未練があるわけでもないだろう。ましてやあの性格だ。伸ばしっぱなしになっていのだってきっと、散髪が面倒だったからというに決まっている。そもそも櫛で梳かすくらいのことをしていたら、あんなざんばら頭になんかなっていないのだから。
そんなことを考えて、不死川が小さく舌打ちをする。
……べつに冨岡が髪を切ったからってなんだって言うんだ。
理由なんて別に知りたくもねぇし、実際のところ「結べなくなった」というのが正解だろう。
不死川は、冨岡がなれない左腕で苦労している姿を思い出し、今度こそ大きく舌打ちをした。
4084