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    スドウ

    @mkmk_poipoi

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    スドウ

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    【P5R】あけちごろうくん(6才)が通ってる銭湯の話。ごろうくんは不在。悪い手癖が出た。文舵6-1と繋がってる。
    大きくなった吾郎くんはラムネのお兄さんのことをすっかり忘れてるけど、お兄さんは覚えてるし、あの頃と全く変わらぬ姿で四茶の銭湯へ気紛れにやってきてはラムネを飲んで帰る姿をモルガナに目撃されてる
    ※文舵練習問題9-3① 直接触れずに人物描写。ある人物のよく訪れる場所の描写を用いて行う。

    待っている人 夕方六時のメロディチャイムが鳴り響いたので、番台に座る老婆はもう一度壁掛け時計を見上げた。それから外へ続く引き戸の方へと身を乗り出し、気遣わしげに頬をさすってから、
    「今日はちょっと遅いわよねえ」
     テレビ前のソファに座る青年へと問い掛けた。年季の入った座面に腰を深く深く沈めながら、青年は相槌を打った。椅子に食われぬよう床を踏みしめる足元には、ラムネの空瓶が二本置かれている。手に持った方も、もう飲み干す寸前だ。
     朝や昼間から駄弁りに集まる老人たちもようやく引き、通勤帰りの客が訪れるまでの隙間時間。数人の客が浴場で足を伸ばしているものの、待ち合いスペースに老婆と青年以外の影はない。
     浴場から響く床を叩く桶の音と微かな喧騒がBGMだったが、それが滑舌の甘いハツラツとした声に切り替わった。その後に続くのは、ヒーローの名前を繰り返し呼んでは鼓舞する歌だ。
    「あら、始まっちゃったわ」
     テレビと時計を見比べる老婆に、青年は両手の間でラムネ瓶を転がした。ブラウン管の黄みがかった画面から目を離し、引き戸を振り返る。CMが明けるまでの数分間に扉を潜ったのは、近所に住む古希を迎えたばかりの男だった。
    「まだ坊主は来てないんか」
    「そうなの」
     老婆は「ろ」が書かれた下駄箱の木札を男から預かり、代わりに脱衣所の鍵を渡す。
    「下が空いてたからよ」
     男は続けた。老婆も「は」の札を思い浮かべながら、
    「やっぱり遅いわよね」
    「ま、来るんが遅い日か……ウチにいれる日なんだろ」
     色褪せて藍色となったのれんの向こうに男が消えた後、また待合室は老婆と青年の二人だけとなる。
     土曜の夕方、ソファに座る影が一つ。その光景は番頭と夕方の常連客に、歯車が噛み合わないような、パズルのピースが一つだけ欠けてしまったような心地を与える。
     テレビの中の世界を、突如現れた巨大怪獣が蹂躙する。それに抗って超常の力を行使する若者の姿を、青年は前のめり気味に見つめる。待ち人は来ぬまま時は進み、物語は一件落着を迎えた。また来週も凶悪な怪獣が出現しては、ヒーローが立ち向かうのだろう。
     青年は立ち上がり、番台横の回収ケースへと空き瓶を収めた。老婆が鍵と下駄箱の木札を引き換えるのと同時に、青年は百三十円を細かい傷の走る机上へと置いた。
    「あいつの分だ」
    「はいはい」
     青年から預かった小銭を、老婆はレジではなく小さなプラケースの中に避けておいた。底には小さく折ったメモ帳が敷かれ、「ごろうくん ラムネ代」と鉛筆で記されてある。
     青年は茶革の帽子を被りながら去り、老婆はもう一度時計を見上げ、そして机上に重ねてあるA4紙の束に視線を移した。その薬湯の予定表いわく、今日はりんご風呂だった。


    22.12.28
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