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    maLucia_sandbox

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    14じゃない創作のノエル様の話……をAIくんとあーでもないこーでもないしながら捻出したやつ。
    別垢に出してるやつの保存版というか保管場所代わり。

    雪華のPriere-断章-「そろそろ、か」
    無機質な表情のまま、彼はこの国、極圏の氷海に浮かぶローゼンブラド王国の城下町を見下ろしながら呟いた。
    ローゼンブラド王国第一王子。それが彼の───ノエル=ロワ・ローゼンブラドのこの国での肩書きだった。
    彼はその肩書きに相応しい容姿をしていた。髪は白銀に輝き、瞳は紅玉のように透き通った赤で、肌も雪のような白さを誇っている。
    第一王子でありながら、自ら騎士団の一団を率いて戦う姿は苛烈極まりなく、敵には一切の容赦をしない彼の事を、配下の騎士達は頼もしく思うと同時に、畏怖の念を感じさせるに十分だった。
    そんな彼に付けられた異名が『覇氷の騎士王子』である。
    彼の剣技には、一切の無駄が存在しなかった。ただ敵を屠る事だけを考え振るわれるその剣は、見る者全てを魅了する程美しく、そして恐ろしかった。

    「……ノエル王子、出陣の準備が整いました」
    侍従の言葉は押し殺すようにされていたが震えていた。いつ粗相をして、この見目の麗しい王子に斬って捨てられないか、怯えが隠しきれないのであろう。
    窓の外を見ていた彼は目を合わせないように振り返り「そうか」とだけ短く答えると、ゆったりとした歩調で自室を後にした。



    ***



    「────全部隊揃っているな。これより敵軍の我が領内への侵攻阻止、及び敵軍の殲滅作戦を開始する」
    まだ幼さの残る少し高い声でしかし、堂々たる姿でそう告げた彼の宣言に、騎士団の面々の顔つきは鋭さを増した。
    作戦の概要を伝える王子の声を聞きながら、団の一際新しい新兵が指導係の老兵に向かって声を潜めて尋ねた。
    「自分、今回が初陣なのですが……あの、本当に戦争が始まるんですね?」
    老兵は新兵を横目に見て少し考え込んだようにした後、こう口を開いた。
    「戦争……ってもんじゃないな。これから始まるのは虐殺だ。まぁ、お前さんはこれが初陣だから知らんだろうが、俺みたいに何度も出陣してると嫌でも思わせられる。この戦いが終わったら、もう二度とこんな事をする気は起こらないだろうと……」
    「それは……どういう……?」
    「……一度戦場に出れば嫌でもわかるさ。だが忘れるんじゃないぞ、敵兵は皆殺しだ。それが殿下の命令で、なおかつ自分の命が惜しければな」
    指導係の老兵はそう言って口を噤んだ。自国が脅かされるのだから、反撃しなければ命は無い。当たり前のことだった。

    「────作戦の概要は以上である。各自持ち場に付いて開戦の合図を待て。必ず生きて帰還せよ!」
    王子の激励を聞いた兵士たちの、おーっ!という声で新兵は思案していたのを止め我に返った。慌てて自分も高らかに剣を掲げる。
    しかし新兵の胸にはまだ1つ気になる事があった。
    (どうして王子様が直接騎士団の指揮を執るのだろう……?普通王族は戦場に出るものではないし、ましてや殿下は第一王子であって……第二王子なら分からないでもないが……)
    「おい、新人!置いてくぞ!」
    教官の声に再び思案の海から帰った新兵は、今度こそ自分の持ち場へと向かうのであった。



    ***



    ローゼンブラド王国は周囲を氷海に囲まれた島国である。この国へ侵攻するには、必ず海路を使わねばならず、途中からはどう足掻いても凍り付いた海の上を徒歩で渡ってくる必要があった。

    ローゼンブラド王国騎士団が配置に着いて間もなく、凍りついた海を渡ってこの国へ侵攻してくる敵軍の一団が見えた。
    その数、約1万。対するこちらの騎士団は千足らず。戦力差は少なく見積っても10倍はあった。
    「来たか……。皆の者聞け!奴らは我が国へ侵略を目論む悪しき者達である!!我々には奴らの侵攻を止め、この国の平穏を守る義務がある!!」
    彼の言葉に呼応するように味方の兵達の士気が上がった。
    「全部隊、前へ!!敵対する者は全て蹴散らせ!!」

    その合図と共に騎士達は雄叫びを上げて敵軍へと突撃していく。剣と剣がぶつかる音が静寂の氷海に響き渡る。
    戦が、始まった。



    ***



    戦場と化した海上はすっかり死体の山と化していた。あんなに顕著だった戦力差は一点を中心にあれよあれよという間にひっくり返り、王国騎士団が優勢を誇っていた。
    その要因は疑いようもなく、たった一人の戦果である。ノエル=ロワ・ローゼンブラド、騎士団の指揮官でありながらこの国の第一王子である青年のせいだ。
    彼は愛剣である永久凍土の氷でできた大剣【ジュゼ=スティーリア】を振るい、敵を文字通り一刀両断にしていく。
    一見ただの氷塊にも見えるその剣は、しかしよく見れば剣自体が薄く発光しており、彼が振るう度に氷の結晶が舞うように煌めいていた。
    「フッ……!」
    彼が振るった剣閃でまた一体敵の首が飛んだ。それを成したノエルは返り血すら浴びておらず、表情の一つも変わらない。その姿はまさに氷の騎士だった。
    「流石です、ノエル殿下……!」
    「この調子なら我らの勝利は確実でしょう……!」
    「えぇ……本当に……!」
    勝利の確信を得た兵達から次々と歓声が上がる。それも当然だった。
    いくら氷の大剣が強力とはいえ、たった一人で戦況を覆すなど、とても常人が行える所業ではない。それを薄々敵軍も感じ取っていた。

    敵軍はもうほとんど統率らしい統率は取れておらず、侵攻どころか戦線を維持するのが精一杯のようだった。皆いつ自らに氷の凶刃が迫るか怯えながら、退くに退けずにいるのだ。
    それに畏怖を抱いているのは何も敵だけではなく、自軍の騎士団員も同じだった。
    たった一人、厄災のように荒れ狂い、敵の命を刈り取っていく、そんな姿を見た者達は誰しも同じ感想を抱く。
    ────まるで化け物のようだ、と。
    あまりにも一方的な蹂躙に気が触れた敵軍の兵士がふと、敵軍の集団を離れて王子の元へと突撃する。
    「死ねぇぇえええ!!!」
    迫り来る男を王子は見据えると、あえてその剣で刺し貫かれた。銀の剣が細い体を貫いて、中ほどで勢いが殺される。
    「なっ!?」
    男は剣から伝わる感触にはっと我に返り驚愕した。あの驚異的な身体能力なら剣を防ぐ事も、躱すことも造作もなかったはずだと。
    貫いた傷口から剣を伝って血が滴り───地面に落ちる頃には血の結晶と化して凍った地面に溜まっていく。
    「……この程度で余を殺せると思うたか」
    王子は口元に笑みを浮かべたまま、何事もなかったかのように言った。
    「ひっ……!」
    「余の国民達を脅かそうと侵略した罪、その命で贖ってもらうぞ」
    彼の赤い瞳が一瞬赤く煌めくと、次の瞬間には兵士は全身氷漬けになっていた。そして自分の身に刺さったままの剣をずるりと体から引き抜けば、氷漬けの兵士に向かって無造作に叩きつけた。
    兵士の氷像は豪快な音を立てて粉々に砕け散り、辺りに飛び散る。飛び散ったまだ新鮮な肉片からは、一滴の血も流れなかった。
    それを見て敵の兵士たちはようやく理解する。自分達は今、本物の化け物と戦っていることを。
    「ひぃいいいっ……!助けてくれ!!死にたくない!!!」
    恐怖に耐えきれなくなった敵の兵士達が次々と逃げ出していく。彼らはもう戦う気力を失っていた。
    「愚かなものよ……始めから我が国に攻め入らなければ生き長らえたものであろうに」
    彼は散り散りになって撤退していく敵軍を眺めながらそう呟いた。

    「全部隊追撃止め。直ちに後退せよ!」
    王子の号令で騎士団と敵軍の距離はどんどん開いていく。やがて距離が十分に開いたその時、彼は敵軍の逃げる方へ手を翳す。
    突如、慌てふためいて敗走する敵軍の足元の氷が瞬時にただの海へ変わった。
    もちろん、足場を失った体は重力に従い、直下極寒の海へと投げ出される。
    「ぎゃああぁああっ!!」
    海に投げ出された敵兵の悲鳴が聞こえてくる。氷点下の海だ。ただでさえ痺れるように寒い中、鎧を着込んだ兵士が泳いで分厚い氷の上へと這い上がることなど不可能に近い。
    「こ、こんなの……」
    新兵は絶句したように声を漏らす。
    「言っただろ、これから始まるのは虐殺だと」
    目の前の惨状を前に立ち尽くすしかない新兵に、指導係の老兵はそう言った。
    万の敵に千の味方が虐殺されるのではない、始めから老兵はたった一人に万の敵が蹂躙されるのが分かっていたのだ。

    「被害状況を報告せよ」
    敵が全て極寒の海に沈んだのを無表情で見届けた王子は、後ろに下がらせていた騎士団の1人に向かって尋ねた。
    「はっ……我が部隊の被害は軽微です。負傷者数名、死者はおりません」
    「……そうか。それでは此度の作戦は終了とする。皆の者、ご苦労であった」
    王子はそれだけ告げると踵を返して王城へ歩き出す。続くようにして騎士たちも続々と城へと帰還し始めた。

    「……これが、殿下の戦い……」
    新兵は一人、大穴の開いた氷海を有り得ないものを見たというように見つめていた。
    歴代のローゼンブラド王国王族に継承されるという始祖氷竜の力。守備に長け、長い歴史の中で一度も敵国の侵入を許した事がないこの国の堅牢さは、代々継承された氷竜の力を扱う王族の加護によるものだと言われている。
    しかし、その力が今まさに眼前で証明されたのだ。
    圧倒的な力で敵軍を蹴散らし、自軍は一切の犠牲を払うことなく、そして敵には一欠片の慈悲すら与えず、たった一人の男が敵を蹂躙する。
    それはまさしく───神の御業だった。
    「何やってんだ?皆もう城に戻ってるぞ」
    新兵の指導係である老兵は呆然と佇む彼に声を掛ける。
    「あっ、はい!すみません……すぐに戻ります!」
    「まぁ、お前の気持ちはよく分かるけどな。俺だって初めて見た時は度肝を抜かれたもんさ」
    そう言って彼は豪快に笑いながら先に歩みを進めた。新兵も慌てて隣に続く。
    「初めて……と言うと、殿下の初陣でしょうか?」
    「ああ、どうして王子様が……とか、あんな若造に何ができるんだと、初めは思ったもんだ」
    彼は遠い目をしながら語り始めた。
    「だがな、すぐに思い知らされたよ……あの方は軍略も紛れもなく天才だ。それも俺たちなんかとは比べ物にならない程のな」
    「……はい、正直に申し上げて、私も未だに信じられないんです。……その、現実離れし過ぎている感じがして」
    「はっは!だろうなぁ。でも、それが現実なんだから受け入れるしかねぇさ」
    「……えぇ、そうですね」
    新兵は複雑な心境でそう答えた。
    彼の脳裏に過るのは先ほどの光景だ。氷漬けになりバラバラになった兵士だったものの肉片と、それを無表情で見下ろしている青年の姿。
    あれは本当に人間なのか……。
    そんな疑問が頭から離れない。
    「ま、敵じゃなくて味方で良かったと思うしかねぇな。国の敵と言えど、ちょっと同情しちまうぜ」
    老兵は苦笑しながらそう言った。新兵はそれに曖昧に笑って返すことしかできなかった。



    ***



    戦闘終了後、騎士団は城に戻り負傷者の治療や備品の整理を行っていた。
    そんな中、ノエルは国王の元へ向かっていた。今回の戦果を報告しなければならなかったからだ。
    「……ノエル=ロワ・ローゼンブラド、ただいま戻りました」
    玉座の間に着いた彼は国王の前に跪き、粛々と今回の作戦の結果を報告する。
    王はそれを大して興味の無さそうに聞き届けると、静かに口を開いた。
    「よい、下がれ」
    「はっ……失礼します」
    研ぎ澄まされた美しい所作で頭を下げると、そのまま彼は玉座の間を後にして自室に向かった。

    「……はぁ」
    ノエルは自室の扉を開けると同時に思わず大きな溜息をついた。国王は一度だって、息子であるノエルを褒めた事がない。彼も褒められたい、などと思った事はないが、華々しい戦果の報告のしがいもないというものだ。
    「わぁ珍しい。"覇氷の騎士王子"もそんなため息つくんだね?」
    部屋の中で彼を出迎えたのは、エリオット・ブラッドリー。王家であるローゼンブラドの近縁の名家の長男であり、彼と唯一気軽に言葉を交わせると言ってもいい仲の青年だった。
    「なんだその呼び名は……というかお前、いつからここに……」
    「帰還してすぐだよ、ここで待ってたらノエルに会えるしね」
    不法侵入だと言いたげな彼の視線を受けながら、青年は爽やかな笑顔を浮かべてさらっと答える。
    「それよりさ、さっきの作戦中の怪我、大丈夫?ほら……結構派手に刺されてたでしょ?」
    「あぁ、そういえば……だが、余がこれしきでどうもならぬのは知っておるだろう」
    「まぁね、でも一応手当だけはしとこうよ。他のみんなもびっくりして心配してたし」
    青年は穏やかな表情のまま、ベッドの端に腰掛ける。いつの間にやら持ってきていた救急箱を片手に。
    「む、まぁ……好きにするが良い」
    彼は少し考え込むようにすると、渋々といったようにベッドに腰掛けた。そんな彼の様子に、青年はクスッと笑うと、優しく微笑みながら包帯を取り出した。
    「そう言えば、今日の作戦、僕ほとんど手柄持ってかれちゃったな〜……君にね」
    「不服か?敵は殲滅できたのだから良いであろう」
    「そういう問題じゃないんだけどなぁ……はい服脱いで〜」
    「ん、分かった」
    言われるままに上着とシャツを脱いでいく。すると青年は慣れた手つきで傷口に消毒液を塗り、丁寧にガーゼを当てていく。
    その戦闘力からは想像も付かないほど華奢な身体付きに、毎度目を奪われる。しかしそれは見た目だけの話であって、実際はとんでもない身体能力を秘めている事を彼は知っている。
    「全く……いつも思うけど、もう少し自分の事を大事にしてくれないかな?」
    「何を言っている。この程度で死ぬような体ではないぞ?」
    「そういう意味じゃなくてさ、本来なら君が傷付くだけで大問題になるんだから……」
    「……余が戦場に出るのは、国のため、民のためだ。それなのになぜお前に責められねばならんのだ」
    「……ほんと君は分かってないなぁ」
    青年は苦笑して呟くと、包帯を巻き終えたのか最後に軽くポンと叩いた。
    「君がこの国の誰もを傷付けたくないように、僕も友達が傷つくのは嫌だよって話」
    「……そう、いう……ものなのか?」
    ノエルはその言葉を聞くと、不思議そうにうーんと首を傾げる。
    彼には友人の心配の気持ちが理解できなかった。自分が傷付いたところで、一体誰が悲しむというのだろうか。自分のせいで誰かが苦しんでいるのだとしたら、それは心苦しい。だが、もしそうだとしても、自分が戦わなければ代わりにより多くの民が傷付くだけだった。
    ノエルはそんな事を考えながら、ぼんやりと天井を見上げた。
    「はい、終わり。……何か難しいこと考えてるみたいだけど、僕はただ単にノエルには幸せになって欲しいだけだよ」
    「……と、言われてもな……」
    ノエルは困った様に視線を落とす。
    「ノエルは王様になるんだから全部思い通り〜とは行かないだろうけどね、僕も陰ながら頑張るからさ」
    「ああ……ありがとう」
    ノエルは少し表情を穏やかにして礼を言うと、静かに服を着始める。
    そんなノエルの様子を眺めながら、青年は静かに息を吐いて救急箱を片付ける。
    (___きっと君はこれからもこの国と民の盾であろうとする。でも、それでも僕は君を守るよ。それが僕の使命であり、願いでもあるんだから)
    「……なんて言ったら、君は怒るかな」
    青年は小さく笑って独り言のように呟いた。
    「どうしたエリオット、お前はいつも変だが今日は特に変だぞ」
    「うわ酷い、何でもないですよーだノエル"殿下"」
    「何なのだお前は……」
    ノエルは怪しむ様な目をエリオットに向けるが、当の本人はニコニコと楽しげに笑うだけだった。
    「さーて、君の手当も終わったし〜、僕も一応貴族だからやらないといけない事あるし?そろそろ戻るね」
    エリオットはそう言うと立ち上がる。そして扉に手をかけた時、ふと思い出したかのように振り返ると口を開いた。
    「ねぇ、ノエル」
    「なんだ?」
    「君の戴冠式の前にさ、1回手合わせしない?」
    急な提案にノエルは少し驚いたようにしてエリオットを見つめる。
    「……いきなりどうした」
    「ほら……君はめちゃくちゃ強いけどさ、僕もそんなに弱くないんだぞ〜ってのを分かってもらいたいっていうか?」
    「まあ、構わんが……余は負けぬぞ?」
    「うん、知ってるよ」
    彼は当たり前でしょ、というように肩を竦めてみせた。そしていつものおどけた態度を一転、真面目な顔をして彼に向き直った。
    「……手合わせで僕がある程度強いってこと、認めてくれたら……君にお願いしたい事があるんだ」
    「……?」
    「ま、とりあえずそういうことだから!また後で!覚えててねー!」
    エリオットはそう言い残すと、慌ただしく部屋を出て行った。残されたノエルは暫く考え込むようにして固まっていた。

    「……一体何だったのだ」
    エリオットは元々いまいち何を考えているか分からない人間だったが、だからと言って、冗談を言っている訳でもない。それは長年の付き合いである彼だからこそ分かることだった。
    ノエルは呆れたように溜息を吐きつつ、部屋の窓から外を眺めた。すると、そこにはいつもの日常が広がっている。決して大きいとは言えないこの国で、民達はこの凍えるような寒さにも負けず、必死に生きて、人の営みを築いていた。ノエルはそんな光景を見て、ほとんど動かすことのない口角を上げて目を細めた。
    (これが、余が守るべき国の民達……)
    自分の命が尽きるまで、彼らは皆等しく平等に愛すべき存在だ。それは王族として、一人の人間として、当然の事だと思っている。
    ……王族として当然の事だと、ノエルは父王に教わっていた。
    「父上……貴方は今の国のままで良いと……本当にお考えなのですか……?」
    ノエルは独り呟いた。しかし、その問いに答えてくれる者はいない。彼の問いかけに答えるのは、いつだって自分自身なのだろう。
    いつかこの手で答えを出す時まで───。

    彼の表情は憂いを帯びていた。
    それはこの国の行く末を案じていたが故のものか、いつ起こるやもしれない大災厄を肌で感じ取っていたが故なのか……今となっては誰も知る由はない。



    ***



    ───これは戦禍の序章、その始まりの少し前、数奇な運命に弄ばれし氷の王国の話である。
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