雪華のPriere-断章-「そろそろ、か」
無機質な表情のまま、彼はこの国、極圏の氷海に浮かぶローゼンブラド王国の城下町を見下ろしながら呟いた。
ローゼンブラド王国第一王子。それが彼の───ノエル=ロワ・ローゼンブラドのこの国での肩書きだった。
彼はその肩書きに相応しい容姿をしていた。髪は白銀に輝き、瞳は紅玉のように透き通った赤で、肌も雪のような白さを誇っている。
第一王子でありながら、自ら騎士団の一団を率いて戦う姿は苛烈極まりなく、敵には一切の容赦をしない彼の事を、配下の騎士達は頼もしく思うと同時に、畏怖の念を感じさせるに十分だった。
そんな彼に付けられた異名が『覇氷の騎士王子』である。
彼の剣技には、一切の無駄が存在しなかった。ただ敵を屠る事だけを考え振るわれるその剣は、見る者全てを魅了する程美しく、そして恐ろしかった。
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